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第15話 「負ける気がしない」

ザプリェットの調整を少し公開。


フェイスオフまで書きます、ザプリェットとラチェーカの。

 試合を控えるザプリェットがウォームアップを始めていた。


とはいっても時間があるため、会場近くの山まで来てザプリェットは軽くストレッチをしている。


「……山??? ザプちゃん、ここで何するの?」


同伴していたフローティアが理由を聞く。


ザプリェットはこう答えた。


「まー、アップだよ、アップ。調整は怠ったら負けだからね、幾らラチェーカより弱くってもさ、グダったら意味ないじゃん?」


「ホントストイックだよね、ザプちゃんって……」


「そうでもしないと、ね。気負いすぎてるわけじゃないけど……とりあえず坂道ダッシュ20本。」


「20!? 大丈夫!? あと3試合くらいで時間だよ!?」


「あー、大丈夫大丈夫。ここの坂道はそんなに長いわけじゃないし、そもそもこの山は標高が高くないから。余裕で終わるよ、これくらいは。」


「そ……そっか……気をつけてね?」


「それはリスク管理はしてるから問題はないよ………じゃ、行くよ。」


ザプリェットはトン、トン、という跳ね方で走り出しをした後、ダダダダダッッッ!!! と勢いよく駆け上がっていった。


上まで行った後、ザプリェットはゆっくりと呼吸をしながら小刻みな駆け足で降りていく。


そして下山した後、もう一度同じ走り方でもう19本、飽きることなく走っていき、身体を温めていったのであった。





 その甲斐があったのかは分からないが、ザプリェットは2回戦、3回戦、準々決勝を難なく勝ち上がった。


そして準決勝、相手はA組のクトゥラ。


雷魔法の使い手で、フロイドも認めるほどの実力者だ。


ザプリェットもその情報はペルセウスから聞いていたため、それに向けた準備はしてきている。


(よりによって面倒な相手だな……けれど『魂の操作(ソウルコンバーション)』を使わなくてもいいようにするしかない……ここで躓くわけにはいかないんだ、余力を保って突破してやる!!)


ゴングが鳴り、準決勝第一試合が開幕した。


クトゥラは先制攻撃で開始と同時に、二個同時錬成で上空に魔法陣を作り出し、落雷を2つ放っていく。


ザプリェットは思ったより速かったのか、避けるのにも一苦労、といったところだった。


(……思っていたより強いな……こりゃやりごたえがありそうだな……)


ザプリェットは思いもよらないクトゥラの強さに面食らったものの、クトゥラが放っていく落雷をひょいひょいと躱しながら攻撃のチャンスをうかがっていく。


「どうした、どうした!! 平民風情が!! この俺を相手に何もできないか!?」


挑発(トラッシュトーク)でザプリェットの攻撃を出させようとするクトゥラだったが、生憎ザプリェットはそれには乗らない。


この挑発(トラッシュ)に無言を貫くザプリェット、しかし、クトゥラは尚もザプリェットを責め立てる。


言葉で、だが。


「テメエ、この前の麻薬組織をぶっ潰したと聞くが……アレも実はテメエがマグレで潰した、とかフロイドが代理でやった、とかじゃねえのか!? アア!?」


無論根も葉もないことをクトゥラは言うが、ザプリェットはクトゥラが想像するよりも何枚も上手だ。


ザプリェットは焦らず、攻撃の機会を窺う。


「そんな奴にラチェーカの相手をさせるわけにゃいかねえ……!! この俺がテメエを沈めて俺が決勝に駒を進めてやるよ!!!」


クトゥラは先ほどよりも強い威力での落雷を、魔法陣を高速展開をしながら放っていく。




しかし、その()()()()をザプリェットは見逃さなかった。




落雷を放つ瞬間を狙い、横倒れになりながら指で銃を構えるかのようなフォームになる。


小さめの魔法陣を1秒もかからずに生成し、無属性弾を指から音速のスピードで解き放った。


これをクトゥラが見えているわけもなく、左頬骨に直撃し、クトゥラは思わず頬を抑えた。


「………!? テメエ、なんで俺様より魔法が……!?」


予想だにしなかった攻撃と、超速の魔法に対応できず、少なからず精神的にダメージを与えているようであった。


「………まだそんなこと言ってる余裕があるんだね、アンタ……ま、だからって容赦はしないけどね、アンタは()()()()()()()()から。」


クトゥラが上空を見上げていると、そこには3つの魔法陣が。


それも、かなり大きく、形も一回戦よりは整いつつあった。


これで最大威力を発揮できる、そう確信したザプリェットは、左拳で正拳突きを空打ちした。


これに呼応するかの如く、魔法陣が煌めき出す。


「発射。」


ザプリェットはそう告げると3つの魔法陣から拳型の魔法が出現し、クトゥラに襲いかかった。


「このっ………!! 舐めるな!! これで逃げたら男の名折れ!!」


クトゥラは放電を放ち、対応しようとしたのだが………


ザプリェットは軽く魔力を込めるだけでこの威力を発揮することができる。


「へー、逃げないんだ。ちょっと見直したよ、アンタ。だけど……アンタ如きじゃ、私の魔法には対応はできない。」


ザプリェットの魔法は、クトゥラの放電をも易々と押し返し、クトゥラを3方向から地面へと叩き伏せたのであった。


レフェリーからダウンが申告されるが、意識を既に失って気絶しているクトゥラをレフェリーが見た途端に手をクロスして試合宣告を告げた。


これでザプリェットが決勝進出となり、後は第二試合の結果を待つのみになった。





 ラチェーカの相手は、ザプリェットと同じクラスの、これまた快進撃を続ける「H組の頭脳」・モルティアスだ。


モルティアスは、ザプリェットやフローティアと同じ「ワケあり魔法師」で、岩を弾丸に変化させたり、ありとあらゆる物質を兵器に変換する魔法、その名も「物質変性(アルケムフォーゼ)」を得意に、唯一使える魔法として、モルティアスは戦っているのであった。


しかし、試合が始まれば、弱点を見抜いているかのように、ラチェーカはモルティアスの攻撃を念魔法で受け止め、ノーダメージで済ませる。


モルティアスにバリエーションがあるか、と言われたらない上に、本来はチーム戦の方が向いていると本人も口にするくらいだ、個人戦では圧倒的にラチェーカが上だ。


ラチェーカの魔法を喰らいながらも、倒れる度に必死に立ち上がってくるモルティアスに、観客から拍手が贈られていた。


大番狂わせを起こす、とモルティアスは決めていたが………力の差は歴然、神経を修羅に変換させるほどに研ぎ澄ませてきたラチェーカは、その番狂わせに懸けるモルティアスには負けたりはしなかった。


光魔法でモルティアスを攻撃し、最後は氷のレーザーのような魔法でモルティアスの意識を断ち切ってTKO勝利を収めて決勝へと駒を進めたラチェーカなのであった




 決勝を控えた控室。


意識を戻したモルティアスがザプリェットの元にやってきた。


松葉杖を突きながらではあるものの、命に別状はなさそうだった。


「あのさ、ザプリェット……」


「……うん……」


「……頼む!! 勝ってくれ!! 俺でもA組2枚抜きが限界だった、でもラチェーカは強かった……!! 桁が違うみてえに……!! お前しかいねえんだ、ザプリェット……!! 後生の頼みだ、だから……!!」


必死に懇願するモルティアスだったが、ザプリェットもそれくらいは分かっている。


しかし闘志に火が、この言葉で着いたのもまた事実だった。


「……モルティ、アンタはよくやったよ。むしろラチェーカ相手にアンタがここまでやれるとは思ってなかった……だから後は……任せといて。負ける気がしないし……余計に()()()()()()()()()()()()からね。」


ザプリェットからは強者の風格が漂っていた。


控室をザプリェットが去った後、モルティアスは勝ってくれ、ただそれだけを祈っていたのであった。





 決勝の会場は大盛り上がりである。


ここで優勝をすることが、次代を担う魔法師になれる「登竜門」なのであるから。


ザプリェットとラチェーカが目を合わせる。


バチバチのフェイスオフに、会場も驚き、響めきと歓声が隠せない。


「………今日、ここで決着を着けましょう、ザプリェット………」


「……負けないよ、ラチェーカ……アンタには何もさせないで終わらせてあげるよ……」


静かに、ただ火花を散らして両者は分かれた。


決勝戦のゴングが今、鳴り響き、死闘が幕を開けたのであった。

次回から4話ほど、VSラチェーカを書きたいと思います。


よろしくお願いします。

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