第19話 襲来せし新たなる脅威
決着と同時に急転直下の回です。
ザプリェットが「魂の放出」を貯めている。
ザプリェットの構える右手に球体が作り出される。
ラチェーカは固唾を飲む。
会場はどよめきに、リングと対比になるように包まれる。
だがラチェーカも何もしないような馬鹿正直な性格ではない。
耐え切れる策は持っていた。
足幅を肩幅まで開き、念魔法を両腕に纏わせた。
受け止める気だろうか。
ラチェーカは来るなら来い、といった構えだった。
これを乗り切ればチャンスが来るはずだ、という、ラチェーカなりの算段であった。
「来なさい、ザプリェット……!! 受け止めてみせる!!」
ザプリェットはこの格好を見て笑みを浮かべた。
「上等だよ、ラチェーカ……!! そんなに受け止められる自信があるなら……受けてみなよ………300人分をね!!! 『魂の放出・隕石』!!!!」
ザプリェットが上空に魔法を放つ。
5秒後、魔法がラチェーカに向かって落下してきた。
ザプリェットの放った特大魔法を、ラチェーカはこれでもか、と言わんばかりの念魔法を解き放つ。
「念魔法……!! 『天衣無縫』!!!」
ラチェーカはグレーの念波を放ち、止めようとした。
(やるね……これでギリギリ止めれる、か……純粋な魔法力だけじゃないね……根性だけで止めてる……けれど……まだ200人分、威力は上げれる……「魂の贈与」50人分で……十分かな?)
ザプリェットは追加で魂を球体に撃ち、捩じ伏せようと試みる。
だがラチェーカも負けていない。
念魔法の魔力を高め、ギリギリのところで踏ん張る。
「負ける………かァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
ラチェーカが咆哮を挙げる。
だがしかし、現実はラチェーカにとっては無情だった。
腕からザプリェットの魔法が飲み込んでいき、全身を包み込んだ後、大爆発を会場中に巻き起こしたのであった。
煙が収まった後、ラチェーカの様子は、というと。
「………まだ……戦う気……?」
ザプリェットがポーカーフェイスを濁したくらいで、ラチェーカはかろうじて立っている。
ラチェーカは血を吐いた。
しかし、意識も殆どないのにも関わらず、闘志だけは萎えていなかった。
だが、誰の目から見ても勝敗は明白。
それでもラチェーカだけは諦めなかった。
魔法を繰り出そうと、手を構えようとした。
「まだ………!! 負けて……な………い………!!」
この姿勢に、ザプリェットは呆れたかのように、ゆっくり歩み寄った。
「……もう……無理でしょ、その状態で魔法は……」
ザプリェットには、これ以上攻撃をする意志はなかった。
もう、決着が着いたのが分かっているかのように。
「なによ……耐えた、わよ、ちゃんと………私は……まだ……」
ラチェーカはガクン、と膝を突き、そのまま前のめりでリングに倒れ込んだ。
ザプリェットはレフェリーにアイコンタクトを取った。
レフェリーも頷き、その場で手を大きく横に振って試合を止めた。
会場が熱狂に包まれる中、ザプリェットはラチェーカの安否を確認した。
「ラチェーカ……しっかりしなよ……?」
「ザプ………リェット………?? し、試合は………??」
「……終わったよ……見れば分かる。」
「……負けたのね……私………そっか………負けたのね、ザプリェットに………」
ラチェーカは敗北を受け入れ、立とうとしたが、意識が戻ったと同時にザプリェットの攻撃をまともに受けたダメージがここに来て全身を駆け巡り、またガクンと膝を突いた。
ザプリェットは見かねて肩を担いだ。
「ホラ、お客さんに挨拶しないとさ……」
「そう、ね………完敗よ、ザプリェット……そうされたら……認めざるを得ない、わね……」
ザプリェットは控えめに手を観客に振って、応えた。
主催者から賞状を渡され、受け取ってまた歓声が起こった瞬間だった。
ドガァアアァァァァ……………ンッッッ…………………!!!!
レンガが抉れるような爆発が遠くで起こった。
「!? 今のは………!?」
ザプリェットが動揺した顔を見せた。
それくらい、誰にも予想不可能な出来事だったのである。
そして次の瞬間、観客からも更なる悲鳴が挙がる。
なんと、観客に紛れていた暴漢が観戦していた貴族や学院生目掛けて襲い掛かったのであった。
完全にテロリズムであり、しかも綿密に計画されたものであった。
観客がパニックに陥る中、冷静だった者がいた。
「下がってください!! ここは僕が引き受けます!!」
フロイドだった。
顔は必死さが伝わるが、まずは1人でも犠牲者を無くすことが先決であり、そのために自分が殿を勤めてテロリストを止めようというのであった。
「先生方は皆さんを避難させてください!! お願いします!!」
フロイドの決死の叫びに、教師陣は無言で頷いて、観客や貴族を誘導し始めた。
上級生の中にも応戦するものもいたが、上級生でも苦戦するほどの厄介な相手だった。
だがフロイドも負けていない。
「何が目的かは知らないけど……!! 手を出すなら容赦はしないよ!! 炎魔法・風魔法同時展開!!」
フロイドは同時に、2属性の魔法陣を展開した。
「燃え上がれ……!! 『業火熱風』!!!」
フロイドは怒りのまま解き放った魔法で、テロリストを次々と吹き飛ばしていったのであった。
一方、ザプリェットは。
「これマズイね……でもまずはラチェーカの安全が優先……医務室を探さないと……!!」
ザプリェットはラチェーカを抱える。
リングを抜け、医務室を目指して走り出した。
幸いにもテロリストはここまで迫ってはいないようで、ザプリェットも余力をもって探すことができた。
しかし、どうやら地下にあるらしく、まずはその階段まで探すことを余儀なくされた。
「ザプリェット……置いていきなさい、ただの足手纏いよ、私は……」
抱えられたラチェーカが、ザプリェットの耳元でボソッと呟いた。
だがラチェーカの言葉に、ザプリェットば耳を貸す気はなかった。
「……助けたいと思うのは私の勝手。夏休み明けのアレで……アンタが相当努力してきたのはわかった。だから私なりのリスペクトだよ、ラチェーカに対しての。」
「ザプリェット………そんなに私のことを……」
「……っと、ここか、医務室。開いてるかな……」
ザプリェットは医務室のドアをガチャ、と開けて、ベッドにラチェーカを寝かせた。
「えー……っと……何処だ、応急処置の……」
ザプリェットはなんだかんだで包帯を取り出し、ラチェーカの身体を傷口を中心に巻いていく。
ザプリェットが器用というのもあるが、手際が良くて早い。
あっという間に巻き終わり、ザプリェットは部屋を出ようとした。
「……安静にしてなよ? ペルセウス先生には伝えとくから。」
ザプリェットはそう言い残し、医務室を出て行った。
(今どうなっているんだろ……!! みんな、無事でいて……!!)
だがこの後、ザプリェットにとって最悪な出来事が待ち受けている、ということなど全く知る由はなかった。
次回はペルセウス先生の大活躍回です。
ペルセウスの固有魔法のヤバさを見せたいと思います。




