表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/212

使える魔法と使わない方がいい魔法

 ダンジョン城攻略から数日、僕達は家でまったりとした時を過ごしていた。近いうちに王都に向けて旅立つ事は決まっていたが、その日取りははっきり決めていなかったし、焦る必要がない程度に僕達の懐は潤っていた。

 荷馬車を手配するのに数日を要するという事もあって、僕達は旅の準備を進めつつものんびり日々を過ごしている。

 僕は自室に籠り、ダンジョン城で手に入れた魔法陣に関する書籍を読み漁る。魔法陣と一口に言ってもその使い方は本当に様々なのだと改めて僕は思うのだ。

 例えば僕があの部屋で手に入れてきた浴槽ひとつとっても魔法陣が3つも付与されている。一つ目は蛇口から水を出す為の魔法陣、二つ目はその水を温める魔法陣、そして三つ目が汚れた水を浄化排水するための魔法陣。

 現代では電気で賄っていた部分のほとんどが、この世界では魔法で賄われている。

 基本属性である火・土・水・風の四属性の魔法陣を描くのは今の僕には然程難しいことではなかった。それというのも、四属性の魔術に関しては今では僕は熟練の域のレベルに達しているので、その術式を陣に置換え描いていく作業はとても容易かったのだ。

 僕が持っている魔法スキルは人より多い。火・土・水・風の基本四属性の魔法はもとより、無属性魔法・聖魔法・闇魔法・時空魔法に空間魔法なんてものまである。

 僕は今まで自分が持っているスキルの中で時空魔法と空間魔法、そして闇魔法を全く活用してこなかった。というか、そもそもそれがどんな魔法であるか、どんな術式の魔術であるのかも全く理解していなかったのだ。転移魔法陣はこの時空魔法と結びつく魔法陣になる。

 時空魔法は時空を捻じ曲げ点と点とを結ぶ魔法だ、転移の術はこの時空魔法のひとつであり、攻撃技としては敵を時空の彼方に放り出すという使い方もできる。

 こういった特殊魔法は使い手が限られているそうで、そんな中でルーファウスは数少ない時空魔法の使い手であるのだ。

 ちなみに転移は自分を今いる場所から別の場所へと運ぶ事の出来る魔術なわけだが、術が失敗すると次元の狭間に自分が閉じ込められてしまう事もあれば、身体がこちらと向こうで半分でぶった切られてしまう事もある危険な術でもあるのだとか。

 それを聞いた僕は、自分に時空魔法を使える能力がある事は分かっていたが「もう少し他の術の熟練度を上げてからチャレンジしますと」及び腰になったのは言うまでもない。

 だって、できると思って調子に乗った揚げ句、術の失敗でさくっと死んだら馬鹿そのものじゃないか!

 ルーファウスが誰かを連れて転移するのは難しいと言っていたのもそれが理由で、子供だった僕は抱きかかえられて移動できていたけれど、段々僕も成長してきたし、転移魔法陣はこの時空魔法を元にした魔法陣である事が分かった僕は、いよいよもって自分も転移の術をマスターすべき時がきたなと腹をくくった。

 とはいえ初っ端から自分の命を危険に晒して転移の術を使うほど豪胆にはなれない僕の修行は小さな小物の移動から。

 僕は机の上に置かれたペンに狙いを定め、それを床の上に移動する作業を繰り返す。


「転移!」


 目の前に置かれたペンは机の上から姿を消し、床の上にころりと転がる。僕はそのペンを拾い上げ、ペンに異常がないかを確認する。失敗の場合はペンが綺麗に真っ二つなんて事もあるので笑えない。

 今回は大丈夫そうかな? と眺め回していたらペン先が少し欠けている事に気が付いた。本当に僅かな欠けだけど、これを人体で考えたらぞっとする。

 一朝一夕に上手くいくとは思っていないけど、事これに関しては命に関わるから慎重に習得しなければと僕は思う。


「はぁ、なかなか上手くいかないな、休憩~」


 僕はベッドに横になり、自分のステータスを眺めやる。時空魔法のスキルレベルは1から上がる気配がない。特殊スキルなだけにレベル上げもそう簡単にはいかないのだろう。そういえば、ルーファウスの時空魔法のスキルレベルは幾つなのだろうか? 今度聞いてみよう。


「そういえば空間魔法、こっちも全然使ってないよ、な……ふぁ!?」


 僕はウィンドウ画面の空間魔法を何気なくタップする。すると、驚いた事に更にウィンドウ画面が開いて幾つかの技名がずらずらとウィンドウ画面に羅列されていき、僕は驚く。

 そもそも僕はこのステータス画面をあまり開く事をしないので、ウィンドウ画面にそんな機能が備わっている事にその時初めて気が付いたのだ。

 え? なにこれ? 隔離? 拡張? アイテムボックス?

 その文字列は色が反転している、という事は隠されている、もしくはまだ使えないという意味だろうか? 僕は試しに「アイテムボックス」と口に出してみたらアイテムボックスの文字にだけ色が付いた。それと同時に目の前には何やら怪しげな箱(?)が現れ、ぱかっと蓋が開く。

 箱の中身は空っぽで、試しに僕は先程のペンをその箱の中に入れてみると、今度は箱の蓋の部分にアイテム×1の文字が浮かび上がり、ペンがすうっと姿を消した。そこに残るのはやはり空っぽの箱。

 これはあれか? マジックバッグの箱バージョン? 僕がマジックバッグを使うのと同じ要領でペンを頭に浮かべつつ箱の中に手を差し伸べると、想像通りにペンは僕の手元に戻ってくる。

 間違いない、これは文字通りの『アイテムボックス』だ!

 今までルーファウスに貰ったマジックバッグに一切合切の荷物を詰め込んでいたけれど、まさか自前でそれと同じ機能のスキルを持っていたなんて、宝の持ち腐れも甚だしい。いや、気付かなかった自分が全て悪いのだけど!

 僕はマジックバッグに入っている自分の私物をアイテムボックスへと移していく、けれど僕のアイテムボックスの容量はマジックバッグ程にはないようで、アイテムを50個ほど収めると容量MAXで荷物が入らなくなってしまった。


「あ、これ意外と使えないかも。せめてもう少し容量があったらな……って、そういえば拡張ってあった気が」


 僕はまた自分のステータスを開いて空間魔法をタップ、出てきた文字列の「拡張」をタップしてみた。けれど何も起こらない、文字反転すらしない。代わりに現れた文字列が『空間拡張ができる』という説明文で、いや、それは分かってんだよ! と心の中でツッコミを入れる。

 ん~? これはどうなってんだ? 声に出さなきゃ駄目なのか?

 僕は試しに「拡張!」と唱えてみる、すると僅かな違和感の後、気付けば僕の部屋が1.5倍ほどに広がっていた。


「え? なに? これどういうこと??」


 僕はアイテムボックスの容量を増やして欲しかっただけなのに、何故だが部屋が広がったぞ? 部屋が広がってしまった分、家の形はどうなってしまったのかと慌てて部屋を出てみたけれど、変わっているのは僕の部屋の内部だけ。外側には何も異変はない。


「ん~?」


 僕が廊下で首を傾げていたら、僕の魔力を感じたものかルーファウスが「どうしました?」と部屋から顔を覗かせた。


「部屋が広くなりました」

「説明が簡潔すぎて何を言っているのか分かりませんね」


 そう言いつつも僕の部屋を覗き込むルーファウス、自分の部屋と同じ広さであるはずの僕の部屋がずいぶん広がっているのを確認して「一体何をしたんですか?」と僕に問う。


「そういえば、スキルを持っているのに使った事ないなと思って、空間魔法を試してみたら部屋が広がりました」

「なるほど、空間魔法ですか。それなら部屋が広くなっても不思議ではありませんね。ですが部屋を広げたのはタケル自身ですよね? 何を不思議がっているのです?」

「僕は部屋を広げるつもりはなかったんです、アイテムボックスの容量が少ないので拡張できないかと思っただけで」

「アイテムボックス……そうでしたか。そういえばアイテムボックスは空間魔法でしたね。私は空間魔法は使えないので失念していましたよ」


 そういうと、ルーファウスはアイテムボックスの容量はスキルレベルのアップと共に自動的に拡張する事を教えてくれた。

 僕は今まで空間魔法を使ってこなかった、なので当然空間魔法のスキルレベルは1のまま、だからアイテムボックスも容量が少ないのだ。


「こんな便利な魔法があると知ってたら、もっと今まで有効活用してたのに!」


 ルーファウスが微妙に生温い視線を僕へと向ける。言いたい事は分かってる、僕は自分が空間魔法スキルを持っている事を知っていた、だけど今までそれを活用してこなかったのは僕自身がその辺の魔法をおざなりにしていたからだ、もっと早くから空間魔法について学んでいたなら、現時点でそんな馬鹿げた台詞を吐く事もなかったのだ。くぅ、不覚!


「タケルがこの部屋に使ったのは空間拡張の魔術ですね、空間魔法は使い方によっては様々な使い方ができますよ。例えばここに小さな箱を用意して、サイズはそのままに箱の中を拡張する事によって物置のようなスペースを作る事も可能です」


 おお!? それが可能という事は、もしかすると、その小箱の中に物を収納しておいて、更にそれをアイテムボックスの中にしまっておけば、僕の荷物は限りなく無限に収納可能という事か!?


「ちなみにその際、箱の中はマジックバックと同様になっているのでしょうか?」

「というと?」

「例えば野菜なんかをしまっておいた場合、マジックバックの中では時が止まったように痛む事はありませんが、僕の作ったその拡張空間ではその辺りはどうなるのでしょうか?」

「そうですねぇ、私も空間魔法は専門外なので詳しい事までは分かりませんが、とりあえず試してみたらいかがでしょうか?」


 確かにその通りだな。僕はルーファウスの言う通りに小さな小箱の中身を拡張して1メートル四方くらいの空間を生成してみた。

 続いてマジックバックの中から生野菜を取り出しその箱の中に収め、ついでにアイテムボックスの中にもしまってみる。これで二・三日様子を見て、痛まなければ僕の作るその空間の中はマジックバックと同じ状態になっていると確認ができる。


「これでよし!」

「それにしても、タケルは本当に多才ですね。他にも使える魔法スキルを持っているのですよね?」

「えっと、そうですね。あと使っていない魔法スキルは闇魔法くらいですけど」

「闇魔法……」


 少しだけルーファウスが眉間に皺を刻み「それは使わない方が良いと思います」と僕に告げる。


「? 何故ですか?」

「闇魔法は攻撃に特化していて、戦闘系の魔法スキルとしては最強と言ってもいい、ですがその使用には代償を伴うのです」

「代償?」


 今まで他の魔法スキルを使う事によって何かしらの代償を払った事など一度もない。けれどそんな中で闇魔法だけは代償を伴うというのは一体どういう事なのか?


「魔法、魔術というのは己の魔力を削って技を発動します。四属性魔法の場合はそれと合わせて火や水と言った自然界に存在するエレメンタルを使用する事で技が発動するのですが、聖魔法と闇魔法のふたつは発動条件が少し違っているのです。聖魔法が己の魔力と相手を思いやる心で発動するとしたら、闇魔法は相手への憎しみや憎悪で発動する魔術。闇魔法は使い続ければ続けただけそんな己の黒い心に侵食されて、使い手はいずれ気が触れ狂ってしまうのです」

「…………」


 ルーファウスに告げられた言葉がショッキングで僕は言葉が出てこない。ってか怖いよ、闇魔法!


「聖魔法と闇魔法の両方を使える魔術師がいないというのはそういう理由で、そもそも相反するそのふたつの魔法スキルを使える事の方が異例なのです。現在タケルは聖魔法のスキルの方が高いのでしょうから、闇魔法はこのまま封印しておいた方が良いと思います」

「確かに、僕も気が触れるのは嫌です」


 攻撃魔法なら現在四属性魔法だけで充分問題なく戦えている、そんな危険なリスクを負ってまで闇魔法を使うメリットなどありはしない。

 僕は闇魔法は使わないと、ルーファウスと約束をかわす。そんな僕にルーファウスは少しだけほっとしたような笑みを浮かべた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ