Silent Forest
2098年2月19日...
日本時間にして午後1時。
Second WorldⅡのサービスが、全世界で同時に開始された。
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寝起き直後のような、寝る寸前のような。
そんな言いようのない未覚醒状態の意識が、徐々に解けていく。
暗転していた視界も晴れ、眼前に広がるは真っ白な空間。
手が動く、足が動く、全身が、思いのままに動く。
「相変わらずすごいな、SWの世界は」
VR世界に、SWの世界になじみのある高須は、すぐにここがSWⅡの世界だと認識した。
体が思いのままに動くことを再度確認していると、目前に真っ黒な天使がいた。
出てきたというより、初めからそこにいたかのように、自然とその姿があったのだ。
「わっ、びっくりした」
背丈は140cmほどで、漆黒の羽をたずさえ、頭上には黒のリングが浮いている。
きりっとした目つきで、不敵な笑みを浮かべているその表情も、抜け切れない幼さで可愛らしいものとなってしまっている。
一見天使なのか悪魔なのかわからないが、それでも高須は天使だと判断した。
なんたって、可愛らしいから。
「悪いね、プレイヤーがしっかりとVRに順応できたら視認できるように設定されてるんだ」
「なるほど。ずっとそこにいたのか」
「そういうこと」
天使はふっと笑うと、高須を指さす。
「さぁて、そろそろチュートリアル始めようか。早く世界に生まれたいでしょ、キミも」
「俺としては天使ちゃんとずっと話しててもいいのだけど?」
「いやぁわたしもそうしてくれるとありがたいけど、このチュートリアルが終わったら世界に堕ちないといけないから」
肩を竦め、やれやれといった感じの天使。
「大変そうだな。じゃあお願いしようかな、チュートリアル」
「おっけー。っていっても、前作プレイ済みだよね?基本的には同じだから」
その後、天使とぺちゃくちゃ会話をしながら、チュートリアルを進めていった。
といっても、決めることは2つのみ。
素性とステータス振り分けのみだ。
高須は素性を、つまり生まれながらに持った才能のようなものを『武具錬成師』にした。
武具錬成師は、武具の生成ができるほか、武具に特殊な付加効果を付けることに特化した素性。
ステータスの振り分けは、IntとCriの二極振り。
理由は明快。
武具への付加効果の値はInt値に依存し、より特殊なものを付加するにはCri値が必要となるからだ。
前作で錬金術師としてプレイし、変態チックなアイテムを生み出していた高須は迷わずステータスを振り分けた。
「さて、ここからが新要素なんだけど」
天使はにっこりと笑みを浮かべ、高須に近づく。
「今作から、『加護』というものが追加されたんだ」
「加護?」
「そう、加護。つまりキミを彩る外からの力、だね」
「よくわからないのだが!?」
「すごいよ、キミ。数種類しかないレア加護をいきなり引き当てるんだもの」
ニヤリと口の端を上げ、天使は高須の耳元でささやく。
「天使の加護」
――おめでとう。そして残念だったね。
プレイヤーネーム:ソラ
Lv.1
HP.120
MP.200
ST.100(スタミナ)
空腹度.100
STR/1
DEX/1
VIT/1
AGI/1
INT/6
MID/1
CRI/6
◆初期ステータスは全て1
◆初期ステータスポイントは10。好きに振り分けてよい。
武器:『短刀』
防具:(頭)なし
(胴)錬成師のローブ
(腕)錬成師の腕輪
(腰)錬成師のローブ
(脚)錬成師のブーツ
アクセサリー:なし
武器アーツ:なし
奥義:なし
スキル:なし
加護:『天使の加護』