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第38話 シャファリム軍基地襲撃事件

今回から新章・『シャファリム編』です。


左大臣派との対立構造、サスペンス構造になっていますので、事件の解決と同時に起こる急展開を見てもらえればと思います。

 サダムパテック魔法学院で文化祭が催される数日前のこと。


シャファリムという、縦に細長い島で事件は起こった。


謎の集団がシャファリムの軍基地を襲撃し、前戦の軍人で約500人が死傷した………というものだった。


軍は当然徹底抗戦を仕掛けていくものの、相手が()()()()()()()()だったということは後に明らかとなる。


そして伝令により明らかになったのが彼らが名乗っていた組織名である。



「フィールダム」…………と。




「シャファリムに行きたい………だと??」


「ハイ。」


ペルセウスが驚いた表情でザプリェットにそう問うた。


というのも、ザプリェットからシャファリムに行きたい………と言い出したのである。


「………ったく、あそこは今、戦争の真っ最中なんだぞ………?? ガキが首を突っ込んでいい場所なんかじゃねえ、辞めておけ。」


「大丈夫です、フロイドから聞きましたから。」


「そういう問題じゃねえ、軍にも属していねえお前らが無闇に首を突っ込むな、って言ってんだよ。それで死んじまったらどう責任を取らせるつもりでいるんだ??」


ペルセウスも、ザプリェットのことは娘のように想っているのは事実なので、親心的な意味で心配になっていた。


だがザプリェットも意思は固かった。


「最強の魔法師____それを私は目指してます、だからこそ敵を葬れば………私も認めてもらえるかもしれないし、何よりフロイドが言ってました。シャファリムを獲られたら………後方に敵が出来てしまう、って。幾ら広いサダムパテックといえど………取り返すのは容易ではない、だから援軍に行くんです。私たちで。」


「まったく………アムールを倒したからって調子に乗ってんじゃねえよ………ますます無鉄砲になってんじゃねえか、テメエ………理事長からの報告によれば、相手は正体不明の魔法師とのことだ。しかも相当なやり手………ザプリェットといえど苦戦は必至だ。行くのは得策じゃねえが………俺がこう言ってもお前は止まる気はねえんだろ?」


「ハイ。先生、行かせてください。友達の頼みは断れないですから。」


ザプリェットの真っ直ぐな目に、ペルセウスは観念した。


「そこまで言うなら俺は止めねえ………だがな、生徒だけで行かせるわけにゃいかん。万が一死んだら責任を取るヤツが居ねえからな。だから()()()()()俺も行く。後方支援は任せておけ。」


「ありがとうございます!」


心強い助っ人(ペルセウス)が戦列に加わったことで、ザプリェット、フロイド、ラチェーカ、ペルセウスの4人はシャファリムに行き、先ずは偵察と行くのであった。





 ………とはいえ、シャファリムまでは9時間ほどかかったので、着く頃には深夜になっていたのだが、偵察には好都合である。


ザプリェットはフローティアの魂を使い、敵のキャンプ地の偵察を試みた。


「………どう? ザプリェット………なんかわかった?」


「うーん………これだけじゃなんとも………ただ、見るからにヤバそうなのが4人はいるかな………」


ザプリェットはフローティアのように、映像を覗き見るようなことは出来ないので、魂が送るテレパシーのようにでないと「舜天夢双(ピクシードアーツ)」を使うことはできない。


あくまでも劣化版、というのが彼女の認識である。


「4人も………!? じゃあそれぞれで指揮を執ってるってことでしょ!? 大丈夫なの………!?!?」


「そこまでは………まだ戦力が分かってないからね………そこは現地の軍の人に聞くしかないんだけど………受け入れてくれるかな………??」


ザプリェットですら計りかねる相手に、ラチェーカは顔を顰めた。


なにしろ得体が知れないというのがあるので、かなり面倒な相手になるのは間違いがなかった。


だがペルセウスはこの時のために準備をしていた。


「ガキども………ここまで来てそんな心配をしてんじゃねえぞ? もう書簡は送ってる。俺の紹介がありゃ、テメーら如きでも受け入れてもらえるさ。誇張気味に書いたから、即戦力として期待はできるはずだ……っていう文を送ってる。安心して良い。」


「………どんなコネ使ってるんですか、先生………お父様でもこんなことできませんわよ………??」


「バカ言え。これでも昔、軍医としていた経験があるんだぜ? 今は教師という職が水に合ってたってだけだ。………じゃ、行くぞ。気付かれたら終いだ、慎重に抜けるぞ。」


「「「了解。」」」


ペルセウスの先導のもと、4人は敵組織「フィールダム」の駐屯所を抜け、軍基地へと入っていった。





 翌日の明朝、4人はシャファリム軍基地へと到着した。


「ペルセウス先生、よくぞお越しで………!!」


「まったく、ここに来る気はなかったんだがな………ガキどもの熱意に推されて来ただけだ。」


ペルセウスは素直ではなかったものの、迎えに来た軍人は、どうやらペルセウスも元教え子のようであった。


「………で、ローウェン。戦況はどうなってやがる。お前らで梃子摺るような相手なのか?」


ローウェンと呼ばれた、細身の軍人は、戦況を伝える。


「え、ええ………なにしろ魔法師の集団でありまして………しかも得体が知れないような。ただ………1人の名は判明しました。」


「どんなヤツだ? そうじゃなきゃ、情報として得られねえ。」


「その男の名は………『グリアル・オーベルニュ』。5()()()()()()()()()()()()()です。」


「グリアルが、か………チッ、めんどくせえのを相手にするもんだな………」


「せ、先生………首席だった、ということは………」


フロイドがここで話に割って入る。


首席だった人間が敵に回ることなど前代未聞の事態、フロイドはそこを知りたかった。


「グリアルはな………確かに魔法の才はあったが………人間性に難があるヤツでな、度重なる問題を起こしては困らせたモンだった。卒業後に消息不明になっていたんだが………まさかこんなところにいたとはな。」


「それで? 先生、彼はどのような魔法を使うので? 試験官であらせられる貴方なら、お分かりになるはずでは?」


「グリアルはその年ではぶっち切りでの数値を叩き出した。だが典型的な早熟でな………20万が最高値だったが、叩き出したのは85680。成長力は見込めねえヤツだったが………ヤツの厄介なところは魔法の属性にある。」


「属性? 魔法値を埋める厄介な魔法ですか?」


「確かに魔法力だけならアムールよりは劣る。それは紛れもねえ事実さ。だがな、アイツの魔法は闇属性を主体に使うが………それ以上に厄介なのが『()()()』。変幻自在に、千差万別的に毒を放り出すものだからな、しかもアイツは躊躇いもなく、誰ふり構わず使うものだから………俺でなければ対処ができなかった、それくらい厄介なヤツなんだ。それが戦場にいるんだったら…………これほど厄介なヤツはいねえ。」


「毒…………か。私が1番苦手なタイプですね………」


ザプリェットはボソッとつぶやく。


嘘をつくのが苦手なザプリェットのことだ、本当に苦手なタイプなのだろう。


「私の魔法は体調によって左右されるんです、肉体的なケガなら問題はないんですけど………神経系から毒を蝕まれたら、威力は落ちる。仕留めるなら速攻で行かないと保たないのは明白ですよね………」


「そうだな………厄介なヤツほど、早めに仕留めるに限る。ローウェン、ザプリェットが言うにはな、他にもあと3人、いるらしい。早く調べ上げるよう、上層部にも言ってくれねえか? じゃねえと戦略の立てようがない。」


「ハイ、すぐにお伝えします。」


ペルセウスが策を考ずるため、ローウェンに指示を送り、ローウェンは一礼をして上層部の元へと向かった。


「………先生、この後どうするんですか?」


「部屋を用意してくれているそうだ。だからそこで、指示があるまで休むぞ。移動疲れもあるだろうからな。」


ペルセウスたちは、用意された部屋へと入り、暫し休憩をするのであった。

次回から戦闘に入ります。

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