第45話 旋律を奏でる魔法師
今回は共闘回。
ザプリェットとフロイドは、残る2人の将を討つためにタッグを組んで行動を開始した。
ただ心配事が二つ。
“非効率的になってしまう事“と”敵将がどのような戦法を使うのかが分かっていない“ということだ。
戦場では情報が大切なのだが、何故なら足下を掬われかねないからだ。
しかし圧倒的な実力を持つザプリェットと頭脳派のフロイドが組めば仮に奇襲を仕掛けられても対応できたりはするので案外脳筋なのが現実である。
そんな感じなのか、2人は総じて余裕な感じである。
「ザプリェット………左大臣の事、なんだけど。」
「うん、なに?」
「実はさ………左大臣がこの件で糸を引いているのは聞いていたんだよ、あの時点で。」
「………ホント?」
「詳しくは知らなかった、だけどグレアムの断末魔を聞いて関わっているのは頭に入れていたんだよ。君は知らないと思っていたからさ………敢えて怒って演技していたんだけど、ザプリェットがあまりにも冷静だったからさ、ビックリしちゃってね? 内心さ?」
「演技、ね………アンタそういうタイプだったっけ? 全然分かんなかった………」
「…………女装させられた時に、ね………嘘をついて場を乗り切る、という事も覚えたんだよ、アレからね。」
「ま、私もそうだよ、学んだ事と言えば。父さんと初めて戦った時さ………内心熱くなりすぎてて頭を回してなかったからね。戦いの中で冷静になる事も覚えたから『落ち着け』って言ったんだけどね。」
2人は苦笑を交わす。
お互いに学んだ事を明かすほどには、こうやって余裕がある証拠だ。
と、ここで銃声が2人の耳に入ってくる。
ガトリング銃のリボルバーが弾かれて乱射されている模様だった。
それと同時に、2人に戦闘のスイッチが点火されていく。
「さーて………敵兵がいるねえ………どうする、ザプリェット?」
「まー面倒臭いからね、雑魚は。ここは任せといて。」
ザプリェットは足を一度止め、珍しく魔法陣を足下に展開させた。
それも、超広範囲の、だ。
「『魂喰い』………『喰みの領域』」
フロイドが不意に腕で顔を覆う中、ザプリェットは魔王のような禍々しいオーラを纏っている。
「行くよ、フロイド。」
「う、うん………」
フロイドは気圧されながら、ザプリェットの後をついていくことにするのであった。
進んでいく中、ザプリェットの作り出したサークルに入った雑兵達は次々と魂を奪われていき、ザプリェットの体内へと吸収されていった。
「す、凄い………これがザプリェットの………」
「いいでしょ、これ。面倒臭い時にはこーやって時短で進めるから便利。」
「………これザプリェットの魔法力だから出来る事じゃないの?? 僕には少なくとも無理だよ、こんなの………」
「ま、フロイドでギリだね。これコントロールできるまで時間掛かったし。」
「………にしても、僕はなんで獲られてないんだろ。大胆に入っても大丈夫なの、これ??」
「フロイドは獲らないよ? だってさ………生殺与奪の権は私が握ってるから。誰の魂を奪うかは、私が決める事だから気にしなくていい。」
「OK……なら、お言葉に甘えて援護しちゃいますか!!」
肩の荷が降りたのか、フロイドも絶好調と言わんばかりにサークル外の雑兵を魔法で討ち倒していく。
炎、風、雷………と、多種多様、変幻自在に繰り出して倒していく。
そうこうしているうちに、北側を攻めている将と遭遇した。
「ほう………まさかガキが紛れてるとはな………それも上玉のメスガキが2人もか………」
フロイドを女と勘違いしているのは置いておいて、カーキ色の軍服に身を包んだその男はザプリェットとフロイドを見るなり落雷魔法を繰り出してきた。
「俺はイーロン・ストラスジア。フィールダムの将の1人だ。」
イーロンは指を鳴らして雷魔法を地で這うような軌道で滑らせ、その軌道が進んだ時間差で地割れが発生した。
2人はなんとか避けたものの、最悪転落死しかねないレベルで凶悪極まりない能力だった。
「こりゃ長引いたらヤバいね………ザプリェット、速攻で行ける?」
「余裕。父さんと比べたらカス。」
そう言って地面に掌を置き、ザプリェットはひとつ息を吐いた。
「『魂の放出・魂の記憶』………『生命の移動』」
ザプリェットはアムールの魔法を呼び覚まさせ、地割れから斧を顕現させた。
「『横薙ぎ・斬撃波』」
ギギギギ………と作り出された斧が横向きにゆっくりとなり、ザプリェットが指を鳴らすと同時に高速スイングを繰り出し、飛ぶ斬撃を放ってイーロンを真っ二つに斬り裂き、一瞬にして絶命させた。
「………!! 話には聞いてたけど、これ程までなんて………!!」
「うーん………まだ慣れてないな、父さんのは………フローティアのはすぐ使いこなせたんだけど、やっぱ相性なのかな、コレは………」
そこにもう1人の将が現れた。
「へ〜〜〜??? イーロンを一瞬、かぁ………?? いいねえ、僕の中の旋律が響鳴してしまうじゃないか………」
(なに、コイツ………!! 強い、というか………得体が知れない……!!)
ザプリェットは一気に警戒心を強めた。
そしてもう1人の将は慇懃に名乗った。
「ああ、申し遅れたね、僕はフィールダム東の将・『ラヒモフ・スロディルガス』。音楽と死体と断末魔が好きなんだよ、僕はね? だから………君たちの断末魔の旋律、聴かせてくれよぉぉぉ!!!」
「ザプリェット!! 気をつけて!! 仕掛けてくる!!」
「了解!!」
「『静かなる旋律』」
何かをしたわけにも見えなかったが、フワ………と風の音だけが流れた。
しかし次の瞬間。
ザプリェットの両肩が音もなく切れ、出血が。
(!? い、今………!! 何をされたの!? まったく分からなかった………!! 強いけど違う種類の強さだ、何をしてくるか全くわかんないよ………!!)
流石のザプリェットも想定外だったようで、すぐさま魂を使って止血をするが、何故肩をやられたのか、全く見当がついていないという顔だった。
「フフフ………驚いたかい? これが僕の魔法、『旋律』さ………さあ、もっと聞かせてくれよ………!! 苦しみの中で響いてくる、君の泣き声をさぁ………??」
(コイツ………!! 特上の変態だ………!! けど魔法の正体が何か分かるまでは一人でなんとかやってみるか………!!)
ザプリェットはフロイドの方を顔を向け、こう指示した。
「フロイド! 私がわざと攻撃を食らうからそれで魔法を分析して!! アンタの戦略がカギ!!」
「!? りょ、了解!!!」
フロイドも訳がわからないままラヒモフの魔法を分析する事に今は専念していくのであった。
しかしザプリェットはこの後気付く事になる。
ザプリェットとラヒモフの魔法が「とんでもなく相性が悪い」ことに。
イーロンは話数の関係上、出オチキャラにしました。(本来なら強いんですけどね)
また、ラヒモフは変態的にヤベーヤツに仕上げたので、そこを楽しんでもらえれば。
次回は色々詰め込んで終章にしたいと思いますので、よろしくです。




