本当の王子様は。
終わりです。
ちょっと…、どころかすごく微妙なラスト……。
よろしくお願いします。
王子の名は、フィルディアと言いました。
近日結婚するお相手は、隣国のお姫様でした。とても綺麗な人です。
「お久しぶりです。リオットリア様」
リオットリアと言うのはリオの正式な名前らしく、国に入るなり、王族の一人として呼ばれていました。
リオと、お姫様は、知り合いで楽しげに話しています。それを、アクアは少し離れた場所で見ていました。
「すっかり海に慣れてしまわれたのですね」
「そこまで、海が苦手に見えていたのですか…」
「それはもちろんですわ。私が助けた後、海に近づかれなかったですもの。しかし、今は、貿易船で海を航海していらして…」
「海は嫌いではないのですよ。むしろ、好きです。愛しい人が住んでいますから」
いつもは少し口の悪いリオなのに、隣国の姫が相手と言うことで、王族の一人として接していました。
話している内容はあまり聞こえませんが、アクアは少し悲しくなりました。何故なのでしょう?
「アクアちゃん? どうかした?」
隣にいたノーラが、アクアに声をかけました。
「……」
ふるふると首を振り、何でもないと伝えました。
ノーラは、苦笑して口を開きます。
「あのお姫様はね、昔、海岸に倒れていたリオを見つけて、助けた人なんだよ。確か、リオの誕生日の翌日かな…」
アクアは驚いて、顔を上げました。
海岸に倒れていた…?
アクアが助けた王子様のお話と似ています。その時も、一人の少女が王子様を助けました。
アクアが誕生日の日に、王子様もパーティーをしていたので、王子様も同じ誕生日なのかと考えました。だから、誕生日の翌日に王子様は少女に助けられたのです。
とても似ています。
アクアは、ノーラを見上げたまま、考え込みました。
「…アクアさん」
ふと声をかけられました。
声の主は、王子様…フィルでした。
フィルは、アクアとノーラの近くに歩いてきました。
「…少し妬けてしまうね。彼女が、リオと話しているところを見ると。アクアさんもそう思うだろう?」
フィルはアクアにそう言って、話すリオとお姫様を見ました。
アクアは、そんなフィルの横顔を眺め、不思議な気持ちになりました。
アクアは、この人を“知りません”でした。
結婚式の日になりました。
アクアは、あれ程好きだった王子様に、そこまでの執着を持つことが出来ませんでした。
王子様に対する愛は、冷めてしまったのでしょうか。
しかし、王子が結婚してしまうと、アクアの心臓が砕け、泡となって死んでしまうのです。
正服に着替えたリオが、アクアを迎えに来ました。
アクアは、悲しくなりました。
王子が結婚すると、アクアはリオに会うことも出来なくなるのです。リオのそばに居ることも出来なくなるのです。
急にいなくなるアクアを、リオはなんと言うでしょう。
青い瞳を揺らすアクアに手を伸ばしたリオは、アクアの金の髪に、珊瑚の髪飾りをつけました。
それは、いつの日か、アクアが王子の胸ポケットに入れた髪飾りでした。
アクアは、リオを見ました。
「俺の十五歳の誕生日に、人魚がくれたプレゼント」
「……」
リオが微笑みます。
「助けてくれてありがとう、アクア」
ありがとうございました。
王子様が、リオっていう終わりですね。
リオが何故、貿易船の船長をしているのかと言うと、
船に乗って海を航海していれば、いつか海に住むアクアに会えるかもという希望を持っていたからです。
結果、人魚ではなく人間のアクアに会いましたが。
その後、アクアは、リオの貿易船で仲良く過ごして行きます。
最初から、両思いだったんです。
でも、好きな人がわからないアクアって、どうなんですかね…。