Silent Forest(6)
「まず、スキルポイントは初期の配布分で10ポイントある」
「うん」
セーフティエリア内で、ナナへのプチ講座が始まった。
「レベルはまだ1だよな?」
「もちろん。ログインしてから街歩いてただけだったから」
「そしたら正真正銘、ナナのスキルポイントは現在10ポイントということだな」
「そのスキルポイントを振り分けてくことで、自分はいろんな能力に目覚めるって感じ?」
「そうそう。RPGやったことあるならわかると思うけど、そういったゲームで出てくるスキルと大差はない」
なるほど、大方わかった。
とナナは頷き、身を乗り出す。
「スキルポイントは限られてるから、おのずと取得するスキルも限られる。レベルアップ毎に1ポイントもらえるけど、その恩恵を感じられるのはおそらく20から30レベルまでだ。このゲームはレベルが上がり難いから」
だから――と高須は言葉を区切り、
「この最初の10ポイントの振り分けが命運を分けると言っても過言ではないわけだ」
「……」
「ま、まあそんな堅苦しく考えなくてもいいんだけどね、ゲームだし。やりたいようにやるのが一番」
なんとなく固い雰囲気になってしまったのでフォローをいれたつもりだが。
「それはハナっからわかってるわよ。わかってるというか、そういう気でいる。だけど、それでもやっぱりできるだけ効率的にいきたいじゃない? だからこうしてソラに聞いてるんだけど」
「そっか。よかった」
杞憂だったようだ。
ナナは高須と同じように、可能な限り効率を求めているようだった。
「話を戻すぞ。そこで、だ。まず、ナナの目的を教えてくれ。このゲームで何をしたいのか、どうなりたいのか。大雑把でもいいから、進む先を知っておきたい」
「……うーん」
顔を伏せるナナ。
「鍛冶をやりたいって言ったよね? でも実際素性は盗賊。普通鍛冶やるならドワーフとか、ある程度鍛冶に長けた素性を選ぶと思うんだ。だからなんか他に目的があるって踏んでるんだけど」
「……うん、あるよ。正直、鍛冶でも錬金術師でもよかった。笑わない?」
不安げに赤い瞳を向けるナナから、どことなく悲壮感が漂う。
「笑わないよ。というか、むしろそういうプレイスタイルは全然アリだし、いっぱいいる」
ナナの発言から、ある程度予想ができた。
「金集めだな?」
ナナの驚いたような表情で、高須は確信へ至る。
「鍛冶で武器や防具を作って売る。その傍ら盗賊として盗みも働いて金を得る」
「……うん。変じゃない?」
「全然。これっぽちも」
高須は言い切る。
前作で悪逆非道な盗人プレイをしていた友人がいたし、それを咎めることはゲームプレイに反する。
ゲームなんだから、好きにすればいい。
結局はここに終結してしまうのだが、それでいいのだ。
そんな考えを話すと、ナナはホッとしたように頬を綻ばせた。
「じゃあ、スキル、どうすればいい?」
「スキル取得画面出して」
高須はナナのウィンドウを見ながら、スキルの取得をさせる。
よくわからないといった風のナナだが、高須に何か考えがあるのを感じ取ったのか、特に言及することもなくスキルを入手していく。
合計4つのスキルを入手し、ナナのスキルポイントは0になった。
「これで行くぞ」
不安顔のナナに、説明は歩きながらする、と告げ、
「まずは森でゴブリン狩り。そのあと――」
おそらくエリアボスのいる。
「サイレントフォレストに入る」