第39話 冷徹な軍略家・フロイド
今回は、今後展開する“軍人パート”の礎となる回にしようと思います。
僕の中でフロイドは「もう1人の主人公」という位置付けなので、ザプリェットを支える立場ということを確立していく回になりますね。
さて、十分に休息を取ったことで、4人は戦略会議室へと呼び出されていた。
「ペルセウスくん、今日はよく来てくれたね。戦況は………大方聞いている通りだ。敵があまりにも強いのか降伏寸前というところまで来ていてな………」
嘆きながら説明したのは軍基地長である「ケリー・レーニン」中佐。
齢46歳と、軍でも中堅の域まで来ている。
元は高水準の光魔法で戦果を上げた実力者なのだが、「フィールダム」の力量は計りかねているといっても過言ではなかった。
つまり、司令塔としては並、ということである。
「………ったく、だらしないですね………普段からそういう準備をしてねーからそうなるんじゃないですか?」
「その通りだ………ぐうの音もでない、私の責任だ。」
「まあいいです、学院の実力者を連れてきたんで………上手くいきゃ、撃退というところまではいけますよ。」
ペルセウスは休憩中に作った図面を広げ、その後でコマを置き、ザプリェットが夜のうちに得た情報を元に、配置を確認していく。
「報告によれば、夕方に来る………ということでしたので、おそらく今日、向こうは全軍で攻め上がるでしょう。」
「全軍………!! ただでさえ怪我人が多いというのに………!!」
「ただ、どうにかできる策はあります。というわけで………フロイド、どう見る?」
フロイドは前に出て、ケリーに見せつけるかのように、コマを手早く置いていった。
「まずローウェン伍長の報告を見るにあたって………敵の主力の1人・グリアルが主攻の中で最も厄介な相手であることは間違いないでしょう。ですが、ここの軍を敢えて少なくし、迎え撃ちます。ザプリェットの魔法で、何処から攻めてくるかの情報は得ていますから。」
と言って、フロイドは基地の入り口から見た、西側を指差した。
「ここを敢えて手薄にし、誘き出します。そしてその部隊の逃げ場を無くし、一気に畳み掛けます。」
「だが………出来るのか? グリアルは只者ではないぞ?」
「毒を使う、ということは事前に情報を得ています。こちらの被害を最小限に減らすには………少なめの方が作戦を立てやすいのでね、あとは僕の指示に従ってさえ戴ければ………確実にグレアムを仕留められる筈です。」
「………それをどうする気だ? 仕留められる根拠はあるか?」
「あくまで兵は囮です。罠に嵌めるための。本命はこの僕ですので、一対一で仕留めますよ、彼を必ず。」
フロイドは左腕をパキン、と鳴らして自信たっぷりのようだった。
「………それで、他はどうする? グレアムの他に3人いる、だがな………素性が知れない者ばかりでな、これについてはどう考える?」
「吐かせるんですよ、無理矢理にでも。ということで………先生、そこの方はお願いします。」
「俺はラチェーカと行けば………いいんだろ? ラチェーカの魔法で捕らえて、将の情報を俺の魔法で吐かせる、そういう算段だな?」
「そうですね。でもそうするには2つ、捨てなきゃいけませんから………でも対策は怠りませんよ、そこは。各所を制圧に来る、つまり………時限爆弾が機能出来ますからね。」
「時限爆弾? この短時間で出来るのか?」
フロイドは時限爆弾を入れる用の、透明な薄いものを用意し、風船を膨らませるように息を入れた。
「これに魔法を詰め込むんです。ザプリェットの魔法、そして………僕の魔法を2種類。これを各部屋に配置し、ドアを開けた瞬間に起爆させる_______敵を爆殺できるだけでなく、こちらに敵の居場所を知らせるものになっていますからね。これは事前に予行演習済みです。」
「フロイドくん…………我らの部隊も巻き込む気か?」
「ああいう非道な相手には、こちらも手段を選んではいられません、故に敵味方ともに容赦は要りません。何が目的か、それを吐かせると同時に敵を殲滅していく______これが僕の戦い方です。そして雑兵をある程度減らしたら………ザプリェットを行かせますよ。将を討ち取り、総大将の首をも獲れるのは彼女くらいですから。」
フロイドは、普段のイジられ具合からは想像が出来ないほどの冷徹な眼をしていた。
その目は、ザプリェットに戦慄を与えるには十分だった。
(一見奇策に見えるけど………人を使うのが上手い、やっぱりフロイドは敵に回したらダメだな、これは………私でもやられかねないからね………)
ケリーは、一つ条件を加えた上でこう、フロイドに言った。
「分かった、君の作戦を信じる。だがな、条件がある。全軍、出動させたまえ。そうでなければこちらに無駄な血が流れるだけだ。」
「………無論、そのつもりですよ。シャファリムを手放すわけにはいきませんし、怪我人でも容赦なく戦力に入れますよ、僕は。」
「すまないな………よし、全軍配置に付け!! このシャファリムを絶対に守り切るのだ!!!」
ケリーは基地長としての威厳を発揮し、スムーズに全員を配置させていったのであった。
一方、「フィールダム」の方はというと。
「ほーう? 俺のところは手薄だって?」
「ああ、そのつもりのようだ。」
基地の動向の報告を仲間から受け、吊り目に左耳に宝石の3連ピアス、左腕には骸骨を象ったタトゥーを入れた男・グレアムはクハッ、と噴き出すように笑った。
「舐められたモンだな………オイ、別の奴らにも伝えとけ。『俺が先陣を切る、それを見て時間差で突撃しろ』ってな。」
「任せておけ。周知させておく。」
グレアムは伝令役が去った後、立ち上がり、闇魔法のレーザーを放って風穴を開けると、多数の部下を引き連れ侵入していった。
グレアムの軍を迎え撃つフロイドが指揮する兵士たちだったが、圧倒的な実力の前に退かざるを得なかった。
「へー………? 逃げんのか、張り合いがねえな………?? オイ、兵士どもを追え。1人たりとも生かすな。全員無様に殺しやがれ。」
冷酷なグレアムの指示に、部下たちは背を打っていく。
シャファリム軍は反撃をしていくものの、多勢に無勢である。
しかも退けば退くたびに、面白いように引き連れていくのであった。
だが、これも全てフロイドの作戦だった。
なにしろフロイドの兵は全員、囮要員の負傷兵だけで構成されたものだったのだから。
ある部屋に隠れ、グレアムの兵たち及びグレアム本人がその部屋に入ったその瞬間だった。
「条件魔法……炎の式!! 『焦熱の雨』!!!」
入った瞬間に、雑兵達が火の雨霰に晒され、断末魔と共に全身が火だるまになった。
流石のグレアムも、動揺を隠せなかった。
「なっ………!! オイ、出てきやがれ!!!」
グレアムが叫ぶと、黒いローブを身につけたフロイドが姿を現した。
「テメエか………この俺様を舐め腐ったこと、後悔しやがれ、クソガキが………!!」
グレアムは魔法の準備を整えて、臨戦体勢に入った。
だがグレアムの威圧的な言葉にも、フロイドは怯む様子はなかった。
どころか、余裕すら感じさせていた。
「君如きに負けてちゃあ、“ザプリェットの右腕”は名乗れないからね………悪いけど、骨も残らず消えてもらうよ!!」
グレアムとフロイドの戦いが、幕を開けようとしていたのであった。
次回はフロイドVSグレアムです。
フロイドは頭がいいので、毒をどう対処するかも必見です。




