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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

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旅立ちの時

 僕達が最後に訪れたのは冒険者ギルド、ギルドマスターのスラッパーに別れの挨拶をして家の鍵を返したら出発だ。

 相変らず冒険者ギルドでは僕達は注目の的である。ダンジョン城を攻略してからもう何日も経っているので、いい加減落ち着いても良いと思うのだけど、なかなかそういう訳にもいかないらしい。


「坊主、今日は従魔のドラゴンはいないのか?」

「え? あ、はい、今日は家で留守番です」


 オロチはドラゴンの姿でも亜人の姿でもどちらの姿でいても目立ってしまう。ダンジョンを攻略するために従魔契約はしたものの、オロチにとってこの世界はあまり良い生活環境とは言えないのだよな……

 ただ珍しがられるだけならいいけれど、この間の子供のように何の理由もなくオロチを攻撃される事もありそうなので、僕はオロチの主人としてその辺のケアはきちんとしないといけないなと思っている。

 オロチの家族でもある古老のドラゴンはオロチを従魔にせずに護れるのか? と、僕に言った。ドラゴンは魔物の中でも最強種だし、護ってあげなければならない程やわでもない。けれど、こちらが何をしなくとも襲われる事はあるのだ。

 ドラゴンは敵、得体の知れない魔物は須らく排除するもの、そんな共有認識がこの世界にはあるのだと子供に石を投げられた事によって理解した僕は、改めて古老のドラゴンの言った言葉の意味を理解する。

 少なくとも従魔にされた魔物ならば、その証を見て人は安心する。それが従魔が装着する首輪なのだろう。首輪は従魔の証であると共に従魔を護るお守りにもなっているのだ。

 オロチは首輪を嫌がっているけれど、何かしらの目印は必要だ。


「タケル、何を考え込んでいる?」


 ひょい? と横からロイドに顔を覗き込まれて僕はビクッと飛び上がった。


「なんだよ、そんなに驚く事ないだろう? 傷付くなぁ」

「え、や……えっと――」

「ふむ、お前等、何かあったな……?」

「なっ、な、なにもないですよ!?」


 今度はアランが僕の顔を覗き込む。アランってホント洞察力があるよな、だけどこんな所にまでその洞察力発揮してくれなくてもいいのに。


「ロイド、抜け駆けはするなって言っただろう?」

「俺は抜け駆けなんてしてないですよ、むしろタケルの事情を俺だけ何も知らされてなかったの抜け駆けにならないんですか? おかしいでしょう? 俺は今ようやく出発点に並んだだけなんで、文句は言いっこなしですよ」


 そう言って、ロイドは僕の背中の中ほどまで伸びた髪を一房手に取ってその髪に口付けた。

 ってか、なに!? その流れるような動作! ロイドはそうじゃなかっただろう!? なんか雰囲気変わってないか??


「お前がその気なら、こっちも遠慮はしないぞ」


 そう言うと今度はアランがひょいと僕を抱き上げた。


「なっ、えぇぇぇ……」


 三年前に比べれば僕の身長もだいぶ伸びたので、最近はこんな風に抱き上げられる事もなくなっていたというのに、まるで幼い子供を抱き上げるように軽々と持ち上げられて僕は戸惑いを隠せない。


「ちょ、やめて、アラン! さすがに恥ずかしい!!」


 ただでさえアランの身長は高く目立っているのに、そんな彼の肩の上に乗せられるように持ち上げられては、周りが僕に注目しているのもよく見えて恥ずかしいことこの上ない。


「なんだか俺だけ出遅れている気がしないでもないから、少しくらいいいだろう? タケルもあまり一足飛びに大人になってくれるな、寂しいだろう」


 大人になるなと言われても、僕の中身は元々大人だからそんな事を言われても困るんだけど……


「アランさんって、時々タケルの父親みたいですよね。お義父さんって呼んでもいいですか?」

「あ? うちの子はまだ嫁には出さんぞ、そういう事は俺を倒してから言うがいい!」

「なっ……いえ、望むところです! お義父さん!」


 なんか小芝居始まった……しかも周りも笑ってる。なにこれ、僕はどういう反応を返せばいいんだよ!?


「あなた達一体何をやっているんですか?」


 ギルドマスターに借家の鍵を返してきたルーファウスが、呆れたように僕達を見やる。その後ろにはギルドマスターのスラッパーさんも笑顔で立っていて、僕は何をどう返していいか口籠った。


「母さんや、この坊ちゃんがうちの子を嫁に欲しいと言い出してな」


 ちょっと! この小芝居どこまで続ける気!? さすがにルーファウスはノってこな……


「何処の馬の骨とも分からない小僧にタケルを嫁になどやるものですか」


 ちょ……まさかのルーファウスが小芝居にノってきた!? ぽかんとしている僕をよそにギルドマスターに「仲のよろしいパーティーで結構ですな」と微笑ましそうに言われてしまった。

 確かに仲は悪くないけれども!


「まぁ、そんな話は置いておいて」


 「おいで」とルーファウスに腕を差し伸べられた。アランの身長はとても高いので持ち上げられると僕の標高は2メートル越えだ、飛び降りられない高さではないが、飛び降りるには少し勇気がいる。

 僕はルーファウスの腕に支えられるようにして地面の上に降り立った。


「さぁ、皆さんもご挨拶ですよ」


 何だかんだでスラッパーさんには僕もずいぶんお世話になった。僕が教会に隠れて依頼を受けられるようにしてくれたり、身分証なしで街の外に出られるように特別な通行証を発行してくれたりもしたのだ、感謝してもし足りない。


「大変お世話になりました」


 僕がぺこりと頭下げると、スラッパーさんも「こちらこそ」と頭を下げる。


「あなた達のお陰で、これからもこの街のダンジョンを安全に管理できるようになりました、本当にありがとうございます。当ギルドはこれからもあなた達をいつでも歓迎いたしますので、どうぞまた是非お立ち寄りください」


 別れというものは、どんな形であれやはり少しだけ寂しいものだ。けれど今回はシュルクを旅立った時のような夜逃げ同然の旅立ちではないので、お世話になった人達にきちんと挨拶ができたのは幸いだったな。

 アランが準備した荷馬車は行商人が荷を積んで運ぶような大きなサイズの物ではない。最低限僕達が寝られるスペースを確保できる程度の幌馬車だ。

 そんな僕達の馬車を運んでくれる馬は二頭、一頭でも馬車を動かす事自体はできるそうだが、そこそこの長旅に備え馬の負荷を考えての二頭立て、僕達を全員乗せて荷台まで運べてしまう馬の馬力って凄いんだなと改めて感心しきりだ。


「では、行きましょうか」


 荷馬車に乗り込みメイズの街を出る。今度はどんな冒険が僕達を待っているのだろうか。

 別れはとても寂しいけれど、きっとこれから新しい出会いもたくさんあるだろう、僕はそれがとても楽しみで仕方がないよ。



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