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第3話 攻防一体のパートナー結成

今回はザプリェットの過去をフローティアが知り、手を貸すことになります。

 ザプリェットは、フローティアに過去を明かす。


淡々と、ザプリェットは話した。


「……9年前、かな……田舎にいた時にさ、猫と遊んでた時に……猫を死なせちゃってね。」


「え……それって、魔力と魔法が原因……??」


「それは後から知った。村長さんに言われてから分かった事。それでそこから……動物が苦手になった。そりゃあ、そうだよね……可愛がっていた猫をこの手で殺しちゃったんだからさ、全く意図もしてないで……父さんはこの2個の腕輪を遺したっきりさ、アレから家に帰ってない……だから名前もおろか、()()()()()()()んだ。」


「……そっか……それで魔力を抑えるために……」


「あまり使いたくないんだよね、私の魔法は。最悪人を殺してしまう事もある。その所為で友達も碌に村では出来なかったから……腕輪をしてなかったら碌に動物も触れないんだ、私。狩の時は『属性無効化の腕輪』は外すけどね?」


「でもいいなぁ……そんな便利な魔法を持てて。だってさ、悪い人が出てきたらさ、一瞬で倒せるんでしょ?」


「うん、まあ。その気になれば、ね。私の気が向けば……だけど。」


ザプリェットは淡々としているのは変わらないが、フローティアの目は何処か輝いて見えた。


こんな目をして話してくれる人物は他にいない。


ペルセウスもザプリェットを認めてはいたが、未熟という烙印を押されてしまっているのが現実だ。


それだけに、ザプリェットは何処か嬉しい気持ちになっていた。


「それさ! 私の魔法で守ってさ、ザプちゃんが攻撃に回ったら……すっごい良いコンビにならない!? 攻防一体みたいな感じでさ!?」


「……確かにそうだね。フローティアの魔法があったら、フローティアを死なせずに済むかもしれないね。」


第五側室の子とはいえ、貴族家の娘であり、社交辞令は一通りは持っているフローティアだが、ザプリェットはその感覚はあまり慣れないものであった。


人と碌に話したことがないため、ストレートに物申してしまうタチなので傷付けてしまうこともしばしばザプリェットにはあった。


なので、進んで協力を申し出てくれることがザプリェットにとっては新鮮であった。


「明日からさ! 特訓しない!? どこかの部屋借りてさ??」


「了解……あー、でもペルセウス先生の研究室が1番いいかも。一回入ったけどさ、案外広かったし。」


「じゃ、明日さ、先生に頼もう!? ね!?」


「分かったって。とりあえずワイシャツとタイツ干そうか。今洗濯終わったし。」


ザプリェットは、洗濯機から洗濯物を取り出して、窓際にハンガーに掛けて干したのであった。





 翌日。


パートナーを結成した2人は、放課後にペルセウスの元に訪れた。


「おう、来たかガキども……そんで? 経緯を説明しろ。」


「フローティアが私の魔法を知って……自分が防御系の魔法だからパートナーを組もう、っていう話です。」


「なるほどな……確かに俺も魔法を見させてもらったが……相性自体はいいな。そんでお前らに提案があるんだが……聞けよ?」


ペルセウスの言葉に、フローティアとザプリェットは座って聞くことにした。


「9月に『魔闘演舞(ヴァルプルギス)』があるんだ。お前ら1年は新人(ルーキー)部門で出場するしかない。それぞれ個人戦と団体戦があるが……お前らが向かうべきはその団体戦だ。だがな、課題はある。ザプリェットの魔力の過剰消費だ。腕輪をしていることで抑えているんだろうが……俺の今の魔力値を見てみろ。『25万』だ。それでいて魔力が溢れていねえだろ? お前と違ってな。」


「確かに……でもそれって年齢とも関係してきますよね……??」


フローティアはペルセウスに質問を投げかけた。


「フローティアの言う通り、それは一つある。だがな、ザプリェットは抑えるあまり、圧倒的に不足しているものがある。なにか分かるか……? ザプリェット、お前はその自覚がある筈だ。」


「……経験……ですか……? 魔法を使う経験が……」


「そう、その通りだ。あの検査液には魔法の使用履歴も数値として出る。確かに魔力値だけで見ればお前は全学年生徒で最も才能と素質があるし、それでいてまだ上限じゃねえんだ。じゃあ何が足りねえのか、といったらさっきも言った魔法を使う経験の浅さだ。その証拠に……フローティアやラチェーカは抑えられてるだろ? アレは練習して鍛え上げたからだ。まあ、簡単に例えるとよ、器に入れるべきの液体が多すぎてザプリェットの小さすぎる魔法師としての器に入り切らねえ状態、つまりはキャパシティを遥かに超える魔力を有しているんだ。それを埋めるのはとにかく使うしかない。使えば使うことで練度が上がるからな。」


課題という現実を突きつけられ、ザプリェットは顔を顰めた。


だが、ペルセウスはこう続けた。


「まあ心配するな。上手くいかねえことなんて、最初は当たり前だ。何せウチのクラスはワケありしかいねえからな。だから俺は教師として、『逆境を乗り越える力』を身に付けて欲しいからああやってH組しか持たねえわけだ。ザプリェットも例外じゃねえ。練度が上がれば魔法の調整(コントロール)も効くようになる。ザプリェットは魔法陣の生成も速い。成長すれば……魔法を連射することだって可能だ。一撃で複数の相手の命を刈り取れるほどにな。」


「連射……それでいて魔法の調整(コントロール)が効くように……なる……??」


ザプリェットは内側から込み上げてくる物を覚えた。


高揚と表現するべきか、ザプリェットの口元が綻んでいた。


「アハハ……ザプちゃん、楽しそうだね。」


「それじゃ、早速やるぞ? フローティアは普段通り魔法を使え。ザプリェットに教えなきゃいけねえことがあるからな。ガキ2人くらい、迎え撃ってやるさ。」


ペルセウスは教壇の上に立ち、左手を構えた。


フローティアは両手で構え、魔法陣を生成した。


「『舜天夢双(ピクシードアーツ)』!! 『精霊の盾(エルフガード)』!!」


フローティアは三角錐の防御壁を作り、防御体制を取った。


ザプリェットは左の腕輪だけを外し、準備を整えた。


「ザプリェット、まずは左だけでやれ。まずは属性なしで感覚を掴め。いいな?」


「ハイ!!」


ペルセウスは早速やるぞ、と言い、光魔法を放つ。


フローティアはこれをガードし、ザプリェットを攻撃のみに専念させる。


「無属性弾で!!」


ザプリェットは高速で魔法陣を展開し、ペルセウスに向かって放出した。


だが、ペルセウスは避ける気はない。


むしろ魔法陣を展開して待ち構えていたようにも見えた。


「『光の盾(ライトシールド)』。」


時計回りに両腕を旋回させ、一瞬で輝かしい盾を作ってザプリェットの攻撃を止めた。


流石にここは経験の差である。


だが、止めてもペルセウスが後退りするくらいにはザプリェットの魔力は強烈であった。


「ザプリェット、どんどん撃ってこい!! まだ一つだけだぞ!!」


「了解です!!」


ザプリェットとペルセウスの魔法の撃ち合いは続いていったが、ザプリェットはなかなかペルセウスからの合格点がもらえないことに苦戦を強いられていた。


溢れんばかりの魔力を抑えきれないばかりか、連射も今のところは成功できていない。


連射、とは云っても短いスパンでの魔法陣展開を可能にはしているのだが、二連続発射という意味ではまだそこができない。


だがザプリェットは、手応え自体は感じていた。


これなら行ける、やろうと思えばできる、と。


(大丈夫……できる筈だ!! イメージしろ! 2個同時に作って……先生に解き放つ!!)


ザプリェットは無属性弾を錬成し、一個をチャージする。


そしてもう一個を右手で生成した。


しかし形は少し歪な大きさだった。


だがザプリェットは、これを物ともしなかった。


「いけ……!! 『二連魔法弾(ツインマジックアーツ)』!!」


ボッ! ボッ!! と放たれた魔法は、ペルセウスに向かって襲いかかった。


ペルセウスはこれを撃ち落としにかかった。


「『光の弾(ライトバレット)』!!」


ドドン!! という音が響き、互いの魔法が相殺された。


「ハァ……ハァ………で、できた………!!」


ザプリェットは今までにない感触を掴んだようで、手を震わせていた。


ペルセウスは攻撃態勢を解き、ザプリェットに近づいた。


「……それでいい、ザプリェット。今の感覚を忘れんじゃねえぞ。とにかくもっとタイムラグさえ無くせば威力にバラツキはさっきみたいになくなる。まずは1週間、二個同時錬成を極めるぞ。ザプリェット、お前ならできる筈だ。お前は世界最強の魔法師になれる器があるんだからよ?」


「今の……感じ……」


「とにかく練習しておけ。そうじゃなければ習得はできねえぞ? 普通でも1ヶ月は掛かっちまうモンだからな。事実俺はそうだった。だがザプリェットはまだ底じゃねえ、成長スピードも著しいってことも分かったんだ、それくらいで出来るだろ?」


「……!! ハイ!! ありがとうございました!!」


「……今日はもう遅えから早く寮に戻れ。メシの時間が過ぎるぞ?」


時刻は午後5時半。


食事まであと1時間だ。


「ヤバっ……!! 今日私の大好物だった!! 鹿肉!!!」


ザプリェットはドピュン!! と、脱兎の如く研究室を抜けていったのであった。


「アハハ……ザプちゃんは足速いなぁ……先生、今日はありがとうございました!」


フローティアも一礼し、研究室を後にしてザプリェットの後を追ったのであった。


2人が去った後、ペルセウスは窓を開けてタバコを吸い始めた。


外に副流煙を吐き、夕焼け空を見上げる。


(あのガキども……今まで俺が持ったどの生徒よりも期待できるぜ……まだ時間はあるんだ、徹底的に鍛え上げなきゃな……さて……俺は俺の仕事を片付けるとするか……ザプリェット、お前はサダムパテックだけじゃねえ、()()()()()()()()()()んだ。こんなところで満足するんじゃねえぞ……?)


ペルセウスはザプリェットとフローティアの成長に、期待に胸を躍らせながら仕事に戻っていったのであった。





 そしてその後1週間、ザプリェットは「二個同時錬成」を完全に習得し、驚異的な成長スピードを見せたのであった。


そしてその日の部屋での入浴にて。


「ねえ、ザプちゃん。明日さー、『ワクスモ』にいかない?」


「ワクスモ??」


ワクスモ、というのは、サダムパテック王国の首都であり、サダムパテックで1番経済が栄えている場所といっても過言ではない。


無論、市場だったりブティックや武器屋が並んでいるので、休日にはとても栄えているのだ。


「ザプちゃん、ホントに田舎娘なんだねー……知らないだなんて……」


「……なんかあるの? 確かに明日休みだけども。」


「明日セールなんだよね、服の!! だから買い物に行きたくってさ?」


「あー……そういうことね。それなら行くよ? ちょうど私服だけじゃ普段着は足りないかなー、って思ってたところだったし、私。」


「それじゃ、決まり!! 朝早いからさ、朝御飯食べ終わったら玄関に集合ね!!」


「わーかってるって。」


2人は明日にワクスモに行く約束を交わし、浴槽から上がって就寝したのであった。

次回はワクスモに買い物に行く回です。

そこで不穏な空気が漂いますので、そこも含めて楽しんでいってください。


登場人物紹介、初回はザプリェットです。



ザプリェット・トカシェフ 

15歳

王立サダムパテック魔法学院1年H組 

リムペ村出身

6月7日生まれ A型

右利き

使用魔法「魂の(ソウル)操作(コンバーション)

155センチ 3サイズB84(Cカップ)W57H83

好きな食べ物:鹿肉、母の作るボルシチ

趣味 木を伝って遊ぶこと



本作の主人公兼ヒロイン。

端正な顔立ちに加え、銀髪と青い目が特徴的。

受験者の中で最高の数値を叩き出しながらも受験要項の属性を使えないためにH組に。

魔法学院ではレアな平民出身で、自身は母子家庭で、二人暮らし。

禁忌魔法とされている「魂の操作」の使い手で、その気になれば人の命を容易に奪え、また放出したり死体に魂を埋め込むことでゾンビのように使役させることも可能。

だが、猫を無意識で魔法で殺してしまったことをキッカケに父が失踪し、自身も動物が苦手になり、魔法を使うことを躊躇うようになった。

その所為で今は、両腕にそれぞれ「魔力抑制」と「属性封印」の腕輪を装着して生活をしている。

魔力が非常に強いことと裏腹に魔法使用の経験が浅いため、解除をすると魔力が溢れ出すのが致命的弱点だが、それ以外は魔法師として優秀で、ペルセウスも底が見えない、世界最強の魔法師になれる器と評するほどである。


性格は現実主義者の毒舌家だが、曲がったことが嫌いな真っ直ぐで、クールなようで根は熱い性格で努力は惜しまない。

また、華奢ながらフローティアがドン引きする程の超大食い。

運動神経が非常に高く、100メートル走は12秒台後半を叩き出すほどで、リムペ村にいた頃は木から木を伝う遊びを暇さえあればやっていたほどである。





次回はフローティアの紹介です。

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