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流れ星亭

さとるに、長くあっていない友達から、手紙が届いた。


「君が働いていた『流れ星亭』を覚えているかい? 至急そこに来てくれないか?」


さとるは、正直「流れ星亭」なるものについて、何も覚えてはいなかった。


それでも、さとるは、友達の指示に従い「流れ星亭」なる場所を訪問してみることにした。


さとるは、「流れ星亭」の近くに宿を取った。


「流れ星亭」の住所は、手紙に書かれていた。


さとるは、勤め先には、連絡を入れておく必要があったので、電話を入れると上司が出た。


「気分を変えるにはいいだろう。この時期仕事が大変だから、息抜きも必要だ。嫌なことがあっても自分の中に溜め込んでしまうのはよくない」


さとるの休暇には、上司は理解があった。


      #       #


さとるは、「流れ星亭」の最寄りの駅で降りると、地図を頼りに「流れ星亭」の場所を探そうとした。


しかし、さとるが乗ったタクシーの運転手は、「流れ星亭」のことを知らなかった。


タクシーの運転手は、地元の人で、それでも、「流れ星亭」のことは、知らないという。


「確かに、この土地は、山奥で、遠くの山まで見渡せる場所がいくつもあり、流れ星はよく見れるので、季節には、流れ星目当ての観光客も多く訪れるのだが、それでも、『流れ星亭』なんて店の話は聞かない」


さとるは、タクシーで、地図の場所に向かってもらった。


さとるは、地図に示された場所がたんなる空き地であることを確信した。


さとるは、タクシーの運転手に頼んで、宿にやってきた。


宿は、季節はずれ、ガラガラの状態であった。


宿には、若者のカップルがいただけだ。


宿の主人は、毎年、この時期には客がいないという。


宿のホールの壁には、一枚に額縁絵がかかっていた。


額縁の絵には、天使のような女性の肖像画。


さとるは、その絵にみとれた、その絵の前に釘付けになった。


さとるは、その絵を見るのをやめなかった。


さとるの額縁の娘を見る様子はただならぬ物であった。


さとるの様子を見て、宿の主人は不安な気持ちになった。


宿の主人は、額縁の娘の絵の前に立ち尽くす男に、これは、額縁の絵の説明をしなければらちはあかないと思われた。


神聖な絵であるように見える若い娘を描いた額縁の絵についての言い伝えを、宿の主人は、さとるという客に話すことにした。


その絵に描かれた美しい女性は、大昔、この宿の何代も前の主人の娘であるという。絵心のあるその主人は、自慢の娘を絵に描き、この娘の絵を額縁に入れて宿のホールに飾ったという。


これは、大昔の話なのだが、昔と変わらずこの娘の絵の額縁がホールに飾ってあるのである。


宿の主人の額縁の絵の話を聞き終えると、さとるの表情が、落ち着きを取り戻した。


ふと気づくと、宿の主人とさとるとのそばに、若いカップルがやってきて、一緒に宿の主人の話を聞き、額縁の娘の絵に見入っていた。


      #       #


翌日、ひとりの男が宿の主人を訪ねてきた。


男と宿の主人とは、馴染みなようで、二人は、ホールのテーブルで話をはじめた。


宿の主人は、まず前日宿にやってきた客たちのことを報告した。


宿の主人は、男に今年もいつもの話をいつもの通りに始めた。


何の話かというと、例の額縁の絵に描かれた娘の話である。


娘は、年頃になり、ひとりの若者と恋をし、この若者と結婚することになった。娘を描いた宿の主人は、この結婚を祝福して、若者を婿むことして、一家に迎え入れた。


額縁の娘の絵を描いた主人は、娘と婿むこのために、『流れ星亭』という料理屋を新しく作り、娘と婿むこにその店を任せた。娘と婿の家庭には、子供が生まれ、幸せにあふれた家庭がまたひとつ誕生した。


しかし、額縁の娘の一家に不幸が訪れた。


ある日、額縁の娘の一家が、忽然こつぜゆんと姿を消してしまったのた。


「ここには、エイリアンが基地のようなものを作っていて、世界中のエイリアンにとある命令を送っていたそうだ。それは、エイリアンのUFOの目撃者というのは、エイリアンに不都合をもたらすものなので、UFOを目撃した人間をすべて処分するようにということだったらしい」


宿の主人は、男に説明した。


男は、主人に反論した。


「昔はそんな事もあったというのですが、本当のところは、作り話だっていう話もあった」


宿の主人は、男に自分の考えを最後まで伝えた。


「『流れ星亭』の一家は、ここらでも特に眺めの良い場所に暮らしていた。そのために、UFOなどを目撃していたとしても不思議ではない」


「確かに、不幸な話だが、それは事実として考える他はない。他には、この幽霊たちの説明はできないな」


男は、宿の主人に別れを告げると、庭を通り過ぎ、駐車場を通り過ぎ、道路に出た。


男は、道路で、自分の頭上を仰ぎ見ると、空に向かって手を振った。大空に待たせてある自分のタクシーを呼び寄せるかのような素振りであった。


男の手を振るゼスチャーにこたえて、大空から一機のUFOが舞い降りてきた。UFOは、男を吸収した。


そして、UFOは、空のかなたに飛去って行った。


宿の中では、宿の主人が写真を見ていた。宿の主人が、客に頼まれて撮った記念の家族写真である。


写真には、昨日宿を訪れた若いカップルと、さとると、例の額縁の若い娘の絵が写っていた。


 了


冬の童話2022

お題「流れ星」


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― 新着の感想 ―
[一言] 最後がすっごく怖いです……。 UFO……。
2023/04/23 19:12 退会済み
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