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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第四章

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ルーファウス、過去を語る②

 そんな毎日の中である時連れて行かれた王宮で、ルーファウスはもう一人印象深い人物に遭遇する。その話をする時のルーファウスの表情はどこか苦々しげで、眉間に皺を刻んでいる。まぁ、王宮でというのとその表情、ルーファウスの今までの言動を鑑みるとそれが誰なのかは何となく想像がつく。


「父に促されるように挨拶をさせられた相手はフロイド・グランバルト国王陛下で、彼は私を一瞥すると、それはもう険しい表情で何故連れて来たのかと厳しく父を問い詰めていました。彼は子供があまり好きではなかったのか、私に向ける視線はエルフの里の者とはまた違い、険しいものだったのを覚えています。そしてそんな彼を取りなすように陛下を諫めたのはタロウでした」


 タロウさんとフロイドさんが結婚していたらしいという事を僕はルーファウスから聞いて知っている。二人は信頼関係で結ばれていて、まるで妃のような立ち位置でタロウさんはフロイドさんを諫めたのだろう。


「王宮内では陛下は常にタロウを傍らに置き、私との交流を許さなかった。なので私は王宮が大嫌いだったのですが、一方で姉はまるで腫れ物扱いであるエルフの里より綺麗で周りも自分達を奇異な目で見る事のない王宮の方が好きだと言っていました。姉は見た目にも母親似の人族でしたし、エルフの里は相当居心地が悪かったのでしょう。王宮に連れてこられるようになると、姉は教会設立の立役者となっていく者達と親しくなっていきました。教会を設立したのはタロウであったと後に私は知りましたが、それを支えていた屋台骨は現在聖者・聖女と呼ばれているような聖魔法に通じる者達でした。そして姉には聖女としての資質があって、それを通じて姉は彼等と親しくなっていったのです」


 ルーファウスの姉は聖魔法を通じて家族以外の他者と関わり、段々と自分の世界を築き上げ、ルーファウスとの閉じた世界から踏み出していくようになっていった。

 それまで屋敷で過ごす時には姉と二人、姉だけがほぼ世界の全てだったルーファウスは姉のその変化に戸惑いを隠せずにいた。そんな時、彼に手を伸ばしたのが、やはり当然と言うかタロウさんだったんだよね……


「姉は王宮で皆と共に聖魔法を学びたいと言い出して、私達だけの生活は終わりを迎えます。それは私が5歳になる頃でした。母はその頃にはベッドに伏せる事が多くなり、そんな母を見ていたから尚更に姉は母の病にも対抗できる術を見付けだしたかったのかもしれません」


 聖女見習いとなったルーファウスの姉は家に居る事が減り、ルーファウスはこの大きな屋敷の中で一人ぽつんと残されて過ごす事が増えていった。

 自分を構ってくれる大人たち、執事のセルジュやメイド達はもちろんその間もルーファウスの傍に居たのだが、ルーファウスの喪失感はとても大きかった。

 自分も姉同様に聖魔法を学べばまた一緒にいられると思いはしたらしいのだが、あいにくルーファウスには聖魔法の素質はなかった。

 けれど魔術自体の素質は群を抜いている事が判明してルーファウスはエルフの里へと連れて行かれる事が増えていった。

 エルフは元来平和主義で争いをあまり好まないのだが、それでも戦わなければならない時には肉弾戦よりも魔術戦を好む。武器を使うにしても弓などの遠距離用で剣などはほぼ使わない。

 そんなエルフの特性をルーファウスは見事に引き継いでいた。

 エルフの中でも類稀な魔術の才能、けれど血統主義でもあるエルフの中でハーフエルフであるルーファウスが如何に才能を発揮した所で彼を手放しで褒める者はほとんどいなかった。

 むしろ、人の血の混ざったハーフエルフの子供が優秀であると知れ渡るほどエルフの里の中で彼は孤立していった。


「当時父は王宮勤めでそこそこ出世していてエルフの里にも何かと便宜を図る事も多かったようで、表立って父の子である私に何かを言ってくるような者はいませんでした。ですが、だからと言って居心地がいいとはとても言えません。加えて父の本妻である女性がホーリーウッドの本家筋で、父とはいとこ関係だったのですが力関係は妻の方が強かった、なので余計に妾の子である私に周りは冷たく当たったのでしょうね」


 そんな中、タロウはちょこちょことルーファウスの前に現れてはルーファウスに魔術を教えていった。それは今まで学んでいた魔術とはどこか違っていて、けれどその術は今まで習ったどんな術よりも優れていた。

 タロウは『ルーファウスは筋が良い』と褒めて伸ばし、気が付けば四属性魔法でルーファウスの右に出る者はいない程にまでルーファウスの魔術は洗練されていった。

 けれど、それは同時に大の大人でさえもルーファウスの魔術には敵わないという所までいってしまい、ルーファウスはますます孤立を深くしていく。

 それでもまだタロウがルーファウスの傍にいる間は良かった、けれどある時を境に急にタロウはルーファウスの前に姿を表さなくなり、ルーファウスはそれに多いに戸惑った。


「エルフの里に現れなくなったタロウが王宮に暮らしている事は知っていました、なので私は会えないと分かっていながら父への面会とかこつけて王宮へと行ってみたのです」


 まだ幼かったルーファウスは子供特有の無鉄砲さで父や従者の目をかいくぐり王宮の中をタロウを探して回った。そして後先考えないその行動で王宮内で迷子になった。

 そして迷子になったその先で見たものは……


「まぁ、いわゆる大人の情事というやつです。相手はもちろんフロイド国王陛下、私はまだその時二人の関係を知りませんでしたし、二人が何をしているのかも分かりませんでした。ただ、見てはいけないものを見てしまったという思いだけはありました。私はその場を逃げ出した、そしてそれっきり私はタロウには会えなくなりました。父に何故タロウは姿を見せないのかと問うと、父は彼は遠くに行ってしまった、とそれだけです。まるで形見のように彼の髪留めを渡されて、それ以上には父は何も語ってはくれなかった。語った所で幼い私では理解もできないと思われていたのかもしれませんけれど」


 エルフの里ではタロウは国王陛下に監禁されているとも、既に亡くなっているとも噂され、詳しい事情を知る者は誰もいなかった。

 例え知っていたとしても幼いルーファウスにその真実を語る者は誰もおらず、いつしかルーファウスもタロウとはもう二度と会えないのだと理解するようになっていた。

 その当時ルーファウスの父アルバートはまだ現在の地位には付いておらず王宮内でもまだ官僚の一人でしかなかったらしい。それでも国王陛下の覚えはめでたく、出世コースをひた走っていた。

 そしてアルバートの出世を決定づけた出来事、それが姉の婚姻だった。

 タロウが去り、引き籠りがちだったルーファウスへと告げられた姉の結婚の知らせ。姉はまだ当時16だった。しかも相手はあのフロイド国王陛下だと聞いてルーファウスは怒りに震えた。

 元々国王陛下とはほぼ面識などない、初対面で向けられた険しい表情と言葉だけでも彼を嫌うには充分だったが、その頃にはあの男が自分からタロウを奪った事も理解していた。

 タロウの消息はまったく分からない、そして今度は姉までも自分から奪っていくのかと言葉にならない怒りが胸の内を焼いた。


「なぁ、ルーファウス、話の腰を折って悪いんだが、お前の姉ってのはもしかして聖女テレサの事なのか?」

「ええ、そうですよ」


 ルーファウスが頷くと、アランは「マジか……」と絶句した。

 聖女テレサ、前にちらりと聞いた事がある。彼女はフロイド国王陛下の妻で存在を消されてしまったタロウの代わりに教会を設立したとされている人物だ。

 まさかそれがルーファウスの実の姉だったなんて、そんなの想像もしていなかったよ。


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