第26話 完敗
ターニングポイントとなる回です。
苦戦を強いられるザプリェットは、賭けに出ることにした。
「魂喰い」を、最大魔力で叩き込むことを。
だがそれでも得体の知れないアムールの魔法・『生命の移動』を攻略しない限り勝ちはない、ザプリェットはそれを承知の上で魔法を展開した。
「『魂の贈与』を自分の身体に付与し………身体機能の強化をして………」
ザプリェットは身体の重心を低く落とした。
「一気に駆け抜ける!!」
ザプリェットは一気にアムールに向かって猪突猛進に走り出した。
「ホウ………私に対して特攻か………だが無謀だと知るがいい。」
アムールは魔法陣を展開し、壁や床から木材を手足のように動かした。
だがザプリェットは、避けることもせず、一直線にアムールに突進をしていく。
多少の被弾は気にせず、腕で振り払いながら直進をしていった。
最後の板を蹴破り、アムールの下まで到達する。
低い姿勢から、見上げるようにアムールを睨む。
「最大魔力………!!! 『魂喰い』!!!!」
ザプリェットはアムールの心臓部に掌底を放った。
だが。
魂をザプリェットは取れなかった。
ザプリェット本人が尤も、一番動揺していたのだが。
「………!? なんで………!?!? 魔法が………効いていない………!?」
なにやら魔法の壁が、アムールを覆っているように感じていた。
しかも、強大な壁が。
「残念だったな、ザプリェット………この国屈指の魔法師である私を甘く見すぎたようだな………」
「………!? なんで私の名前を知って…………」
「………さあね、お前が知る必要はない。『生命の放出』。」
青白く光った手を、アムールはザプリェットの腹部に当てた。
すると。
バリャリャリャリャ!!! という衝撃がザプリェットを襲った。
激痛がザプリェットに襲い掛かる。
ザプリェットが絶叫を挙げるほどの痛みだ、耐え切れるわけがない。
ザプリェットは意識を失い、うつ伏せにドサッ、と倒れ伏せた。
アムールは倒れたザプリェットを見下ろし、こう告げた。
「悪いな………私の魔法力は………『530000』だ………」
「さて………一応人質としておくか………我らの立て直しも兼ねて、な。」
アムールがザプリェットを縛り上げようとしたその時だった。
「『陽炎』!!!」
視界を炎が覆った。
「むっ………!! 新手、か………」
ダダダダ、と階段を降りる音が聞こえる。
炎が治まった時、ザプリェットはアムールの視界から消えていた。
「ほう………魔法学院の制服、か………」
「アムール・トカシェフ………!! ザプリェットだけは渡さない!!」
フロイドだった。
決死の覚悟で魔法陣を更に展開した。
「『暴風』!!!」
フロイドはザプリェットを抱えて脱出を即座に図り、足止めをした。
「………流石A組の魔法師だ、いい魔法を使う………」
アムールはすぐさま後を追おうとしたが、フロイドはもう、視界から消えていた。
「………フッ、いい友達を持ったな、ザプリェット………」
アムールは深追いをしようともせず、フッ、と笑ってフロイドとザプリェットを見逃したのであった。
アジトから脱出したフロイド、ザプリェットは依然として意識を無くしていた。
(まさかとは思ったけど、ザプリェットでも歯が立たないなんて………!! 様子を見に来たけど、逃げに回って正解だった………!! あとは馬まで辿り着けれれば…………!!)
傷だらけになったザプリェットを抱え、追っ手を警戒しながら走る。
そして、手配した芦毛の馬の手綱を握り、背に跨った。
フロイドは、ハッ!! と声を出して馬を走らせた。
10分後、スタジアム前まで到着したフロイド。
たまたまそれを見かけたペルセウスに声を掛けられる。
「オイ、フロイド!! 何があった!!」
「ペルセウス先生、話は後です!! まずザプリェットの治療をお願いします!!!」
「おうよ、分かった!!」
フロイドは馬から降り、ザプリェットをペルセウスに託した。
ザプリェットはベッドの上で意識を失ったまま、2日を過ごした。
ザプリェット-フローティアのペアは、方や死亡、方や意識不明で翌日の新人団体戦を棄権せざるを得なくなった。
その結果、団体戦優勝はフロイドのペアに決まった。
そして、ザプリェットはベッドで目が覚めた。
何故ここにいるのか、ワケも分からずに。
第3章は次回からが本番です。
薄々気づいている方もいるでしょうが、ザプリェットとアムールは、まあそういう関係です。
ザプリェットの成長の部分も描きたいな、と思っておりますので、ご期待ください。




