第12話 闘志と充実
夏休み編終了、次回から「魔闘演舞」編になりますので、その前座的な感じで書いておきたいと思います。
さて、8月後半になり、サダムパテック魔法学院の夏休みが終わり、生徒たちは一斉に寮に戻ってきて、ガヤガヤした寮となっている。
「あー! ザプちゃん!! 久しぶりーーーー!!!!」
ザプリェットを見るなりフローティアはザプリェットに抱きついてきた。
これにザプリェットも頭を抱き抱えて迎えた。
「そうだね、フローティア。なんか懐かしく感じるね。」
「ホント、寂しくってさー、会えない期間!! ……というかさ、ザプちゃんさ、ちょっと丸くなった?」
「んー……まあ、バイトしてたからね、母さんの職場で。いろんな人と関われたしさ、充実はした。」
「そっかー……よかった、順調そうで!!」
「まあね。リフレッシュは出来た。」
寮の名札を2人がひっくり返した時、周囲がゾッとするようなオーラを放っている生徒がいた。
金髪碧眼の、ウェーブがかった髪の主______ラチェーカだった。
ラチェーカは無言で札をひっくり返し、周囲を近づけさせないオーラを漲らせたまま部屋へと向かっていったのであった。
「……私も分かるよ、あの闘志は………この休み期間で相当やり込んできたんだろうね……」
「う、うん……ラチェーカさん、どうしちゃったんだろう、ってくらいだった……多分……『魔闘演舞』に向けてさ、相当懸けてきたんだろうね……それがビンビン伝わった………ザプちゃんも楽じゃなさそうかな、本番は……」
自分の部屋に戻る最中、2人の話題はラチェーカのあのオーラに及んでいた。
「まあ多分……私にだけは負けたくない、って感じじゃない? フローティアが前に言った通り……ラチェーカの真面目な部分が出たんだろうし。それに……本番まで自分を追い込む気だろうね、自分で自分をさ?」
「うん……そうかもね……だったら尚更負けられないんじゃない? ザプちゃん。」
フローティアが「魔闘演舞」の意気込みをザプリェットに改めて問うた。
なにしろ「一年生最強」を決める戦いなのだ、ザプリェットはともかく、「首席」としてのプライドが故に負けられないのだろう、と周囲は感じ取っているのだろうが。
ザプリェットは淡々と答える。
「……まあ、合間を縫って魔法の練習はしてきたから……今は魔力が溢れる、なんてことはなくなった。だいぶコントロールはできるようになってきたし……おそらく私は実績から、ラチェーカは入学時の成績だけで鑑みて逆山になるだろうしね。それを想定した調整も出来てるよ。だから今はラチェーカ以外には負ける理由が見つからないくらいだよ。ただ……今のラチェーカでも油断していたらこっちが呑み込まれるかもしれないからラチェーカのあの気迫に負けないくらいに調整しとかないとね。最悪私の魔法を全校生徒に晒すかもしれない、隠しながらやってきたからそこだけかな、懸念は。」
ザプリェットは意気込みをフローティアに答える。
ラチェーカには負けられない、という想いがフローティアにも静かながらも伝わってきていた。
ザプリェットの影の努力を親友としてよく知っているからこそ、ザプリェットの言葉がそれに裏打ちされているものだ、という確証が持てる。
「でも……私はザプちゃんが勝つ、って信じてる!! 私は個人戦は参加しないから応援しか出来ないけど……ザプちゃんらしくやればいいよ!! いつも通り行こう? 本番は!!」
「……そうだね。ありがとう、ちょっと気が楽になった。」
その後も2人は、夏休みをどう過ごしたのかを談笑していたのであった。
その頃、ラチェーカは。
殺気ともとれるオーラを全身から漂わせていた。
同級生でルームメイトのアリエラが全く声を掛けられないほどに。
ラチェーカはゆっくりと立ち上がり、アリエラに告げた。
「……自主練してくる。」
「え……!? ああ、うん………」
ラチェーカは外に出て、魔法の練習を始めた。
(まだ……こんなのじゃ足りない………!! アイツを……!! ザプリェットを完膚なきまでに叩きのめすためには………!!! 学年で1番強いのはアイツじゃない、私なんだ!!! 限界まで自分を高めてやる!!! 勝つために!!!)
そのオーラは闘志か、殺意か、はたまた嫉妬なのか………真相は本人にしか分からないが、ラチェーカはザプリェットを倒すために自分で自分を追い込み、魔力値を極限まで高めていったのであった。
9月の「魔闘演舞」まで、期日は短い。
だからこそザプリェットもラチェーカも、自らを追い込むところまで追い込んでいき、本番前日を迎えたのであった。
次回は新章1発目と同時に前日まで時は進みます。
ザプリェットの心境はどうなのか、そしてラチェーカの心境はどうなのか……それを書きたいと思います。
ただ、新章終盤の展開は俺はそんなに書きたくないんだよな、読者トラウマ(になるかも)のシーンが来てしまうから。




