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第44話 目的と黒幕

今回はザプリェットを動かすと同時に、何故シャファリムを襲撃したのか、それを紐解き明かす内容にしたいと思います。

第二部序盤の流れにも繋げればいいかな、と考えておりますのでよろしくお願いします。

 基地の防衛線は立て直され、捕らえた敵将・ミネアの意識も回復したタイミングでペルセウスは待機していたザプリェットに無線を繋ぐ。


「ザプリェット、聴こえるか?」


『ハイ、大丈夫でーす、どーぞ先生。』


「敵将の1人を捕らえた。これから俺の魔法で尋問していくから耳かっぽじってよく聞いとけよ?」


『りょうかーい。』


ザプリェットは待ちくたびれたのか、気怠げな声を発している。


戦況を気にすることのない別室で与えられていた食事を黙々と食べていたのが要因ではあるが。


ただ、そこはペルセウスの作戦で敵に手の内を見せるわけにはいかない、というザプリェットを軍のエースのような存在の扱いをしていたので、体力の温存を兼ねている。


まあ、ザプリェットの戦闘狂っぷりをコントロールするにはこう言い聞かせるのが一番いいのではあるが。


と、ザプリェットのいる部屋にフロイドが入ってきた。


「おーフロイド、大丈夫? 随分とやられたみたいじゃん?」


「相手が学園の元首席だったからね………流石に骨が折れるよ、アレは………ザプリェットほどじゃないけど普通に手強かったし。」


「ピラフでも食べる?」


「………あのさ、疲れ過ぎて食事どころじゃないんだよ今………」


「まあ、いいよそこは。無理しないでも………それはそうとさ、今先生から無線が入るから聴く? 折角だから。」


「む、無線??? ど、どういうことだい???」


「ラチェーカが敵将を捕まえたってさ。今から先生の魔法で尋問するから。特にアンタは………()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 右大臣の息子として。」


「そうだね………今回の目的が何なのか、それを聴いてみよう。」


こうして2人は『フィールダム』の目的が何なのか、真実を知ることにしたのであった。





 さて、ここからはペルセウスの「忠誠(ホーリネックス)」により、尋問が開始される。


一応、ミネアはまだ起き上がったばかりなので逃れられる体力があるわけではないが、万一に備えてラチェーカが念魔法で足枷を作って逃げられないようにはしてある。


その状態なので、ミネアは意識はやや朦朧としながらも大人しくシャファリム軍に従うしか道はない。


ペルセウスが質問をしていく。


「お前に色々聞きてえ事はあるがな………早急に終わらせねえとこっちも危ねえからな、要点を絞ってお前に聞くがいいか?」


「はい………」


「じゃあまずに一個目。何故この基地を襲撃した? 仮にもこのサダムパテック管轄の基地だ、サダムパテックの国民であるお前らが襲撃して、その後は分かっている筈だ、それを承知で襲撃したのなら………それ相応の理由があるんだろうな?」


「………い、言われたんです………ここを襲撃して制圧して………外国に、売り渡すと………」


ペルセウスの顔が曇る。


それが目的か、と。


売国奴もいい所ではあるが、それを動かすのが背後にいるのは一発で分かった。


しかし、ペルセウスは冷静に怒りを鎮め、問い詰めにかかる。


「………誰に言われて、そして制圧したら何処の国に売り渡す気だったんだ?」


ミネアは言いづらそうに表情に影を落としている。


よほど言いにくい事情があるのだろう。


しかし「忠誠(ホーリネックス)」は意志とは裏腹に()()()()()()魔法なので、無関係に発言してしまうのである。


ゆっくり、重い口をミネアは開いた。


「………制圧したら………隣国の、アルベーニャに権利を譲渡するつもりでした………そして

それをアタシたちに指示したのは………」


ミネアの表情が一気に青褪めて、歯がガタガタと音を立てて、震えているのがこの場にいる者だけでなく、無線で聴いていたザプリェットとフロイドの2人にもハッキリと伝わった。


「………命令したのは………この国の()()()『ソディット・ルベリウス』………その方です………」


このカミングアウトに、基地の軍人はもとい、ラチェーカも動揺を隠せなかった。





 一方、これを別室で聴いていた2人は。


フロイドは明らかに動揺している状態だった。


「う、嘘でしょ………!? まさか左大臣殿が………!?!?」


しかしザプリェットは肩に手を置き、首を横に振った。


落ち着け、と言わんばかりに。


「まだ話は終わってない。怒りをぶつけるならその後で。」


「分かってる、分かってるけど………!!」


フロイドにしては珍しく、怒りに震えているようだった。


「やり場の無い怒りなんて、ぶつけたって意味は無い。今やる事はアイツらの撃退なんだから、先の事で怒っててもしょうがない。」


「分かってるってば、だから………!! 1人じゃどうしようも出来ない問題じゃないか、コレは………!!」


ザプリェットはアムールから左大臣の悪どさを聞いているのでまだ冷静さを保てているが、対照的なフロイドが、普段は怒らないような優しい人格をしているフロイドがここまで感情を露わにするとは思っていなかったザプリェットは表情を少し硬らせた。




 そして一方で、ペルセウスサイドは、というと。


怒りに身を任せたような兵士が、ミネアに向かって銃口を向ける。


だがペルセウスは冷静に、止せと言って制止させる。


「オイ、一卒兵君。愛国心があるのは分かるが、今コイツを殺したところで何が生まれるというんだ? まだ全部を聞き出していねえ、尋問の最中に殺すアホがいるのか? アア?」


「も、申し訳ございません………」


「ったく、そういう教育をしていねえのか、この脳筋どもが………まあいい、ミネア、更に問い詰めていくがいいか?」


ミネアは無言で頷く。


「左大臣にどんな弱みを握られた? 元々は意思が強かったじゃねえかよ? 学園生の時は。軍に入ってお前に何があった?」


「軍に入ったあと、最初のうちは戦果を上げていたんです、でも………特殊クラスの出身で地位を上げていくとどうしても妬まれてしまって………嵌められてシェフィールに左遷させられまして………そこにタイミング悪く左大臣殿が私に来て………」


息が荒くなっているのが伝わってくる。


ミネアがこう続けた。


「貴様の家族を人質に取った、解放してほしければ私に従え、と………それで告げられたのが基地制圧(この計画)だったんです………それが1ヶ月前のことで、そこからは軍議を重ねてシミュレーションをしていて……」


「なるほどな………左遷という劣等感を抱えていたところに左大臣が家族を人質、か………それで国を売る覚悟を決めた、と。」


ミネアがコクリと頷く。


しかしここで怒りに震えていたのはラチェーカだった。


「な、なんてッッ………!!! 卑劣なことを…………!!!!」


鬼の形相で怒りのオーラを発されている模様で、こちらもフロイド同様にやり場のない怒りを抱えていた。


見かねたペルセウスは「忠誠(ホーリネックス)」を指を鳴らして解除した。


「………辛かったな、ミネア………だがな、国への叛逆行為をしたのは事実だ、俺はそんな風にお前を教えたつもりはねえ、だから………」


ペルセウスは拳を握りしめる。


「!? せ、先生!? 何をなさるおつもりで………!?」


これに気付いたラチェーカが止めようとしたが、ペルセウスはそれとは関係なしにこう呟く。


「一発………殴らせろ、ミネア!!」


ラチェーカの制止も甲斐なく、ペルセウスは感情のままミネアの顔面を殴り飛ばした。


ベッドに背から受け身なしで倒され、ミネアが痛みで顔を顰めた。


「一つ言うぞ………例え家族を人質に取られていようがな!! 従っていい命令とそうじゃねえ命令があんだろうがよ!! ましてや国を売るような行為、どうなるかテメエもよく分かっちゃいるよな!?!? 謝って済むような問題じゃ、無くなってんだろうが、どんな理由があろうとな!! 生まれ育った国を愛することができねえヤツが国民を名乗る資格なんかねえんだよ!! お前は国中の人間を敵に回した、俺はお前にそう教えてきたか!?」


「ち、ちがっ………違い………ます………!!」


自らの業の深さをペルセウスの言葉で痛感したのか、ミネアは溢れる涙を止めることが出来なかった。


「………まあいい、この事は右大臣に報告させてもらう。懲戒解雇は確実なのは覚悟しておけ、真面目なお前なら分かるだろ?」


「………ハイ………潔く、受け入れます………」


「………よく我慢したよ、お前は………絶対権力者にああ言われちゃあ、従うっきゃねえのは仕方がねえ。悩み、苦しんだんだろ? 家族が心配で仕方がなかったんだろ? まったくよ………せめてそうなったら俺にでもいいから一言、手紙でもよこしゃ良かったじゃねえか。言ったろ? ミネア………俺は教え子を見捨てねえ。それは背信行為をしちまっても、人間失敗するもんだろ? 間違っていたと気付けたならよ………前に進めるモンなのさ。」


ミネアは目を覆い、嗚咽を漏らして泣いた。


「先生………なんで、助けるんです? いくら教え子とはいえ、売国行為は………」


「………ラチェーカ、どうしようもねえヤツは救いようがねえから殺しはする、だがな………俺のクラスは”逆境を乗り越える力“を教える方針なんだ、それは誰だろうと変わらねえ。コイツにゃまだやる事がある、だから今はよ、ラチェーカ………お前が側にいてやってくれ。」


「せ、先生は………」


「俺は負傷兵の治療をしなきゃいけねえからな、ミネアが落ち着くまで2人きりにしておくからよ、頼むぞ。」


「………分かりました………」


そう言ってペルセウスは一般兵を連れて部屋を後にし、負傷兵の治療に向かっていくのであった。





 話を聞き終えたザプリェットとフロイドは。


「ッッッ〜〜〜〜…………!!!! ふざけるな…………!!!! ふざけんな!!!!! 何が”国民のため“だッッッ!!! ”サダムパテックの繁栄のため“だッッッッッッ!!!! 許せない、絶対に左大臣を______」


「フロイド!!!」


激昂して癇癪を起こしかけるフロイドをザプリェットが一喝で鎮めた。


「気持ちは分かる、でも落ち着かないと話にならない………そうでしょ? さっきも言ったけど()()左大臣とかどうでもいい。今はここを切り抜けて基地を護ることじゃないの?」


「分かってるよ………!! 悔しくないのか!? こんな風に利用されて………!! 売国に手を貸すようなマネまでして………!!」


「怒ってるのは私も同じ。ミネアの言ってる事は先生の魔法だから間違いない、嘘を吐いてるわけじゃない。だからこそ今ここを切り抜けないと………()()もろくに出来ないからね。」


「じゅ、準備………!?」


「フロイド、付いてきてくれる? 恐らくだけど、私でも屈強な軍人相手は骨が折れるから。アンタがいると頼もしいし………その『準備』はアイツらを撃退したら話すよ。」


「………オッケー、分かった。力を貸すよ。2人で大丈夫かい?」


「問題ないよ。むしろ足手まといになるからそっちの方が動きやすい。」


ザプリェットとフロイドは、残る2人の将を討つために行動を開始したのであった。

次回から2話かけて、残る敵将2人を倒す回にしますし、ザプリェットの計画も語れますんで、お楽しみに。

それが第二部序盤に繋がりますしね。

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