Silent Forest(2)
「おっ」
気が付くと砂利道の上に立っていた。
周囲は草原で、少し先には森が見える。
どうやら、世界に降り立ったようだ。
高須は再度四肢が動くのを確認したあと、念じることでメニューを開く。
手元に半透明のメニューウィンドウが展開し、指で操作が可能だ。
そこから高須はワールドマップを選択し、現在地点を確認することにした。
―現在地―
大陸名:『ノースアリス』
地方名:『フェアリアス地方』
現在地:【フォレスト街道】
■アリス街まで残り~0.8km
■サイレントフォレストまで残り~2.3km
SWⅡの世界には4つの大陸が存在する。
そしてそれぞれの大陸は数多くの地方で区切られていて、ひとつの大きな世界となっている。
プレイヤーはいずれかの大陸の、どこかの地方の、更にどこかもわからない地点から始まる。
高須は割と当たりを引いた方だろう。
最寄りの街まで歩いて行ける距離だからだ。
前作ではいきなりダンジョンの最深部に落ち、ゲーム開始早々ダンジョン逆走を繰り返したのだ。
苦い思い出に顔を歪めながら、高須は天を仰ぐ。
「さて、どうすっか」
選択肢は二つ。
とりあえず街へ行くか、サイレントフォレストの方面へ行くか。
「んー。まずは街かなぁ。でも戦いたい気もあるしなぁ……。ん?」
辺りを見回していると、サイレントフォレストの方面に何かが動いているのが見えた。
遠すぎてはっきりとは見えないが、真っ白な何かがふらふらと浮遊しているようだ。
「よし、戦ってみるか」
高須はメニューを開き、装備等諸々の現状を確認する。
プレイヤーネーム:ソラ
Lv.1
HP.120
MP.200
ST.100(スタミナ)
空腹度.100
STR/1(+5)
DEX/1
VIT/1(3+1+3+2)
AGI/1
INT/6(2+2+2+2)
MID/1
CRI/6(1+1+1+1)
◆初期ステータスは全て1
◆( )内の数字は武器・防具等の補正値
武器:『短刀』[威力(斬撃):20]―STR+5
防具:(頭)なし
(胴)錬成師のローブ―VIT+3 INT+2 CRI+1
(腕)錬成師の腕輪―VIT+1 INT+2 CRI+1
(腰)錬成師のローブ―VIT+3 INT+2 CRI+1
(脚)錬成師のブーツ―VIT+2 INT+2 CRI+1
アクセサリー:なし
武器アーツ:なし
奥義:なし
スキル:なし
加護:『天使の加護』
武器、防具は初期の装備だ。
アクセサリーはない。持っていないのだから、ない。
奥義も覚えていないから、ない。
武器アーツは、武器そのものに備えられている『技』だ。
武器を使用していくことで武器経験値が増えていき、一定の経験値が貯まると自動で覚えていく。
スキルはまだ設定していない。
スキルポイントというものが存在し、レベルが1上がるごとにスキルポイント1入手できる。
ゲーム開始時、スキルポイントは10あるので、まずはこのスキルを設定する。
が、しかし。
「これだよな、そういえば」
ステータス欄の最下部に佇む、
「加護」
今作から追加された新要素『加護』である。
『加護』
~プレイヤーに唯一無二のチカラを与える者の存在。
「説明的には、俺には天使がついている、ということか?」
高須は続けて『天使の加護』の説明文を読む。
『天使の加護』
~熾天使セラフィムの加護。
■加護効果
・???
■加護スキル
・【蛇弓破炎Lv.1】[属性:黒炎][威力(魔法/呪術):5000]
[必要スキルポイント:0]
~威力はINT値に依存
目標に到達するまで追尾し、到達後は周囲3mを焼き尽くす
戦闘中は一度のみ使用可能
非戦闘時に使用した場合、ダメージは発生しない
「なんだこのぶっ壊れスキル……!」
高須の初期武器である短刀の威力は20。
短刀はSTRとAGIとCRI値に依存し、敵の防御力が仮に0だとしたらおおよそ一撃が50程度だ。
それに対して、蛇弓破炎の魔法威力はINT値の補正は無視しても5000。
高須は早速このスキルを装備する。
すると肩から下にかけての右腕が、怪しく光を帯びた。
真っ黒な光が。
スキル特有のエフェクトだ。
「禍々しすぎるだろ……中二病かよ俺は」
高須は、はるか遠くにいる先ほどの敵に右腕を向ける。
謎の真っ白な浮遊体はこちらに気付いていない。
索敵範囲外なのだろう。
それはそうだ、高須から敵までゆうに300mはある。
しかし高須はターゲティング(敵を注視する行動の総意。敵の情報がわかる)ができた。
普通、索敵スキルや補正無しの状態で、近接職の場合は10m、遠距離職の場合は50mがターゲティングの限界なのだ。
―ターゲット情報―
??? Lv.???
敵の詳細はわからないが、ターゲティングができている。
つまり、魔法が打てる。
ニヤリ。
高須は不敵に笑うと、
「蛇弓破炎っ!」
ゴゴゴゴゴゴ!!!と、右の手のひらから大蛇が現れた。
「うおっ!!」
全長10mほどで一見、龍にも見えるその大蛇は黒い炎を纏いながら、謎の真っ白な物体へ一直進。
甲高い、耳を切り裂くような唸り声が辺りに響く。
キキキキキキィィィィィ……!!!!
唸り声に気付いたのか、はたまた自身に迫る大蛇に気付いたのか、謎の真っ白な物体はこちらを振り向くと一目散に逃げようとする。
が。
ドゴォ!と、無情にも大蛇は敵に着弾。
着弾と同時に爆発を起こし、更に敵の周囲を炎が舞い、黒煙が上がる。
「うっわ!えげつなっ!!」
敵を倒したかは視認できない。
遠いし、煙が舞っているし。
ピコンッ。
しかしそれはレベルアップアラート(レベルアップ時に鳴る自分にしか聞こえない音)で解決した。
倒したのだ。
まあ当然だよな、と高須は苦笑い。
高須は敵に背を向け、最寄りの街である『アリス街』へ歩を進めながら、ステータス振り分けをすることに。
プレイヤーネーム:ソラ
■レベルアップ
Lv.1 → ▲25
HP.120 → ▲480
MP.200 → ▲680
ST.100(スタミナ) → ▲124
■取得アイテム
なし
■取得ステータスポイント 『24』
■取得スキルポイント 『24』
■スキルレベルアップ
『蛇弓破炎Lv.1』 → 『蛇弓破炎Lv.2』
「はっ!?」
謎の真っ白な浮遊体を倒したら、レベルが24も上がった。