第14話 「こんなもの」
この回から次回までは前座でお送りします。
さて、「魔闘演舞」も盛り上がりを見せ、3日目。
新人戦個人部門に突入した。40名がひしぎ、鬩ぎ合うトーナメントの争いの中で、ザプリェットは一回戦第6試合に出場した。
ザプリェットが控室でストレッチをして準備をしていると、H組の面々が入ってきた。
「……みんな……来てくれたんだ。」
ザプリェットの反応に、男子生徒のロティスが話す。
「まーな、ウチのクラスの代表だからな、ザプリェットは。正直色々言いてえところはあるけどよ……時間がねえから簡潔に言うぜ? 下からの底力を見せてやれ、上でノホホンとしてる奴らによ?」
ザプリェットはそれを聞き、少し表情が和らいだ。
「分かってるよ、そんなこと。じゃ、行ってくる。」
頑張れ、という檄が飛ぶ中、ザプリェットはスタジアムへと向かっていった。
大歓声が飛び交う中、ザプリェットは左腕輪のみを外し、指を鳴らしてゴングが鳴るのを待つ。
対戦相手はB組のハイティ。
氷魔法の使い手である。
「魔闘演舞」のルールはシンプルで、ダウンをして10カウントが数えられたら負け、というものである。
しかし10カウントを前に戦闘不能と判断を下されればレフェリーストップもある。
まさに倒すか倒されるか_______そういったサバイバルバトルとなっているのである。
レフェリーの合図と同時に、2人が魔法陣を生成する。
ハイティは氷属性の魔法を、ザプリェットは無属性の魔法を。
そしてほぼ同時に射撃をした。
ザプリェットは氷の弾丸を瞬時に右にヘッドスリップをして避けた。
それでいてザプリェットの魔法は、というと。
ハイティに直撃して、ハイティがガクン、と膝を落とす。
効いているようだ。
(とはいっても手抜きなんだけどな、これ……3%くらい。ま、低威力の魔法の方が速いしね、生成速度。じゃー、一気に決めちゃいますか……)
だがハイティも負けていない。
立て直すと同時に氷の魔法を二つ同時に錬成した。
(おっ……思いの外やるね……じゃ、私も行くか……練習してるヤツだけど、お試しで。)
ザプリェットは三角形を瞬時に描き、それぞれの頂点で円が形成される。
観客席で見ていたフロイドは、目を見開いた。
(………!?!? 3つ同時錬成………!?!? 僕でもできないことをザプリェットは易々と……!?!?)
無論フロイドだけでなく、観客席から響めきがひた走った。
だが、当のザプリェットは、というと。
(………やっぱ難しいな……まあでも最低限撃てる、か。)
威力がバラツキが出ている。
まだ習得段階、というところだろうか。
とはいえザプリェットには関係はなかった。
3連続錬成を一気にハイティに解き放ち、たまらずハイティはガクン、と両膝を突いた。
ダウンを奪い、会場から歓声が湧き上がる。
カウントが数えられるが、ハイティは戦意喪失の状態だった。
無理、と言わんばかりに首を3回横に振る。
6を数え終えた直後、レフェリーは手を横に振って試合を止めた。
ザプリェットは観客に、2発だけで相手をKOするという、秒殺劇を見せつけてスタジアムを後にして行ったのであった。
控室に戻ったザプリェットは、フローティアに出迎えられた。
「ザプちゃん、おつかれ!! はい、お水!」
「ああ、うん。ありがと、フローティア。」
ザプリェットは水をグイッと一飲みした。
そして一息吐く。
「はー……3つ同時錬成が上手くいってよかった……向こうが意地張って2個張ってくるから私も意地張っちゃった。でもこんなもの、かな。」
「でもすごいよ! 2発で倒すって、今まででもなかったらしいよ??」
「……そうなの? まー……早く終わってよかったよ。疲れたら上手く生成できないしね。ラチェーカと戦うため、って考えたら早く終わるに越したことないし。」
ザプリェットは淡々としていた。
次に向けての準備もできている、ということだろうか。
「でも時間あるよね、次の試合までさ? だからちょっとご飯食べに行こうよ。奢るから!」
「え、いいの? じゃあ……お言葉に甘えて。」
ザプリェットはフローティアと共に昼食を摂りにいったのであった。
一方ラチェーカも絶好調だった。
ザプリェットよりも時間が掛かっているとはいえ、内容的には圧倒的な勝利を収めていくのであった。
(まだまだね……ザプリェットに勝つためにはこんなのじゃダメ……!! もっと早く決めないと!!)
ラチェーカは決着を着けても闘志が萎えることがなかった。
全てはザプリェットと決着を着けるために。
次回も前座。
ザプリェットとラチェーカとのリング上での邂逅までをお送りできれば、と思います。




