第28話 もう一度、また1から
今回はラチェーカメインになりますね。
この章からメインサブヒロイン(クソパワーワード)はラチェーカです。
ラチェーカは部屋の明かりを点ける。
しかし、ザプリェットは依然暗い表情のままだった。
アムールに敗北したことで打ち砕かれた自信、そして友を失い、独りぼっちとなった寂しい部屋_____要因は多数あり、ショックが大きすぎていた。
ラチェーカにとっては痛々しいザプリェットを見ること自体が初だったため、流石に困惑の色は隠せていなかった。
だが、抑えて、抑えて、という理性が働き、ラチェーカは落ち着き払って話し始めた。
「フロイドから全部聞いたわ。今回のテロリストの首領と一人で戦って………フロイドが着いた時には意識を失って倒れていた、ってね。」
ザプリェットは無言で頷く。
「それで………そこまで向かう時にフロイドも殺されるかと思った、って言ってたほどよ。そこも全部聞いた………フローティアのことは気の毒………だったわね………」
ザプリェットにこれでも気を遣っているのが見えていたのか、ラチェーカにザプリェットは一言も反論しなかった。
「………しかもアムール・トカシェフとやったんでしょ……? アレ、星15が付いてる指名手配犯なの。貴族一家の殺害に、テロ等準備罪及び実行の罪………それに、覚醒剤や大麻の取引を裏で操っていたりもしている。更に厄介なのが………彼は隣国の『アルベーニャ王国』にサダムパテックの情報を横流しにしている、そういう噂があるの。その相手と無謀にも戦ったんでしょ? それで、やってみてどうだったのよ?」
ザプリェットは顔を曇らせ、重い口を開いた。
「……………何も…………出来なかった…………」
「な、何も出来なかったの………? ザプリェットが………? ………ならどれだけ強かったのよ………」
ザプリェットが何も出来なかった、その言葉があまりにも衝撃的だったのか、ラチェーカは言葉を失いかける。
そして自分のことのように悔しがった。
ザプリェットはこの後、重く窶れた口調で何が起こったのか、しみじみと話したのであった。
全てを知ったラチェーカは、大きくため息を吐いた。
「なるほど………そういうことだったのね。アンタの言ってることも分かるわ。私でもそうなってると思うから。」
「違う………そうじゃ、ない………」
「そ、そうじゃないって何よ………」
「確かにフローティアを目の前で殺されて、っていうのはラチェーカの言う通りだよ………だけど………」
ザプリェットは屈辱の記憶を思い出したのか、顔が強張って震えていた。
ザプリェットは、次に普段は出さないような大声でこう、発した。
「それ以上に………アムールに全力を出して何も出来なかった………!! やれることは全部やった、それでも勝てなかった!! もっと皆んなみたいに………魔法のバリエーションがあったら勝てたかもしれないのに………!! 私は魔法師として限界だよ………!!! これ以上は……」
「ふざけないで頂戴!!!!!!!!」
ザプリェットの言葉にカチンときたのか、ラチェーカはザプリェットの胸ぐらを掴み、壁にガン!! と押し付けた。
「何が『限界』よ!? 私に勝っておいて何よ、その言い草!! そんなアンタに負けた私の身にもなりなさいよ!!!!! 一回負けたくらいでそこで止まるつもり!?!? 魔法のバリエーション云々じゃないわ、アンタの考え方が浅はかすぎるのよ!!!!」
ザプリェットに負けたラチェーカだからこそ、説得力がある言葉だった。
「諦めるな」、「へこたれるな」、そう言いたげに。
「今のアンタはこのままでいい、そう言いたげじゃない!!! フローティアの言ったこと、忘れたの!?!? 『世界一の魔法師になれる』って言われたんじゃないの!?!? 人に想いを託されて無下にしようとするなんて………!! そんなの頭の悪い奴がすることよ!!!!!」
ザプリェットは俯いた。
ラチェーカの言っていることが、耳が痛いほどに突き刺さったからだ。
ラチェーカは頭に血が上りながらも、言葉を絞りに絞り出した。
「発想一つで魔法というのは無限に進化するのよ!!! 一つしか使えないから何!? だったらやれることを増やせばいいじゃない!!! 人には無限大の可能性がある!!! でもそれは………!! 諦めない心がそうさせるのよ!!! 世界の偉人を見てみなさい!? 皆諦めてなかったから名を残せたのよ!!! 確かに絶対値は変えられないわ、だけど魔法に限界なんてない!!!!」
ラチェーカは息を大きく切らし、ただそれでも表情は真剣そのものだった。
ザプリェットは唇を噛み締め、絞り出すようにこう呟いた。
「ごめん…………私が間違ってた…………」
「………分かればいいのよ………私も言いすぎたわ、ごめんね?」
ラチェーカは手を離し、ザプリェットの肩を叩いた。
「あなたのことを認めていなかったらこんなこと言ってないわ、それだけは分かって。クラスのみんなだけじゃないわ、私もそうだし、他のクラスの子達もそう………先生方だってザプリェットのこと、心配してるわよ? だから絶対立ち止まらないで、いい??」
「………そうだね………ありがと、気を遣ってくれて………」
「ホント心配したわ………立ち直ってくれそうでよかったわ。ああ、そうそう。あなたの分、残ってるわよ、食事。」
「………本当に………??」
「………まあ、食べ放題の残り物、だけどね? あなたなら食べ切れるでしょ?」
ここ数日、碌に食べていなかったザプリェットは、表情を明るくさせた。
「食べる!!!」
「アハハ………ホント、どうなることかと思ったわ。おば様に感謝なさい? みんなザプリェットを心配してたんだからね?」
ザプリェットは食堂に直行し、ラチェーカはそれを黙って見守って、爆速で減っていく食事量を眺めていたのであった。
そして食後。
入浴中、ザプリェットは考え事をしていた。
(もしラチェーカじゃなくってフローティアだったら………どう言ってたんだろ………同じこと、言うのかな………?? ………そうだよね、フローティアが1番、私が「世界最強の魔法師」になれるって………最期まで信じてたからな………はー、ホント私ったらバカだな………でももう、諦めたりなんかしない!! フローティアのためにも、絶対に!!!)
ザプリェットは浴槽からザパッ!!! と勢いよく上がり、タオルで身体を拭いて巻き、火照った体でフローティアのベッドに置いたカチューシャを手に取った。
(………よし、決めた!!! もう一度、改めて誓う! 「世界最強の魔法師」になるって!!! 絶対に!!!)
心機一転も兼ね、鏡を見ながらフローティアが遺したカチューシャをザプリェットは身につけた。
(失って分かった………私は1人じゃなかった、だから………フローティアの分まで私は戦う、強くなる!!!!)
ザプリェットはもう一度、「最強」を目指すために努力を惜しまないことを誓ったのであった。
そして翌日。
久しぶりに登校したザプリェットは、級友に歓迎された。
「ザプリェット!! 大丈夫だった!?」
「ああ、うん、もう大丈夫だから。もう一度、また1から頑張るよ。」
敗北を経験したことで少し棘が取れたザプリェットは、以前より柔和な表情を浮かべていたのであった。
そして放課後、ザプリェットはペルセウスに呼び出された。
依頼していたアムールについてを調べ終えたのだろう。
「………少しは落ち着いたか?」
「ええ、お陰様で。」
「………ならよかった。アムールについて調べ終えたが………まず先に伝えておくぜ? 単刀直入に言うから聞き逃すなよ?」
ザプリェットはペルセウスの言葉に固唾を飲む。
「………アムール・トカシェフは………お前の実の父親だ。」
「!?!?!?!?」
ザプリェットは飲んでいた茶を吹き出しそうになった。
ザプリェットにとっては衝撃的なことだったからだ。
アムールが、7歳の時に失踪した父親だという事実に。
………まあ、最後はお察しの通りだったかと思います。(元々こういう予定でした)
次回はペルセウスからのアドバイス回です。




