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Second WorldⅡ  作者: ELMOA
第1章
6/28

Silent Forest(5)

少女はナナと名乗った。


年のころは15,6といったところか、こげ茶でセミロングに切り揃えられた髪を靡かせ、こちらを覗く瞳は赤色をしている。

防具は革の軽装で、黒を基調とした造り。

腰に携えた武器は二刀のダガー。

おそらく、盗賊だろう。


今更ながら、SWⅡにログインしてから初めてのプレーヤーとの遭遇だった。


「いつからそこにいたんだ!?」


「いつからって、ずっといたわよ。ニヤニヤしながらあんたがここに入ってくるのも見てたわよ」


ピョンと木手すりを飛び越え、高須の正面に座るナナ。


「で、ソラ。あんた錬成師なんでしょ?」


「そうだナナ。俺は錬成師だ」


「いきなり呼び捨て?」


「そっちだってそうしただろう……」


「まあいいわよ。それでそれで、錬成師ってことは武器を強くできるんだよね?」


瞳をきらきらとさせて揚々と体を乗り出してくる。


「できる……はず。なんせ俺もまだ錬成したことがないからな。これからやってみようかと思って」


「よーし!じゃああたしが実験台になってあげる!はいこれ、あたしの武器ね」


有無を言わせずにナナはダガーを2本、渡してきた。


「俺に拒否権はないんですか!? そして不用心に武器を差し出すんじゃない。俺が悪党だったらすぐに持ち逃げされてたぞ」


「あんたに拒否権はないわよ。大丈夫、これでも人を見る目はある方だから。あんたは悪党じゃない」


嬉しいような悲しいような。


高須は渋々といった様子で武器を受け取り、錬成を始める。


錬成鏡をテーブルに置き、その前にエレメントを置く。


まずは力のエレメントと毒のエレメントを付与してみる。

エレメントの付与は、エレメントの個数と質、錬成師のスキルレベルによって効果と付与成功率が変化する。


エレメントは鏡に吸い込まれたので、ダガーを一本鏡の前に置いた。


すると半透明のウィンドウが高須の視界に表示された。



■錬成


錬成武器

ダガー[威力(斬撃):23]―STR+3 CRI+5


エレメント

・力のエレメント×10

 [STR+1付与 成功率100%]

・毒のエレメント×1

 [状態異常効果:毒+1付与 成功率50%]



高須は「錬成!」と言葉を放つ。


すると鏡から怪しげな光が漏れ、それはダガーへと吸収されていく。


すぐさまピピコンッと電子音が鳴り、錬成終了を告げる。


高須は武器の詳細を見てみた。



ダガー[威力(斬撃):23]―STR+3(+1) CRI+5

特殊効果:毒



「おっ、成功だ!」


「ほんとに!? どれどれ?」


ナナは高須の隣に座り直し、高須のウィンドウを覗きこむ。


「毒って付いてる! ん、でもSTRの補正が微妙じゃない?」


「くっ……力のエレメント必要最少数が10個からなんだよ。1時間狩ってやっと40個程度入手したからさ、早々気前良く使えない」


これでもスキルの補正で多く入手した方だ。


「わかった。じゃあちゃんとエレメントは後で返すから、やってよ」


「返すって、そもそもエレメントは専用のスキルを取ってないとドロップさえしないんだよ。見たところナナは盗賊だろ? エレメントなんて必要ない」


ぶぅと頬を膨らませ、あからさまに寂しそうな表情をするナナ。


「……武器を強くしたい理由でもあるのか?」


ナナはチラッと視線を合わせた後、コクリと頷く。


「いっぱい敵を倒して、いっぱい素材を手に入れたいの」


「素材って。もしかして盗賊やりながら生産職も兼ねるのか?」


「うん。武器を作る。鍛冶ってやつ」


なるほど。


強い武器が欲しい理由はわかった。


だが、なんで盗賊をやりながら鍛冶をするのか、その理由はまだわからない。


まあ、でも。


プレイスタイルなんて人それぞれだ。


そこにどうこう他人が突っ込んでいいわけがない。


そうか。


そうかそうか。


「わかった」


「え?」


ナナは尚も寂しげに薄めた瞳をこちらに向けるが、少しばかりの希望のこもったしっかりとした眼差しだった。


「作るよ、現時点でのできる限りの強い武器」


「ほんと!? ほんとに!?」


「本当だ」


やったー! と、わかりやすいほどに喜ぶナナ。


「ただし」


と、高須は一息。


「強くした武器で敵を倒して、そのうち鍛冶ができるようになったら俺に何か武器を作ってくれないか?」


「いいよいいよお安いごよう!」


半ば諦めというか、期待はしていないけど。


高須はつくづく自分は他人に甘いな、とため息をつく。


力のエレメントを30個、麻痺のエレメントを15個、まだ付与していないダガーに使用し、毒のエレメント25個を先ほどの付与済みのダガーに使用した。



■錬成


錬成武器

ダガー[威力(斬撃):23]―STR+3 CRI+5


エレメント

・力のエレメント×30

 [STR+5付与 成功率100%]

・麻痺のエレメント×15

 [状態異常効果:麻痺+30付与 成功率80%]


錬成武器

ダガー[威力(斬撃):23]―STR+3(+1) CRI+5

特殊効果:毒


エレメント

・毒のエレメント×25

 [状態異常効果:毒+40付与 成功率80%]




結果は上々。



ダガー[威力(斬撃):23]―STR+3(+1) CRI+5

特殊効果:毒+40


ダガー[威力(斬撃):23]―STR+3(+5) CRI+5

特殊効果:麻痺+30



初期に出来上がる武器としては中々な代物になった。


ついでに、高須のスキルレベルも上がった。



■スキルレベルアップ

【駆け出し錬成師Lv.2】 → 【駆け出し錬成師Lv.3】

 ・錬成成功率上昇値アップ

 ・付与効果値上昇値アップ



「はい、これ」


高須は2つのダガーをナナに渡す。


「ありがと! ……わ、すごい、毒と麻痺の値が上がってる! STRも二本目のは最初のより高いね」


「結構強いと思うぞ。間違っても売らないでくれな? いやまあもうあげたものだし、好きにしていいんだけどさ」


「売るなんてまさか。よし! じゃあ早速狩りに行こう! 一緒に!」


「え、いや、俺は――」


「スキルもまだ未収得だし! というかあたし、このゲーム自体初めてなんだよね、教えてよいろいろ」


「あー」


やっぱり。


乾いた笑みを、思わずこぼした高須だった。

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