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Second WorldⅡ  作者: ELMOA
第1章
4/28

Silent Forest(3)

フェアリアス地方は土地の8割が森林で、豊かな自然に溢れている。

ほとんどの森林では敵が湧かず、安全に自由に散策ができるようになっている。

その反面、敵が湧く森林地帯は一般人の進入が禁止されているほど強力なモンスターが存在しているようだ。

その分その森林地帯で得られる資源は貴重なものが多いが、現在の資源調達で事足りているようで無闇に危険地帯へ入っていく者はいないらしい。


そんな森林で溢れた土地で得られた多くの資源は、フェアリアス地方唯一の街であるアリス街に集まる。


アリス街。

木材と水、薬草と果実の街である。


アリス街は街を横断するように森林からの川が流れていて、その川に沿うように多くの店が連なっている。

そしてその多くの店を囲うように、NPCたちの住居が建ち並んでいる。

もちろんそのどれもが木造建築だ。

その中でも街の中心に佇む巨大な建物がひときわ目立つ。


『アンジュ製林館』。

運ばれてきた木材を精錬・加工・販売・輸出している建物だ。

木造のはずなのにあまりにも煌びやかなツヤを放っており、近くから見ても金属ではないかと疑ってしまうほど。


高須はアリス街に入った後、通りで出会うNPCからフェアリアス地方やアリス街の話を聞きながら、どこにいても目に入るこの建物――アンジュ製林館を目指したのだ。


アンジュ製林館の入り口前にベンチが設けてあり、高須はそこに座り一息ついていた。


「いい街だなぁ……。街全体木造建築が多いせいか、そこはかとなく木の独特な匂いがする。なにもかも忘れられるような、不思議なリラックスフローバーだよなぁ……はは」


高須は頭を抱えていた。


理由は単純明快。

先ほど倒した謎の真っ白な浮遊体の経験値が大きすぎたことだ。

確かに天使の加護による例の蛇弓破炎の威力が初期に得られるスキルとしては数値がおかしかったのもそうだが、チュートリアルの天使曰くレア加護らしいし有り得ない話でもないな、と。


しかし、しかしだ。


ただの街道で湧いてるいちモブを狩っただけで、レベルが1から24まで上がるのは、おかしい。

仮にレイドボス(複数パーティ攻略前提で作られた、破格のステータスを持ち合わせたボス)を倒しても、そこまで上がることはないのだ。


前作ではなかったのだ。


では今作からそういったモブも湧くようになった?


ない……とは言い難かった。


なんたって、前作で高須は『威力50,000超えの石ころ』や『HP回復量10,000超えの薬草』を錬金したことがあるのだ。


『獲得経験値:500,000』とか出てきても、不思議じゃない気がする。


「むしろ理由はこれであってくれ……俺はたまたまそんなレアモブと出会い、初期では倒し難いはずだけど蛇弓破炎で倒せた。だから一気にレベルが上がった」


高須は幾度かの思考の後、そう結論付けた。理由がわからないとどうしてもモヤモヤして他のことに手が付けられない。


そんな性格だから、故に、無理矢理にでも理由を付け結論に導く。


これでいいのだ。


「んじゃ、まずは気持ちを切り替えてスキルの習得といきますか。さーて、何から取るべきか」



『武具錬成師』は特殊な素性であり、存在である。


武器ができてプレイヤーの手に渡るまでの道のりは単純で、例えば冒険者がフィールドで敵を狩り素材を入手。

その素材を利用して鍛冶屋が武器を作る。

その武器が市場に流れる。


このような流れだ。


では武具錬成師はどのタイミングで必要となるのか。


鍛冶屋が武器を作る。

武具錬成師が武器に能力を付与する。

その武器が市場に流れる。


ここだ。


つまり、武具錬成師とは出来上がった武器に対して力を与える者なのだ。


自身の魔法の力を使用し、武器に特殊な力を付与する。


そしてその『付与』という作業は、敵がドロップする通常の素材では行えない。

武具錬成師のみが使えるスキル『成素吸還』で、倒した敵から得られる『エレメント』を使用することで武器に付与ができる。


「ほほう……」


高須は自身の素性武具錬成師の詳細を読み解き、ひとつの解答に辿り着いた。


「生産職なのに、積極的にフィールドに出ていかないとだめだ。しかも取得スキルが必然的に多くなるよな……」


今更ながら、自分の素性をチュートリアルの天使ちゃんに任せたことを後悔した。

ただただやりたいことを伝えたら武具錬成師を勧められ、特に言及することなく決めてしまったのだ。


しかし。


「まあでも、やるしかないよな」


実際問題こうなってしまったのだから、仕方がない。


一度伸びをして、メニューからスキル欄を開いた。


現在のスキルポイントは初期配布の10とレベルアップで得た24の合計34。


「必要なものは取っていくべきだな。……にしても、相変わらずスキルの量が多すぎるんだよなぁ」


SWの数あるウリの一つが、多種多様のスキルだ。


ないものを探す方が難しいと、かつてのプレイヤーは度胆を抜いていた。


「まず戦闘は必須だな。後々エレメントの売買で賄えるようになるかもしれないけど、現状では自分で入手するしかないからな。んーと、そうなると……」


高須は検索機能で条件を絞っていき、自分に最適の戦闘スキルを選ぶ。


「錬成師の特性上魔力(INT)とクリティカル(CRI)は上げていかないとだめだから、こうなるよな」



―スキル―


【火魔法の心得Lv.1】[必要スキルポイント:3]


 ~火魔法を使用できるようになる。

 火魔法の威力はINT値と武器魔力に依存。

  

△使用可能魔法△

・火球




【必殺の眼力Lv.1】[必要スキルポイント:3]


 ~攻撃時に発生するクリティカルの確率が上がる。

  


△クリティカル発生確率+5%

 (CRI値によって更に上昇)




【成素吸還Lv.1】[必要スキルポイント:5]


 ~敵を倒した時、エレメントをドロップするようになる。

  武具からエレメントを取り出すことができる。




【錬成の貪欲者Lv.1】[必要スキルポイント:5]


 ~入手するエレメントの数が増える。


△入手エレメント増加量+20%




【駆け出し錬成師Lv.1】[必要スキルポイント:1]


 ~錬成師としてのあらゆる行動にプラス補正がかかる。


△補正

・錬成成功率上昇

・付与効果値上昇




◆スキル枠『5』→『0』

 エクストラスキル枠『0』→『0』


 ――装備スキル数5

 ――装備エクストラスキル数1


◆スキルポイント『34』→『17』


 ――消費スキルポイント17

 ――残りスキルポイント17




「ふう」


現時点でのスキル枠5つを全て埋めた。


火魔法で敵を倒し、エレメントを多く入手する。


そんなスキル構成。


実際に錬成する時に、再度錬成方面のスキルを入手する予定だ。

スキルはスキルポイントがある限り無限に入手できるが、実際にそれを装備できるのは現時点では5つが限界。

そしてそのスキルは自由に付け替えができる。

なので今回は戦闘モードのスキル構成にしたのだ。


「スキルの画面開いて気付いたけど、蛇弓破炎はエクストラスキルなんだな」


通常のスキル枠とは別に、特別な条件で増加するスキル枠、それがエクストラスキル枠だ。


エクストラスキル枠にはもちろんスキルが装備が可能であると同時に、この枠にしか装備できないスキルが存在する。


運良く手に入れた蛇弓破炎がその例だったようだ。


「おっし、行くかな」


一通り確認作業を済ませ、高須は狩りに出掛けることにする。


本来なら早速錬成を……といきたかったが、そう簡単にできないのが錬成師。


「街の東側から入ったからそっちは避けて、南側で戦ってみようかな」


ビキビキと、立ち上がる高須の背骨が鳴る。


「蛇弓破炎はしばらく封印しておこう」


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