表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

殿下、声と場面が一致しません!

作者: 騎士ランチ

「くらえい!」


 私の婚約者であり王太子のリュウジ様が指を突きつけた瞬間、私は前世を思い出しました。ああ、なんと言うことでしょう、ここは私が生前プレイした乙女ゲーム『逆転オブアトリエの王国2』の世界だなんて!


「くらえぃ!くらえぃ!くらえぃ!」


 そして、この状況は卒業パーティーの婚約破棄シーン!私の悪事が次々と暴かれているのですわ!ですが、逆アト2が発売されたのは1995年、PS1(プレイサターンワン)初期の時代です。この時代のゲームはほとんどがパートボイスで会話していました。逆アト2もその例に漏れずメインキャラはフルボイスてはなく会話は短いボイスが音声で流れ、画面の下半分に文章テキストが表示される方式でした。


 まあ、令和になってもフルボイスじゃない作品は結構ありますけど、今重要なのは私がいるこの世界の攻略対象がパートボイスで喋っている事、そしてテキストウィンドウがどこにも無い事です。


「くらえぃ!これでどうだ!くらえぃ!俺の勝ちだ!」


 つまり、前世知識を得てしまったばかりの今の私は彼がなーにを言ってるのかぜーんぜんわからない所さん状態なのですわ!ピンチ!多分、さっきまではこいつが何言ってるかわかってたんでしょうが。


 チクショー!早く今世の私の記憶とか常識戻って人格統合しろ!もしくはテキストウィンドウカモンですわ!


「皆集まってくれ!」

「フッ私の力が必要ですか?」

「ねっけぇぇぇつ!」

「僕なのね〜」


 ああっ、私が打開策を見出だせない間に宰相の息子レイン様と騎士団長の息子ゲイル様とゲーム開発者がモデルのリッチー様が現れましたわ!まずい、うろ覚えの前世知識(なんせ、プレイしたのは27年前)では彼らが集結した時点で断罪は中盤を経過していたはず!何とかして会話内容を把握して反論を…


「くらえぃ!くらえぃ!くらえぃ!」

「麻薬取引!?公爵家許すまじ!この倉庫です!」

「デビルブレイカー!エレメントクラッシュ!パニッシャー!」

「プレイヤーの皆、僕のゲームをプレイしてくれてありがとうなのね。僕が居るって事は二週目以上よね?断罪後の展開が変わるから最後までスキップせずに見て欲しいのね〜」


 難易度跳ね上がったー!ノイズが多すぎて彼らが私の何を訴えて、どんな証拠を持ってるのかさっぱりわかりませんわ!せめてテキストに合ったパートボイスを使って下さいまし!特にそこの脳筋騎士!


「おーおー偉大な祖国ー聖女と共にーあれー」


 ああっ、リュウジ様がご自身のキャラソンを歌い出しましたわ!確かこのゲームはキャラ攻略成功時にはBGMがキャラソンに変わる仕様!つまりリュウジ様の口からCD音源が流れているという事は断罪イベントの成功、私の破滅を意味するのですわ!


 終わりましたわ!転生して数分、まだ何もしてないのにブタ箱行きですわ!ああ、屈強な衛兵が私の方に来て、私をスルーしてリュウジ様と取り巻きを引っ捕らえましたわ!


「あっ、あー、うん思い出しました。そうゆー事でしたね、うん」


 リュウジ様達が目の前からいなくなり、精神状態が回復した私は今世の記憶を思い出し前世の記憶と統合されました。


 この世界にはパートボイスでコミュニケーションを取る人達が存在します。そして彼らは異端者として病院に隔離され研究対象にされてきたのです。リュウジ様は確かに私の婚約者でしたが、四歳の時に異端者であるのが確定し病院に送られました。その後ずっと大人しくしていたらしいのですが、最近他の患者を連れて脱走し今日この場に現れたという訳です。


 その後、私は異端者研究に加わる事にしました。手に入れた前世知識を使えば、誰もが彼らとコミュニケーションが取れる時代が来るかも知れないと思ったからです。


 その結果リュウジ様のクズさを知ってしまったり、ゲームのヒロインに似た錬金術師と出会ったり、彼女と共にこのふざけた世界を創った神をぶちのめす決意をしたり、その神ってリュウジ様の取り巻きに居たわと思い出して殴りに行ったりしたのはまた別の話。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ