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海の上の出会い

ここから、ifです。

登場人物の名前、人魚姫の名前は、作者の造り物なので、本家とは違います。


よろしくお願いします。

 

「…おい、起きろ、女」


 低い声が聞こえました。

 アクアは、そっと目を開けます。

 目の前に、男の顔がありました。王子と同じ、黒髪をしていました。


「…っ…!」


 誰? と、聞こうとして、アクアは声が出ないことに気づきました。

 薬を飲んで意識を失い、海面へと上がったアクアは、通りがかった一隻の船に助けられていました。


「どうした、女」


 男は、不機嫌気味にアクアに声をかけ、垂れかけた、後ろに雑に結っていた黒髪を、後ろに払いました。

 アクアは、状況を理解できず、男の顔を見たまま混乱しました。


「あ、船長。女のコ、起きたんすか?」


 そこへ、別の男がやってきます。


「…あぁ」


 船長と呼ばれた黒髪の男は答えて、アクアを見ました。

 アクアは、キョロキョロと辺りを見渡します。アクアが居たのは、ベッドと机があるだけの小さな部屋でした。


「…女。海に流されていたが、どこから来た?」

「……。…ん」


 黒髪の男の質問に、アクアは口を指で示して、首を振りました。

 それを見て、男はしばらく悩み、口を開きました。


「…話せねぇのか。…まぁ、良い。とりあえず、来い」


 黒髪の男は先程やってきた男をドアから押し出し、アクアを呼んで、部屋を出ようとしました。

 慌てて、起き上がり、アクアはベッドから降ります。…が。


「…ッ!!」


 アクアの足が床についた途端、激しい痛みがアクアの足を襲い、思わずアクアは座り込んでしまいました。

 それに気づいた男は、アクアを振り返ると、小さく舌打ちしました。


「…更に、歩けねぇと…?」


 渋々と言った様子で、男は、アクアの体に手を回します。


「…?」

「痛いのか? 船医に診せてやるから、とりあえず、来い」


 アクアの膝裏と背中に手を差し入れ、男はアクアを横抱きに抱き上げました。

 思わず、アクアの顔が赤くなりました。

 男は、軽々とアクアを抱き上げたまま、部屋の外へ。部屋の外は、海の潮が薫る船の甲板でした。

 空は、青く澄み渡っていて、白い渡り鳥が飛んでいます。船は、空の青より一段と深い青をした海の上を進んでいます。

 甲板には、賑やかな声が響いていて、たくさんの男の人達が楽しげに仕事をしていました。

 甲板を通り抜ける途中、男は、船長! と敬われ、アクアは男の人達に、元気になったんだな! と声をかけられました。

 何故か、すごく嬉しくなりました。

 男は、一つの扉の前で足を止めました。


「…ノーラ。女が起きた」


 男がそう言うと、扉が開きました。

 出てきたのは、優しげな顔をした男の人です。


「起こしたの間違いでしょ。まぁ、どうぞ?」


 男の人は、柔らかな笑みをアクアに向けて、中に入るよう促しました。

 男は、遠慮なく部屋の中に入り、置いてあったベッドにアクアを座らせました。


「こんにちは、お嬢さん。体の具合は、どうかな?」

「?」


 男の人は、アクアに声をかけました。

 しかし、体の具合等を聞かれる理由がわからなかったアクアは首を傾げました。


「…喋れねぇし、歩けねぇ」


 椅子に腰掛けた男が、そう言いました。


「そう、リオ。 …ごめんね、僕はこの船の船医、ノーラっていうの。一昨日、君が漂流しているのを見つけて助けたんだよ。あ、助けに行ったのは、そっちの船長、リオだけど」


 ノーラと名乗ったその男の人は、男を見てそう言います。リオと言う名の男は、ふいっと顔を背けてしまいました。


「漂流してたし、意識も丸二日なかったから、体の具合が気になるんだけど、大丈夫?」

「…ん」


 アクアは、ノーラの問いに、頷いて答えました。

 すると、ノーラは嬉しそうに笑いました。


「良かった。…名前を聞きたいんだけど、書いてくれる?」


 そう言って、ノーラは紙とペンを持ってきました。

 アクアは悩みました。

 宮殿にいた時も、文字はありました。でも、外の世界と同じなのでしょうか?

 不安になりながら、アクアは文字を書きました。紙を、ノーラに渡します。


「え…? これって、古代文字…だよ? ちょ、ちょっと待っててね」


 外の世界では、もう使われていない文字のようです。

 ノーラは、本棚から厚い本を取り出し、パラパラとめくりました。


「…足は大丈夫なのか?」


 その間に、リオがアクアに問いかけました。

 足は、歩く度に、ナイフで突き刺されるような痛みを伴うと、魔女が言っていました。

 問いになんと答えれば良いのかわからず、アクアは困ってしまいました。


「…アクア。で、合ってる?」


 その時、ノーラがアクアに聞きました。

 名前を呼ばれ、アクアはノーラの方を見ました。


「あぁ、合ってた? さて、じゃぁ、アクアちゃん。足は、元から歩けないの?」


 本をパタンと閉じ棚に戻したノーラは、座るアクアの前に膝をつきました。

 また、答えにくい質問をされてしまいました。

 この足は、尾だったのです。泳ぐことは出来ても、歩くことはしていません。

 アクアは、ふるふると首を振りました。

 痛みを耐えれば、歩くことはできるのです。

 先程のように、誰かに抱き上げられて移動するのは申し訳ないし、この人達に迷惑はかけたくないとアクアは思いました。


「そう…。じゃぁ、漂流している時とかに、怪我して神経痛めたのかな…。でも、何も傷ないんだよねぇ…」


 ノーラは首を傾げました。

 アクアは、本当のことを言えなくて、申し訳なくなりました。


「…治るのか?」

「…原因によるよ、リオ。でも、数日は歩かせない方が良いかな。大丈夫かい、リオ?」

「あぁ、大丈夫だ。とりあえず、今日はもう良いか?」

「うん。また明日、来てくれる? 体調が悪くなるかもしれないからね」

「そうか」


 リオが、椅子から立ち上がり、アクアを抱き上げました。

 アクアの長い金髪が、ふわりと舞いました。


「またね、アクアちゃん」


 ノーラがそう言って、部屋から出て行く二人を送り出しました。




 この船は、貿易船のようでした。

 船長であるリオは、少し口が悪いですがアクアにとても優しく、船医のノーラは、アクアの体をとても心配してくれました。乗組員の人々もアクアに気さくに話しかけ、アクアは船の一員になったようでした。


 しかし、早く王子を見つけなくてはいけません。どこに、王子の住むお城があるのか、海の上からではわかりませんでした。

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