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第36話 父の想い

今回は終章です。

父子の絆が死に際に垣間見える様を書ければ、と思いますし、後々でザプリェットのことにも影響が出るような感じにしたいと思います。

 アムールが過去を語り始める。


何故隣国のアルベーニャから支援を受けていたのかも含めて。


「私は………10年前にある貴族を捕らえ、取調べを行い、左大臣からの賄賂が発覚してな、それで左大臣を問い詰めても知らぬ顔で………司法も不起訴と出たんだ。それで左大臣を更迭するよう、陛下にも進言をしたが………結果は私が逆に、『国に混乱を齎した』として拘束された。右大臣殿の計らいで釈放はされたが………元に戻ることはもう出来なかった。退役をし、リムペには一度戻ったがな…………だが村も村だ、私のような異端を受け入れはしなかった。」


「………それであの腕輪を………?」


「ザプリェットには………娘には、()()()()()()を歩んでほしくなかった。だから幸せを願って、魔力抑制の腕輪を渡して付けさせたのだがな………立派になったものだよ、そんなものがなくても………」


我が子の成長を見れたことに、安堵の顔を浮かべるアムール。


ザプリェットは複雑な顔になる。


父なりの愛情が、あの腕輪にはあったのだろうな、という具合に。


「ザプリェット………この国はもう、正論で罷り通らないくらいに腐っている………その筆頭が左大臣さ。今でもあの男はその地位で好き勝手やっているし………陛下の寵愛も受けている。アルベーニャに組み入ったのも、左大臣さえ倒せればよかった私と、サダムパテックそのものを取り込みたかったあちら側の利害が一致していたからさ………何をするにも支援者(パトロン)はいる、だからこそ左大臣側を少しでも減らすことができるよう、テロを何回も引き起こしていた。同士を何人も、数年かけて掻き集めながらな………」


アムールは、もう過ぎたことと言わんばかりの、遠く何かを見るような口調で語った。


(そうか、会長も言ってたけど………父さんの言ってることも分かる、表面はいいかもしれないけど、中身が腐ってるんだろうな………父さんのやり方には納得はできない、それでフローティアを失ったから………だけど()()()()()が左大臣だとしたら………)


ザプリェットは、複雑な感情を抱きながらも、ある決意を固めた。


「父さん………私、決めた。」


「………なんだ?」


「私がこの国を変える。左大臣を倒して、内側から。」


「………軍にでも入る気か? ………辞めておけ、私と同じことになるぞ?」


「それでもいい。少しでも、公平な世界にしたいから。だから………父さんのやり方じゃなくて、()()()を受け継ぐ。それに………」


「それに………どうかしたか?」


「先輩たちにも、今の体制を快く思ってない人たちがいる、って分かった。先生とのコネで入ってるような貴族家の子もいるって話だからね………だから学校から、左大臣側の人間を排除していって、少しでも風通しが良くなるようにする。それが、今やること。私が高校生の間にやらなきゃいけないことだから………」


「志はいいが………現実は簡単じゃないぞ? 理想通りにいかないことなんて山のようにある、それでもやる気か?」


アムールは悪戯っぽく笑いながら、ザプリェットに改めて問いかけた。


「構わない。父さんの遺志は、私が継ぐ。………やっぱり、血は通ってるよ。曲がったことが嫌いだ、って性格はね………私は誰にどう思われようと、どうでもいいけど………やることをやってからじゃないと、“世界最強の魔法師”になんてなれやしないから。」


「ハッ………随分と壮大な夢を抱えたな………やってみせろ。私の子ならな………その夢、見届けさせてもらうとしよう………」


ザプリェットは、「魂喰い(ソウルイート)」の魔法陣を展開した。


「本当は………カチュアとザプリェットと………共に暮らしたかったんだがな………まあ、それも私の運命(さだめ)、か…………」


この時、ザプリェットの頬に涙が伝った。


想いは一緒だったのだな、とザプリェットは本気で感じていた。


だからこそ、取り込む価値はあった。


「父さんのやり方は間違ってた、でも想いは正しかったと信じるよ………」


「………すまないな………娘に殺されるなら、本望だ………」


「…………『魂喰い(ソウルイート)』…………」


ザプリェットはアムールの心臓部に手を当て、アムールの魂を取り込んだ。


その瞬間、アムールはザプリェットを優しく、抱きかかえた。


父が幼子を抱きしめるように。


アムールは、一言_____ありがとう、と呟いて、息絶えた。


ザプリェットはひとしきり泣いた。


もっと違う方法があったのではないか、だったり本当は両親と共に、幸せな時間を過ごしたかったという後悔とやるせなさで。





 涙が枯れたあと、ザプリェットは立ち上がった。


「ごめん………父さん………」


こう呟いて後ろに振り返り、アムールが視界から小さくなるまで、出口まで歩いた。


「………左大臣を………倒す。そうじゃなかったら………父さんの魂を取り込んだ意味がないから………父さんの想い、絶対に無駄にしないから………!!」


静かに激る怒りを、ザプリェットは国を腐敗させている元凶である左大臣に向けて、歩み始めていくのであった。

次回は文化祭編です。

閑話休題な感じになりますので、青春ストーリーをお楽しみいただければ、と思います。

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