表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

図書館で不思議な本に引っ張られ、気がついたら異世界だった。召喚スキルはSSS級なのでのんびり過ごします。

図書館で不思議な本に引っ張られ、気がついたら異世界だった。召喚スキルはSSS級なのでのんびり過ごします。3軽い気持ちで植物採集のはずが・・・!(旧タイトル:異世界転生したけど、召喚しか使えない!)

作者: たぬき

 僕は、出雲暢気図書館に置いてあった汚れた本『召喚術(達人編)』を手にとって、読み始めた瞬間、目の前が真っ暗になり、気が付いたらシャイニアンの森の小屋にいた。手にあったのは、汚れた本と傘だけだ。その後、ドライアドやレッドドラゴン騒ぎで、冒険者登録をして、Hランクの冒険者となった暢気のHランク任務である植物採取を行った一日のお話。


「今日はいい天気だな~!ギルドにでも行ってみようかな」


 暢気は先日換金したヒュージデスウルフのお金があったので、特に稼ぐ必要はなかった。

 しかし、何もしないで過ごすのもよくないと思い、冒険者ギルド「シャイン」に行くことにした。

 冒険者ギルド「シャイン」は、暢気が生活している町「スプリングタウン」にあるギルドだった。


「アンナおばさん!おはようございます」

「ああ、おはよう!暢気君。今日はお出かけかい?」

「はい、天気がいいので植物採取のクエストでもないかと思いまして、ギルドまで向かっているんです。」

「そうかい、いいクエストがあるといいねぇ、それから、暢気君、今日はいい果物がたくさん入っているから、よかったら帰りがけによってくれるとうれしいよ」


 アンナおばさんは暢気が初めてこの町に来た時に、ギルドまでの道を尋ねたことから親切にしてくれている。

 露店で野菜や果物を売っていて、通りかかったらいつも何か入荷したものを勧められるのだ。




 アンナおばさんのお店からまっすぐに進んだところに冒険者ギルド「シャイン」はあった。

 スプリングタウンは王都から近くにあり、冒険者ギルド「シャイン」も比較的大きなギルドだということだった。

 他のギルドを知らないから、他の冒険者に聞いた話にはなるんだけど。

 ギルドの裏にある解体所では、今日も、厳じいさんが丁寧に解体をしていた。

 そんな厳じいさんを横目に見ながら、ギルドの扉を開けた。

 早朝のギルドは人が少ないと思っていたら、クエストボードの前に10数名の冒険者が新しく張られたクエストを確認していた。

 今は採取クエストの確認できないなと思いながら、カウンターの受付をしてくれるエルフのサニアさんの手が空いていたので挨拶をすることにした。


「サニアさん、おはようございます。今日は冒険者の方々が多いですね」

「はい、おはようございます、暢気さん。こないだの『かしわめし』本当においしかったよ!ありがとうね。また王都に行くことがあったらよろしくね!」


 前回の配達任務で王都に行くことがあり、お土産に、今王都ではやっているという『かしわめし』を持っていったのだ。

 とても喜んでくれてよかった。

 やっぱり、女性にはお土産を持っていくのは大事だなと感じた。


「朝早い時間は、新しいクエストが張り出されるでしょ、それに、依頼は早い者勝ちだから、この時間は多いのよ。ところで、暢気さんもクエストを探しに来たの?」

「はい、天気がいいので、何か珍しい採取クエストがないかと思いまして来てみました。」


 冒険者の方々は張り出されたクエストを色々吟味していたので、受付のサニアさんは暇そうだったので、話をしてみた。


「何か、面白い・・・おもしろいクエスト・・・。そういえば、今朝早くギルドに、採取クエストの依頼が来てたよ!今朝だったから、まだ張り出されていないんで、こっそり紹介してあげる。『かしわめし』のお礼もかねてね!内緒よ!」


 思いがけず最新のクエストを依頼することが出来そうだった。

 あと、『かしわめし』は偉大だ!


「暢気さんちょっと待っててね。詳しく確認してくるから」


 そういて、サニアさんは奥に書類を確認しに行った。

 10分位待つと1枚の書類をもって、サニアさんが戻ってきた。


「Hランク任務としても問題ないわね。あと、暢気さんは馬車を持ってたわよね。ちょっと遠方の依頼なのだけどいいかな?」

「はい!馬車があるので、遠方の依頼でも全く問題ないですよ。それに、遠方だと旅行みたいで少しうれしいです。」

「それならよかったわ。内容の説明をするわね。場所はこのスプリングタウンから南に歩いて4日位だから、馬車なら2日ってとこかな。そこに、サマーリバーっていう川があるんだけど、その川の上流に位置するところに『ほうれん草』っている薬草があるの。緑色の薬草でこの場所でしか取れないのよね。依頼はこの『ほうれん草』を20束持ってくること。根は付いたままで持ってきてね。根を切ると一気に鮮度が下がるらしいから。」


 ほうれん草という名を聞いて、完全に日本にあるほうれん草を思い出してしまった。

 実際はどんなものかわからないが、近くでドライアドに聞いてみればいいかなと思った。


「サマーリバーの上流にある『ほうれん草』を20束ですね。期日はあるんですか?」

「そうそう、依頼主も急いでいるみたいだったから、7日後の夕方でお願いできる?あと、サマーリバーとは反対のオータムリバーっていう川の上流は決して行ってはいけないからね。そこは毒系統の上位モンスターがいるので気をつけるのよ。いいオータムリバーはだめよ」


 なんだか、サニアさんが、親戚のお姉さんによくある心配性なお節介さんになっていた。


「はい、わかりました。オータムリバーはだめなんですね」

「では、気をつけて、7日後の夕方までに戻ってきてね。行ってらっしゃい」


 乱暴な冒険者で込み合っているクエストボードを見ることなく、クエストを受けることが出来た。

 また何かサニアさんにお土産を持っていかないといけないなと思った。





 召喚術を使うのに、あまり人目に触れるといけないので、町を出て人気のないのを確認をした後、『召喚術(達人編)』を出して、Ⅲ召喚アイテムのページを開いて、馬車と地図を呼び出すことにした。


「Ⅲ召喚アイテム:マジックマップ」

「Ⅲ召喚アイテム:ホースカーゴ」


 召喚すると、目の前に馬付きの馬車とナビ付の地図が現れた。

 馬車はエアクッションがあり、ずっと座っていてもお尻が痛くならない優れものだった。

 そして、地図は希望の場所を呼びかけると地図にその場所が現れ、しかもナビをしてくれた。

 今回は移動が2日間あるので、途中で一拍宿を取りたかった。

 そこで、地図に向かって、『ほうれん草』の場所とそこまでの町の場所を呼びかけてみた。

 すると、地図には2本の川が現れ、左側の川の上流の周辺にエリアが表示されて、『ほうれん草』と記入されていた。

 町の名前は「デスティニー」となっていた。

「運命」って、何かのトラブルのフラグかいな!

 それは置いといて、この場所で『ほうれん草』に関する情報を仕入れておかないといけないってことになるのかな!?


「よし、これで、目的地も途中の町もわかったので、あとは出発するだけだ!」


 ゆっくりと馬車を走らせて、ポカポカ陽気の中途中ウトウトしながら目的の町「ディスティニー」に向かって進んでいった。

 昼食は露店のおばちゃんのところで購入したリンゴと4日間の旅に出ると話をしたら作ってくれたおにぎりを食べた。


「おばちゃんのおにぎりうんめぇ~なぁ~!しかし、このサイズはやっぱりあの体格のいいおばちゃんだからだろうな。ふふっ!」


 おにぎりは僕が両手でやっと1つ持てる位のサイズだった。

 ただ、体格のいいおばちゃんなら片手で余裕で持てるくらいだった。

 2つもらったので、とりあえず1つを食べてデザートにリンゴも食べた。

 残りの1つはマジックバックに収納しておいた。

 その後も特にトラブルなく夕方には目的の町「ディスティニー」に到着した。

 ディスティニーの門番には、ギルド発行の通行証を見せるとすんなり通してくれた。

 サニアさんがあると便利だからと発行しておいてくれたのだ。

 入り口を通過する時に、手にしずくが当たるのを感じた。

 朝からずっと天気は良かったが、ディスティニーの町に近づくにつれて、雲が少しづつ出てきていたのだ。


「今日は天気が良かったのになぁ。明日の朝は晴れるといいな!」


 日が暮れる前に、ディスティニーの冒険者ギルドを訪れた。

 ギルドでほうれん草についてたずねたかったからだ。

 受付の人にたずねると、すぐに答えてくれた。


「ほうれん草の生息地ですか。それなら、西の門を出て、まっすぐに進むと大岩があります。かなり大きいのですぐに分かると思いますよ。その岩を左に進んでください。絶対に左側ですよ。間違えないようにしてくださいね。その後は川沿いにまっすぐ進んでいったらわかります。」


 きっとオータムリバーの事だろうと思った。

 やっぱり、オータムリバー沿いはかなり危険なんだろうと思った。

 ディスティニーの冒険者ギルドは隣が食事処となっていた。

 いかつい鎧や剣に盾、色鮮やかな衣装を着ている様々な屈強な冒険者風の男女がお酒をかわしながら騒いでいた。

 昼食の量が多かったので、あまり食欲はなかったが、カウンターの上に『名産:半殺しのおはぎ』おすすめという札が飾ってあったので、気になったから1つもらうことにした。

 出てきたのは、片手では乗り切らないくらいのサイズの牡丹餅だった。

 そして、牡丹餅と一緒にミルクがついてきた。

 サイズが大きかったので、ゆっくりと食べていると、冒険者たちが大きな声で話しているのが聞こえた。


「・・・こないだ新ダンジョンの地下3階に到着したパーティーがいたらしいぜ」

「・・・それに、宝箱にはマジックメイルが入っていたって噂だよ」

「・・・まじかよ。それスゲーな!」


 この町ディスティニーの近くに新しいダンジョンが見つかったという話で持ち切りだった。

 いたるところで、洞窟の話と宝箱の話、それにそこにいるモンスターの話などであふれていた。

 僕もいつかはダンジョンに行ってみるのもいいかもしれない。

 そんな事を考えていた。

 あと、帰る時にこの『半殺しのおはぎ』をお土産にしようと決めた。




 翌日、少しゆっくり目の出発となった。

 ギルドの食事処で聞いた話が面白くて、かなり遅くまで聞いてたので、寝過ごしてしまっていた。

 出発の時には雨は降っていなかったが、天気は小康状態といえるくらい芳しいものではなかった。

 町の西門から出て、まっすぐ進んだ。

 今日は『ほうれん草』を採取して持ち帰るだけだ。

 場所の確認もできたので何の問題もないはずだった・・・・・。



 ここまでは。



 そろそろ大岩のところに近づくころだとマジックマップを見ながら確認をしていた。

 すると、4人の屈強そうな男たちがたむろっているのを発見した。

 馬車で通って、もしも強盗だったらいけないと思い。

 馬車は召喚解除して、歩いてこっそり脇道を進むことにした。

 丁度、4人の男たちの側を通りかかった時、何か言い合いになっているのが聞こえた。


「うわ~。何か喧嘩しているよ。側を通らなくてよかったぁ~」


 小声で口ずさんだあとに、何か嫌な予感がした。

 やべぇ~!何か言ってはいけないセリフを言っちゃったかな。

 そう思った後、予感は的中した。

 男たちは3人対1人に分かれて、1人が僕の方に向かって来た。

 3人の男たちは1人の男に対して怒鳴り散らしていた。


「てめぇ、やるか!」

「殺してやる!」


 など、3人の男たちの声から尋常でないセリフが飛び交っていた。

 僕はヤバいと思って、その場から立ち去る為に走り出した。

 そして、追われている1人の男も走り出してきた。


 えっ!なんでこっちに来てんの!


 そう思った瞬間、男と僕はぶつかってしまった。

 もちろん、体重差があまりにもありすぎたので、僕は吹き飛ばされてしまった。

 痛みでうずくまっていると声が聞こえてきた。


「なんでこんなところに少年が・・・。いや!今はそれどころではないな。とにかく抱えるからな。じっとしてろよ」


 今なんて言った?

 抱えるから?


 僕は男の話した内容を確認しようと振り返った瞬間、体が宙に浮いていた。

 そして、男の右手に抱えられたまま、一緒に進んでいった。


 いや、ちょっと待ってよ。

 僕の事はほおっておいてほしいんだけど・・・。


 そんな僕の願いは通じるはずもなく、むなしく運ばれていった。

 15分間位走っていたのだろうか。

 男は完全に3人を巻いて逃げ切っていた。


「すまなかったな、少年。俺の名はアデル。少年の名は何というのだ」

「えっと!名前はのんき、いや暢気です。」

「暢気というのか。ぶつかってしまってすまなかったな。ケガはどうなった。」


 そうだぶつかって弾き飛ばされていたんだった。

 肩と右足に痛みがあったが、骨折や捻挫はしていないようだった。


「はい、肩と右足に痛みがありますが、他は大丈夫です。」

「そうか。悪かったな」


 さっきから、このアデルさんは謝ってばかりだった。

 ここまで来てしまったら、もう後には引けないような気がしたので、事情を聴いてみた。


「実はな、先日ダンジョンでマジックメイルの宝を獲得したんだ。言い争っていた3人はその時のパーティだった。マジックメイルを誰が獲得するかでもめて、結局くじ引きで俺が当てたんだが、その後にぐちぐちと俺を非難するようになったんだ。しまいには、殺してやるとまで言われて・・・。それで、3人から逃げたのさ」

「マジックメイルはアデルさんがくじ引きで当てたんでしょ。それなのに、あとから非難するなんでおかしいですよね」


 ぶつかった相手なんて、普通なら見捨てていくような状態で抱えて助けてくれたアデルさんになんてひどいことをする3人なんだと思った。

 その後は、冒険中の話を色々と教えてもらった。

 教えてもらった冒険の話はほとんどが、言い争っていた3人と一緒に経験していた。

 たった1つのマジックアイテムでそこまで人は変わるものなのかと少し大人の世界の苦いところを聴いた気がした。

 話をしながら、アデルさんは汗でぬれていたので、側にあった川に入り水浴びをしていた。

 全部脱いで川で水浴びをしていたアデルさんの首の後ろに首輪の飾りをつけていた。


「アデルさん、その首の後ろにつけてある銀の飾りみたいなものは何ですか?とってもかっこいいですね」

「なんだって、首の後ろの飾りか?」


 アデルさんは僕の首の後ろに手を当てて確認していた。


「ああ!これか!これは・・・かっこいいだろ!いつ買ったかは忘れちまったが、思い出したら教えたやるよ」

「本当ですか?思い出したらぜひ教えて下さいね」


 アデルさんとの話が面白くて、気が付くと、日が暮れてきていた。

 一日天気が悪くて、薄ぐらかったせいか、日暮れに気が付くのが遅れた。


「暢気!ちょっと日が暮れだしたな。すまないが、ここで野宿になる我慢してくれ」


 そして、後退で火の番をすることになった。

 夜中はアデルさんが火の番をするからと、早い時間と早朝は僕がすることになった。

 月が頂点に着いた頃に交代の時間としていたので、アデルさんに声をかけた。


「アデルさんそろそろ交代の時間ですよ」

「そうか、時間かゆっくり休んでおくんだぞ」


 アデルさんに声をかけるとすぐに目を覚ましてきた。

 もしかして、眠っていたふりをしていたのかもしれない。

 そんなアデルさんに礼を言って休むことにした。

 そして、僕が目をつむった瞬間に声が聞こえてきた。


「アデル!きさまこんな少年をさらってどうしようと考えているんだ」

「お前たちこそ、いつまでぐだぐだとしみったれたことを言っているんだ」


 アデルさんと2人が怒鳴り合っていた。

 そんなアデルさんに声をかけようとした瞬間、後ろから捕まれたことに気が付いた。


「アデルさーん!助けてぇぇえ!」

「少年待ってろ!必ず助けに行くからなぁああ!」


 そう言って、アデルさんはその場から逃げていった。

 僕はアデルさんが見えなくなった後に、3人の冒険者をにらみつけて叫んだ。


「アデルさんを殺すように僕も殺すのですかぁぁあああ!」


 そう叫んだあと、僕をつかんでいた冒険者はゆっくりとおろしてくれた。


「手荒なことをしてすまなかったな。私はサリューという。パーティ名を「風のかまいたち」でリーダーをしている。アデルから手荒なことをされなかったか?」

「何を言っているんだ、僕は騙されないぞ!お前たちがアデルさんを殺そうとしているんだろうが!」


 僕は側に落ちていた棒切れをつかんでサリューという冒険者に向けた。


「少年!落ち着いて話を聞いてくれないか?」

「僕は慌ててなんかいないぞ」


 寝る前にモンスターを召喚しておけばよかったと後悔したが、今更間に合わない。

 とにかく殺されないように時間を稼げはアデルさんが助けに来てくれるに違いない。


「少年!とにかくそのままでいいから話を聞いてくれないか?」

「・・・・・・・」


 僕は返事をせずににらみ続けた。


「アデルに何を言われたか知らないが、我々は少年に危害を加えるつもりは全くないんだ」

「・・・・・・・」


 大人3人が、僕みたいな少年を殺そうと思えばすぐに殺せるはずだが、そんな様子はなかった。

 少し、信じてみることにした。

 黙ったまま、小さくうなずいてみた。


「話は聞いてくれるみたいだな。私はサリューこのパーティのリーダーだ。先日、ダンジョンでマジックメイルを獲得した。くじで獲得者を決めることにして、アデルが引き当てた。ここまでは良かったんだ。しかし、アデルがマジックメイルを着用した後、人が変わったように少しづつだが、乱暴になっていったんだ。」


 あれ!アデルさんから聞いた話しと、少し違ってきているように思えた。


「後方から、魔法を唱えて敵をねらっているだが、側に味方がいても気にせず打ってきていたんだ。最初はミスかなと思ったが、その回数も多くなり、今朝は仲間が危うく当たりそうになったところをかろうじて回避させるといったことがあったんだ。」


 本当かどうかは信用できないが、この人たちが嘘をついているようには思えなかったので、構えを解いて、声をかけた。


「僕は暢気といいます。よければ、話を詳しく聞かせてもらえますか?」

「そうか暢気君すこしは、我々の事を信用してくれているようだな」

「話を聞いて決めます」

「わかった。続きを話そう。それで、ダンジョンの帰りがけに今朝の魔法のフレンドファイヤーについて話をしていたら、アデルのやつ『当たったら、当たった方が悪いだろうが!』ってぬかしやがったんだ。それで、頭に来たジョンが『殺してやる!』といっていたわけだ」


 自分が聞いたのは最後の部分だけだった。

 しかし、一緒にいた間のアデルさんは何度も誤ってばかりでそんなことをする人にはどうしても見えなかった。


「僕と一緒にいた時は謝ってばかりでした。どうしてもそんなことをする人には見えないんですが?」

「我々と一緒にいた時と同じだな」

「同じってどういうことですか?」

「マジックメイルを着用した後は、アデルのやつ何度も誤ってばかりいたんだ。そんなに悪くないよって言っても、すまないや申し訳ないと、こちらの気が引ける位言っていたんだ。それからは、知らねぇよとか勝手にしろに代わって、最後はこちらを非難する始末さ!」


 ここまで聞くと、サリューさんのいうことが正しいように聞こえてきた。

 しかし、マジックメイル欲しさに3人で芝居を打っているということも考えられなくないので、完全に信用することはできなかった。


 僕にもう少し、人をみる目があれば・・・。


 僕が考え込んでいたら、ジョンさんが口を開いた。


「アデルは仲間が捕まっているのに、一人で逃げるなんてするやつじゃなかったんだ。あいつには何度も助けられたよ。俺が逃げろって言っても、戻ってきて助けてくれる。そのため何度か一緒に死にかかったこともあるくらいなんだ。しかし、先ほど『必ず助けに行くから』といって逃げてしまった。すでに、アデルは少年を突き放しにかかってきている。あいつは助けになんか来ないよ」


 後ろにいた優しい顔の巨漢の男が話しかけてきた。


「おらはリンド。少年!どうかアデルを助けてやってくれないか。俺たちじゃ。どうしたらいいのかわからないんだ」


 いやいやいやいや!無理ですから。私中2の14歳です。何もできませんからぁ!


「おいリンド!少年がアデルを助けるなんて、出来るはずがないだろう。」


 サリューさんが巨漢のリンドという人に嘆いていた。


「ただ暢気君。君がアデルといた時に何か変わった事やものはなかったか?それがわかるだけでも手掛かりになるんだが・・・。」

「そういっても、僕が見たのは、屈強な体と首の後ろの綺麗な飾りくらいかな」

「・・・暢気君。いま、なんていったのか」

「屈強な体と綺麗な首飾りですか?」


 サリューさんはジョンさんとリンドさんの方を見て確認していた。


「アデルは俺たちと一緒にいた時に首飾りをしていたことはないんだ。もしかすると、マジックメイルに仕掛けてあった呪いのアイテムかもしれない」

「呪いのアイテムですか?それはどうやれば、外せるんですか?」

「呪術師なら何とかなるが・・・。我々なら・・・壊すほかないかもしれない。・・・壊した後、アデルが死んでしまってもそれは仕方ないと思うしかないだろう」


 サリューさんは仲間が呪いでおかしくなったままよりも、死をえらぶ事にしたようだった。

 その日は夜も遅かったので、そのままそこで野営を続ける事にした。

 僕はまだ若いということで、そのまま休ませてもらった。

 しかし、夜中に一度起きた後、トイレと称して『召喚術(達人編)』に何か使えるアイテムがないかを確認した。

 すると、カースネックレスというものがあった。

 普通の人が着用すると、能力が大幅に減少するというものである。

 しかし、呪われている対象に着用させると相互干渉してしまい、共に破壊してしまうというものだった。


 僕はⅢ召喚アイテムのページを開いた。

「カースネックレス」


 僕の呼びかけに応じて、ネックレスが両手に現れてきた。

 そのネックレスは、シルバーチェーンに黒い文様の入った宝石が付いていた。

 そして、そっと僕はポケットの中に忍ばせた。

 朝になり、サリューさんに挨拶をしたあと、カースネックレスの事を話した。


「サリューさん、実は自分の実家の秘伝にカースネックレスというのがあります。普通の人が着用するよ強い呪いが発生するのですが、すでに呪われている人が着用すると、呪いのアイテムと一緒に破壊されてしまうというものです」

「暢気君それはものすごく貴重なものではないんですか?」

「そうかもしれません。ですが、僕が持っていても役に立てられるかどうかわかりません。それなら、アデルさんを救うために使うことが出来るなら、僕もうれしく思いますよ」

「暢気君、ありがとう。感謝する。今後何か君に協力できることがあれば、何でもいいので協力させてくれ。約束するよ」


 サリューさんは両ひざをついて、僕の手を握り涙を流しながら何度も礼を言っていた。

 昨日の決断はサリューさんにとって、とてもつらい決断だったんだろうと思った。

 あとはアデルさんを探すだけだが、どこに行けばいるのだろう。


「アデルさんはどこにいるのでしょうか?」

「きっとダンジョンの中だろう。マジックメイルを着用した後、異様にダンジョンに行くことを訴えていたから、間違いないだろう」


 そして、僕らは一緒にダンジョンに向かった。

 ダンジョンのどこにいるかで、難易度は上がるが、何とかするしかない。

 そうみんなで声に出して誓い合った。

 しかし、ダンジョンに到着したら、ダンジョンの入り口で両手を広げて眠っているアデルの姿があった。

 3人が気づかれないようにアデルの体を抑えて、自分が首からネックレスをかける手はずをつけた。


「みんな、準備はいいか?1といったら一斉に体を抑えるんだぞ!3・・2・・1いけ!」


 3人で一斉に体をつかんだが、アデルは起きる気配がなく、最後に僕がゆっくりとカースネックレスと着用した。

 カースネックレスを着用して、3秒くらいでアデルの体が硬直し始めた。

 3人は側でアデルの体の様子を見て、少し心配していた。

 しかし、その後、大きな音と共に、カースネックレスとアデルの首の後ろの細工が砕け散った。

 そして、ゆっくりとアデルの硬直も取れた。

 すると、アデルはゆっくりと目を覚ましてきた。


「あれ!おはよう!みんなどうしたんだ!そんなにつかんでいたら動けないじゃないか?」


 カースネックレスで、もしもアデルが暴れることがあってはいけないと体を3人でつかんだままにしていた。


「アデル大丈夫なのか?」

「もう俺に魔法を当てたりしないだろうな?」


 アデルは何を言っているんだという顔をして返事をしてきた。


「俺は特に変わったことはないし、仲間に魔法を当てるなんてするはずないじゃないか!!」


 それを聴いた『風のかまいたち』パーティの皆は涙を流して笑顔になっていた。


「おいおいどうしたんだ!みんな!大丈夫か?」

「大丈夫かといいたいのはこっちだ。後でみんなからお説教な。アデル」


 アデルにはマジックメイルをつけた後の記憶がなかったようだった。

 しかし、無事に全員そろった『風のかまいたち』は嬉しそうにたたずんでいた。

 その後、何度も礼を言われて飯でもと誘われたが、採取依頼の途中だからといって断り、無事に『ほうれん草』を20束採取することが出来た。


 帰る時に、デスティニーの冒険者ギルドによって、『半殺しのおはぎ』を買って帰った。

 全行程6日間で済んだので、予定よりも1日早く完了した。

 冒険者ギルド「シャイン」の受付のサニアさんにクエスト完了の報告と『半殺しのおはぎ』を渡した。


「これディスティニーの冒険者ギルドにある『半殺しのおはぎ』じゃないの。本当にいいのもらっても」

「おいしかったのでお土産です。」

「あぁ!やっぱり暢気さんに頼んでよかったわ。また、何かあったらよろしくね。今回の報酬と評価はAにしとくね。これはおまけよ」


 サニアさんにディスティニーの冒険者で『風のかまいたち』の事をたずねたら、最近Aランクに上がったパーティーだって教えてくれた。

 もしも、出会うことがあれば勉強になるから、顔を売っとくようにと教えてくれた。




出雲暢気のお気軽任務

気軽なはずなのに、トラブルに巻き込まれてしまう。

今後どんなトラブルに巻き込まれるのでしょうか。


簡単で構わないので感想などを書いていただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ