第33話 「私の中に友は居る」
今回はアムールと戦う直前まで、です。
約3週間が経過した。
ちょうど学校が休みで、大抵の生徒が街で買い物に行ったり魔法の練習に勤しむ中で、ザプリェットは秋物のコートを着て、汽車に乗っていた。
向かう先はフローティアの故郷である「アレフト」だ。
ワクスモの喧騒的な街とは打って変わって、辺りは針葉樹林が広がっている、自然豊かな長閑な街だった。
用事は、というと、ルカシェンコ家を訪問するためだった。
無論、学校経由でザプリェット直筆の手紙をフローティアの母宛に送っているのでアポイントメントも取っている。
とはいっても、長居する気は毛頭ないのだが。
街にドン、と聳え立っている大きな屋敷の前に立っている門番に挨拶をし、中に入れてもらうようザプリェットは頼んだ。
「なるほど、君はフローティア様の級友、ということだね?」
「はい。フローティアのお母様にも、手紙をお送りいたしましたので。お通し願えないでしょうか。」
「………クウェル様に、か…………いいだろう、案内してやろう。」
「お手数をお掛けします。」
ザプリェットは門番に連れられ、フローティアの母・クウェルの元に連れられたのであった。
クウェルの部屋に入ると、綺麗な黒髪をした40代くらいの女性がいた。
どこかフローティアと面影が重なり、ザプリェットは懐かしさを覚えた。
「………お初にお目にかかります。フローティアのクラスメイトのザプリェット・トカシェフです。」
「………あなたがザプリェットちゃんね………? 娘からあなたのことは聞いているわ………」
気丈に笑いかけるクウェルだが、やはり愛娘を失った影響がまだ及んでいるのか、どこか儚げで、ストレスからくるシワも多かった。
この顔を見たときにザプリェットの心が痛くなった。
申し訳ない、という気持ちでいっぱいになった。
と、ここでクウェルがザプリェットを席に座るよう促した。
「お手紙、ありがとうね………? 私のことを考えてくれてて、あなたの優しさを感じたわ………フローティアが帰ってきたときに言っていた通りの子でよかったわ。」
「……恐縮です。」
席に座り、対面した2人。
ザプリェットは気恥ずかしそうに、紅茶をひとつ飲んだ。
「………あの子、学校は大丈夫だった………? 本当にね、昔からオドオドしているような子だったから………上手くやっていけるのかな、って心配でしょうがなくって………」
「………まあ、人見知りでしたけど、私にはすごいグイグイ来るような………そんな子でしたよ。それに心優しくって、純粋で………田舎者の私にも色々、都会のことを教えてくれたりも………思い出すだけで胸がいっぱいになりますよ………」
「そう………」とだけいい、クウェルは安心したような顔になった。
「あなたに会えてよかった、って言っていたし………良かったわ、それだけで………気が楽になる。」
母として、思うところはあるのだろうとザプリェットは考えていたし、立場が悪いとはいってもあくまで家の中だけで、フローティアは大事にされていたのだろうな、とザプリェットは考えた。
「………クウェルさんに会うのは少し………怖かったです………でもあまり私のことをお気にされていないようでしたし………私も、少し安心しました。それに………」
ザプリェットは少し息を吐いた。
意を決するかのように。
「フローティアは………私の中に居ます。ただ、魂の状態で………ですけど………」
「それもちゃんと聞いているわ。ザプリェットちゃんのことをね、凄く強い魔法師だ、って言っててね? 絶対に世界最強になる、って信じていて疑っていなかった………本当に、あの子らしいわ。ザプリェットちゃんが言わなくても分かるわ、あの子の最期が………どうなったかも。」
「私は明日………戦いに行ってきます。フローティアの仇を討ちたいので………ね。ですけど友が私の中に居る、それだけで力をもっと得られる気がします。ですから………もう、負けないって決めました。そうじゃなかったら………フローティアも泣いちゃいますからね。」
困ったように笑いかけるザプリェット、クウェルはそれを聞いて、シルクのハンカチを出して涙を拭う。
「ありがとう………ありがとうね、ザプリェットちゃん………私も、信じるわ………ザプリェットちゃんが、最強の魔法師になることを………フローティアと同じように、ね?」
「ありがとうございます………これからも、精進してきます。」
その後、2人はまるで親子のように話が合ったことで、すっかりと家公認の仲となったのであった。
翌日。
事前に国からアムールの情報を貰っていたザプリェットは、ある場所へと向かっていた。
北極海が広がる、海岸にポツンとある洞窟に。
警備の者もいたが、それをザプリェットは瞬殺し、アジトに侵入した。
暫く進むと、幹部であるアノスが立ちはだかった。
「オイ、アムールさんのところへ行きてえのか?」
「そーだけど? ………ってか、邪魔なんだけど、退いてくれない?」
「誰が退くかよ、ああ………?? どうしても行きてえなら俺が仕留めてやるよ………!!」
アノスの氷魔法を躱し、ザプリェットは軽い身のこなしで背後に回った。
「『魂の贈与』………『槍の造形物』!」
ザプリェットが指を鳴らすと、アノスの足元から尖った岩が生え、アノスの股間から体内を突き破り、アノスは一瞬で絶命した。
(………だいぶ新技も板についてきたな………うん、これなら勝てる………!!)
微かに湧いた自信を胸に、アムールの元にザプリェットは辿り着いた。
アムールは相変わらず、余裕の笑みを浮かべている。
「お前なら来ると思ったぞ、ザプリェット………だが何度やっても同じだ、お前に私を倒せないさ。」
「前とは違うよ、父さん………絶対に勝つ………!!」
ザプリェットとアムールの死闘第二幕が開けようとしていたのであった。
次回、テ○フォーマーズのような戦いを見せようと思います。




