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Sランクパーティーを追放されたけど、気づけばみんな死んでてざまあ

作者: GAz

最近追放モノが流行っているので、流れに乗って書いてみました。ノリと勢いで書いたので誤字脱字があった場合は報告していただけると有難いですゾ

◻️←これが視点変更合図だゾ

 パーティで購入した家で、いつものように寛いでいたある日のこと。


「リゲル、お前は今日限りで"ロイヤリティ"を追放だ」


 唐突に告げられたその言葉を俺は信じられなかった。


「……マジで?」


 嫌だ、何かの冗談だろ?


「マジで」


 なんで、急に……そんな……!


「マジでマジで?」

「マジでマジで」


 俺が何をしたって言うんだよ。


「マジでマジでマジで?」

「マジでマジでマジで」


 酷すぎる、こんなのあんまりだ。

 今までの関係はなんだったんだよ……!

 だから、最後にもう一度聞かせてくれ。


「マ」

「あーもう! うっさいわよ! そんなにマジマジ言うなら私の魔法でも頭にぶつけてやりましょうか!?」


 ひえっ怒られた。ふざけるのやめておこう。


「分かった、落ち着け。とりあえずその手に持った杖を置くんだ。そう……いい子だやれば出来るんじゃないカッ!?」


 バフっと俺の頭にファイアーボールがぶつかる。

 ちょ、調子に乗りすぎた……。がくっ……。


「いや、殺す気か!?」

「あんたが調子に乗るからよ!」

「なんだと!?」

「なによ!」

「いや、待て待て。どうしてお前らはそうすぐに喧嘩腰になるんだ」


 俺が魔法使いの赤髪の女ミーシャと威嚇しあっていると、"ロイヤリティ"のリーダーでもある筋肉隆々の漢ガイがそこ力を駆使して喧嘩を止める。

 先に手を出したのはそっちだぜ!


「ごほん……話は戻すが、リゲル俺は本気でお前を追放するつもりだ」

「いやいや、待てって俺何か追放されるようなことしたか?」


 ガイの真剣な眼差しに、俺はようやくガイが本気なのだと知る。

 表向きにこそ、笑顔を作っているが足場が崩れたような不安感が俺の心の中を占めていた。


「ふむ、理由か。簡潔に言うとお前は冒険者のパーティーの最高位であるSランクパーティーに在籍する割に弱いんだよ」

「いや、実力ではそうかもしれないけど俺は盗賊……斥候役としてモンスターを見つけたり宝箱を開けたりとか働いてるだろう!?」

「あー、まあそうだな。お前には何度も助けられたよ。ほら、例えばスカルキングの時覚えているか?」

「覚えているに決まっている! 俺達が駆け出し冒険者の時にミーシャが踏んだ転移魔法陣のトラップが発動してパーティみんながモンスターハウスに入った時のことだろう!」

「ああ、新米のFランク冒険者が入れる限界の三階層からAランク冒険者の探索場である十四階層に飛ばされたのに、いまこうして生きているのはお前が敵の気配を感じ取り、道を選んで逃げに徹してくれたからだ」

「だったら!」

「それでも、決まったことだ」

「……っ! じ、じゃあミュウは? あいつも俺を!」

「ああ、あいつも納得したよ。実はもう新しいメンバーも居るんだ……入ってくれ」


 扉を開けて、ミュウと知らない男が入ってくる。


「リーくん、彼が新しい盗賊のギルさんです」

「君の後釜になるギルだ、このパーティは俺に任せてくれよ。先輩」


 あ、ははは。ははは。


「本当なんだな?……本当に俺は……お前らに必要にされてないんだな」

「ああ、お前はもういいんだ。荷物を纏めてパーティから抜けてくれ。最後の選別として十五万イェンもくれてやる」


 ドサッと床にお金が入っているであろう布袋を落とす。


「さあ、お前の顔は見たくない。さっさと行ってくれ」


 そういうと、ガイは俺の顔を見ないようにか後ろを向いてしまった。ミーシャもミュウもそして新入りのギルと名乗った男も既に俺のことを見てなかった。


 俺はロイヤリティの仲間として見てもらえなかった。


 涙が頬を伝う。視界が滲んで辺りが見えなくなる。

 情けない。仲間と思ってたのは俺だけだったなんて。

 情けない。ガイが言うことが全部正しいと心のどこかで認めてしまったなんて。


 俺は何も言わずに、布袋を拾い家を出る。

 金は与えられても、仲間として友として別れの言葉すら俺には与えられなかった。


 ■


「もう行ったわよ」

「うっ……ぐぅ……ううっ」

「あーもうっ鬱陶しいわね! そんなに泣くぐらいならリゲルのことをパーティから抜けさせなければよかったじゃない!」

「ふ、ふえぇ……ん」

「ミュウあんたまで泣くの!?……あんたらが泣くから、あたっあた……あたしまで……えうっうええええええええん……」


 リゲルが去ってから数分後、残されたロイヤリティの三人は涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっていた。


「彼はそこまで愛されていたんだな」

「あだりまぇだああ! 俺らびんなリゲルがだいずぎなんだよぉお! アイツばびいやつべ!なんどもめいわぐがげでも!! おれらのごどがんがべでぐれでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!! 」

「お、落ち着け。もはや何を言っているか理解出来ん!」


 ガイの泣きっぷりにギルは少し引きながらも宥めようとするが、他の二人の声でそれも掻き消されてしまう。


「りぃーくんは、いつもパーティのために、裏でがんがん、ばってくれて……ひんひん……。で、でもそれを気を使わせないように、隠して……ひぃぃぃぃぃん。それで、なんで隠してるのって聞くと、い、い、い、いつ、いつも戦力にっなれてないからってぇえええええええ! いつも助けられでるよおおおおお!ふぇぇぇぇぇぇん!」

「村のときがらぁ……あたしアイツと喧嘩ばかりしててぇ……それなのに、ダンジョンでぇ……あたしがみずじだぁどきも、なぐざめでぐれて……。ずぎなのに、あくだいばがりづいで……! ごんなごどになるならすきって言っとけばよがっだよおおお……!」

「私も言えばよがっだあああ!」

「俺も女じゃなぐで……リゲルがずぎだっで……ごどわられべも言えば……よがっだぁぁぁぁぁぁ」


 その光景を見て、ギルは顔を顰める。

 汚いとかではない、自身の不甲斐なさを恥じて顔を顰めたのだ。


「そんなに、思いあってるパーティを引き裂くような結果をもたらして、本当に済まない。冒険者ギルドの長、ギルドマスターとして、俺は自分が恥ずかしい……!」

「ぞれは……しかだないことですよ……王家からの命令にば俺らもじってまずがら……」

「だが、君らを助けるのが私の役目だったのだ! それを……SSSランクのモンスターの足止めという死ねと言わんばかりの任務につかないといけない状況をみすみす作らせてしまった!!」

「……私たちはリーくんが、ひくっ……に、任務から逃がして、もら、貰えるだけで満足でず……」

「そうよ……アイツには、あたしらの分まで、幸せに生きて、くれればそれだけで」


 SSSランクのモンスター。

 それは、自然災害という規模のモンスターである。

 一度動かけば、環境が変わり森だった場所は砂漠となり自然豊かであった山は平坦な荒地に変わる。


 それが、SSSランクのモンスターの力だ。


 自然災害が抑えれないように、SSSランクのモンスターは誰にも制御できない。ただ、唯一正しい対処法はその進路から外れるのみ。

 今回のSSSランクのモンスターの進路はこの王都を確かに通っている。なので、王は遷都するため一部の兵士と冒険者ギルドに足止めを命じたのだ。


 冒険者のCランク以上は、このような緊急依頼に強制参加であり脱走や逃亡は指名手配犯として追われる身となる。

 つまり、国から追われるか自然災害の肉壁になるか二つに一つなのだ。


 だからこそ、ロイヤリティの三人は自分たちが大好きなリゲルを追放するという裏技を使い逃がした。無論、パーティから追放されたぐらいでは冒険者のランクは消えない。曲がりなりにも盗賊としてはSランクの実力を誇るリゲルを生かすために三人はギルドマスターに協力を仰いだのだ。


 ◻️


「え? ……そ、それ本当ですか?」

「ええ、本当です」


 感情の篭もっていない瞳で受付嬢のリーシャさんは俺を見つめる。

 動悸が激しく、呼吸も荒くなる。


「貴方はパーティメンバーへの強姦未遂のため冒険者のランクを剥奪されました」

「そんな……! リーシャさんは本当に俺がそんなことをしたと思っているんですか!?」

「この件はギルドマスター預かりとなっています」

「ギルドマスター!?」


 ギルドマスターは冒険者を束ねる存在。

 つまりは冒険者の王とも言える存在であり、その名前は冒険者にとって本物の王と同等に重い。

 そのような存在が冒険者に向けて資格剥奪と言えば最早避けられない事実となって冒険者の肩に伸し掛るのだ。


 なんで、俺がありもしない罪で冒険者を辞めさせられるんだ。

 なんで、なんでなんでなんでなんで!!


「絶対に……おかしい……! リーシャさん信じてください。俺は何もしてないんです! そうだ! ギルドマスターに会わせて下さい!」

「ギルドマスターは現在外出中となっています」


 突き放すような対応をされる。

 俺は聞くべきじゃない、聞かない方が良いことを聞いてしまった。


「なんでそんな……リーシャさんなんで他人行儀なんですか……? 」


 言ってから後悔した。

 答えは一つしかないからだ。

 いつも明るく元気で優しくしてくれる彼女が感情も宿さないで事務的に対応するなんて、そんなのは。


「私は貴方のことを何も信じていません。女性として軽蔑します。二度と冒険者ギルドに来ないでください」


 もはや笑えもしなかった。


 ◻️


 彼が絶望した顔で出て行った。

 我慢しようとしたけれど、ぽろりと涙が一筋流れたら、止めようがなかった。


「うっううっうっ……リゲルさぁん……!」


 いつ見ても明るい顔で私の名前を呼んでくれる彼のことが大好きだった。

 初めて幼馴染皆で冒険者になりに来てくれた時は心配だったけど、どんどん強くなってその魅力に惹かれて行った。初めてランクアップした時のお祝いにも呼んで貰えて私がどれだけ嬉しかったか彼は知らないだろう。


「なあ、あんたまでここに留まることはねえと俺は思うぜ」


 聞き覚えのある野太い声が聞こえ、私は顔を上げる。

 するとそこには、ギルド中の冒険者たち心配そうな顔で私を見ていた。

 普段は好戦的な彼等だが、こういう時ばかり優しい顔をしてくれる。それを見て私は胸にほんの少し温かみが戻るのを感じ、涙を拭い笑みを浮かべた。


「私以外の受付嬢は皆逃げちゃいましたからね。私ぐらいは残りますよ! 」

「だ、だがよお。俺らと違ってあんたは別に強制されてないんだぜ?」

「それでもです! 私も冒険者ギルドにの仲間の一人です。仲間も一緒に死ぬことぐらい選ばせてください。私の命の使い方は私が決めますよ! マッシュさん」


 私の言葉に太い眉を下げて短髪の頭を掻きむしってマッシュさんはため息をつく。


「本当に昔から頑固だなあ」

「それだけが取り柄ですので」

「……よっしゃ! てめえ等! 俺らのやるこたぁ自爆特攻だがよ。足止めとは言わねえ、どうせならSSSランクのモンスターぐらい倒してみようじゃねえか!」


 マッシュさんは振り返って私とマッシュさんのやり取りを見ていた冒険者たちは各々の武器を掲げて雄叫びを上げた。


 自分たちを奮い立たせるように、冒険者としての生き様を全うするかのように。

 彼らの声でビリビリと揺れる冒険者ギルドの中で私はリゲルさんを想う。


 リゲルさん、どうか幸せに。

 本当に愛していました。


 ◻️


 街をとぼとぼと歩く。


 俺が今までしてきたことはなんだったんだろう。

 俺が今まで紡いできた絆はなんだったんだろう。


 悔しくて苦しくて、前なんて向けなかった。

 石畳を俺の涙が濡らす光景しか見えなかった。


 どんっと人にぶつかり尻もちをつく。


「ぁ……す、すいませ」

「てめえ!どこ見て歩いてんだ!? ……あ? お前リゲルか?」


 俺の名前を呼ぶその声に顔を上げると、大柄な男がそこに立っていた。


「グライヴさん……?」

「は、なんだお前情けねえ面だな」


 いつも通り口が悪い偏屈な武器屋の主は俺を見てくれていた。

 だが、それも次の一言で裏切られる。


「そうだ、お前自分のパーティーメンバーを無理矢理犯そうとしたらしいじゃねえか」


 俺の首元を掴み、無理矢理立たせ敵意剥き出しの目を向けた。俺よりも二回り以上も大きいグライヴさんに掴まれて足が少し浮く。


「ぁ……ぐぅ……は! お、俺はやってない……!」

「はっどうだかな!」


 そのまま顔を殴られ、地面に倒れる。

 なんで、なんでなんで俺がこんな目に……?


 ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。


「ふざけんな!! 俺は何もやっちゃいない!! なんでなんで!誰も信じてくれないんだよ!! 誰か俺を信じてくれよ!!」


 起き上がってグライヴに掴みかかろうとすると頭に石を投げられる。どろりと額から血が流れて、投げられた方向を見るとそこにはグライヴさんの妻のイシスさんが立っていた。


「私の夫に何するつもり!?」


 また、その目だ。敵意剥き出しの目。

 心臓の辺りがきゅうと痛くなる。過呼吸になり、俺は気がつけば逃げ出していた。


 親父同然だったグライヴ、母親同然だったイシス。

 あの優しさは、俺に向けてくれた優しい瞳は無かった。


 街中が俺の敵になっていた。


 魔法薬でお世話になっていたダン爺さんも走るを俺を見かけると罵倒を放ち、杖を投げてきた。

 パン屋のマリーおばさんも俺が好きだと言ったパンを踏みつけた。


 必死の思いで街の外に通じる南門に辿り着くと、門は何故か閉じていた。

 俺は門の前に立っていた衛兵のサムに縋り付くように助けを求める。


 正義漢で俺の友であるサムなら、そう淡い希望を抱いてしまった。


「サム……サム……お前も聞かされていると思うけど、信じてくれ……俺は何も……」

「俺に話しかけるな!犯罪者!!」


 その希望は容易く絶望に代わる。

 腹を蹴り飛ばされ、一瞬宙に浮いて地面に叩きつけられた。

 息が出来なくなる。鎧を纏ったサムの蹴りはそれほどの衝撃があった。


「お前みたいなゴミの友だったなんて虫唾が走る! 今すぐ俺の前から消えろ!」

「ひっ……分かった……分かりました。消えます、消えますから門を開けてください」

「誰がお前のために門を開けるか! 北門にでも行ってろ! さあ、行け!消えちまえ!」


 俺はかつて友だった男の言葉にさらに涙が溢れた。

 ボロボロの体を引きずるようにして、サムから逃げる。


 そして俺は人混みに紛れてこの街から逃げ出した。


 ◻️


 手に残る嫌な感触。

 怯えた目。


 息子同然のリゲルを傷つけた罪が俺に重くのしかかっていた。


「やめて、お願いだからやめてあなた!」

「あ?」


 俺に縋り付くイシスの声で我に変える。

 指がイカれた方向に曲がり、血を吹き出していた。

 それでも嫌な感触は残っていて、俺はそれを拭おうと只管石畳を殴っていたようだ。


「なあ、イシス俺はよう」

「うん」

「子供に報われなかったからよ、リゲルを本当の息子のように思ってたんだ」

「うん……うん……」

「明るいあいつの顔を見てるとよ、なんだか元気が湧いて、そ、それでよ」


 涙がとめどなく溢れ出る。

 イシスもないているようだった。


「真剣な顔を……見るとよ、こいつも成長したなってよ」

「うっ……ひぐ……ゔん」

「俺が誇らしくなっでよ。俺は、俺は息子にあんな目をさせちまった!!!!!!!!」


 不器用な自分への悔しさに耐えかねて、石畳もう一度殴る。

 何も変わりゃしねえ。


「リゲルちゃんは……優しいから仕方ないわよ。仕方ないのよ……!」


 子供が産めない体であるイシスは俺以上にリゲルに対して世話を焼いていた。それなのに、俺はイシスに石を投げさせてしまった。

 俺だけで終わらせられなかった。ダン爺もリゲルを孫のように愛していた。マリーもリゲルのパンを食べる美味しそうな顔に満足そうに笑っていた。

 それなのに、俺がふがいねえばかりにリゲルに暴行を加えさせてしまった。


「ごめんな、ごめんなイシス」


 リゲルを逃がす話を聞かされてから、俺はガイの坊主共からある一つのことを頼まれていた。

 それは"リゲルに未練を残させないこと"だ。


 リゲルは底抜けに馬鹿で優しい奴だから、助けに戻ってきちまう。だから、傷つけて遠くに行かせることになった。


 これは俺だけがやるはずだったのにな。


「リゲルはこれから平気だと思うか?」

「リゲルちゃんは、きっと平気よ。あの子は強いもの」


 そうだな。リゲル。

 俺の事を恨んでくれていい。憎んでくれていい。

 どうか生きてくれ。


 俺らはこの街に産まれてこの街で死ぬことを決めた。


 どうか、願いが叶うのならば俺たちのことは忘れてくれ。


 ◻️


 友を蹴ったこの足は切り落としてしまいたいぐらい煩わしい。


「隊長大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ」


 部下の声にそう返答したが、大丈夫なわけがなかった。

 酒を酌み交わし、夜通し騒いで俺が困った時は全力で助けてくれるような奴がリゲルだった。

 悪友でもあり仲間でもあり親友だった。


「これであいつは南には行かないだろう」


 南からは天災がその歩みを進めている。

 だから、リゲルをそっちに行かせないように無理に門を閉めてもらっていた。


 俺がガイたちから言われていたことは"南門は開けるな"ということだけ、それが達成出来てよかった。


 これであいつも大丈夫だ。


 ふと脳裏にアイツとの会話が蘇る。


『サム、俺は世界一の冒険者になる。見とけよ』

『ははは! 大きく出たな? なら、俺は世界一の衛兵にでもなろうかな』

『世界一の衛兵ってなんだよ! 』

『世界一の衛兵は衛兵だ。俺はこの街で産まれてこの街を守りながら死ぬ。それが出来たら世界一の衛兵だと思ってるぞ?』

『はあ、自分の命より街を守るってことか。かっこいいな』

『くっくっく、そうだろ?』


 しょうもない会話だ。

 しょうもない会話だが、涙が一粒だけ零れた。


 リゲル、俺は一足先に世界一の衛兵になるぜ。

 お前も世界一の冒険者になれよ。


 上で待ってるからな。最高の友よ。


 ◻️


 ーーー

 ーーーーーー

 ーーーーーーーーー数週間後。


 俺は手に掴んだ号外を読んでいた。


 天災の通り道となった街が崩壊。

 時間稼ぎに戦った冒険者が全員死亡。

 街の衛兵や街民達も一部を除き大勢が死亡。


 天災がやってきたのは俺が逃げ出した二日後のようだ。


「くっは! はははははははは!!!! ざまあみやがれ!」


「天罰!天罰だ! あーはっはっはっはっはっ!!!」


 何故だか、あの日から枯れたと思っていた涙が流れ出してた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 他の方も指摘されていた様に、リゲルは気付いたのでしょうね。 それでも理不尽な仕打ちを受けた事実は消えない。 自殺すれば、みんなへの正真正銘の「ざまあ」になることにもリゲルが気付いたらちょっと…
[一言] この手の話には弱くて涙しながら読んでしまいました。 リゲルは今後どうなるのか気になってしまいます。 とても面白かったです。
[一言] なんかあれだなどうしようもない災害(超巨大隕石、巨大竜巻、巨大津波みたいな人類が太刀打ちできない)を 黙ってみることしかできないのに 御上が自分たちが遠くへ逃げるための時間稼ぎを 大義名分と…
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