二日目後半
19:20 ホテルについて、のんびり体を休めていると、ぬこげん氏から呼び出しがあった。一緒に飲まないか、というお誘いだ。これももともと予定にない遭遇であったが、折角の旅行。日ごろ会うことのない人に会い、直接顔を合わせて話すというのはなかなかに貴重な体験。それに、旅というのは少々予定外の出来事があった方が面白い。
いそいそと外出の準備を進め、上着を纏ってフロントにカードキーを渡し、一度ホテルを出る。待ち合わせの場所は虎ノ門ヒルズ。彼と会うのが楽しみで、棒のように疲れた足に鞭を打ち、駆け足。ところが少しばかり早く着きすぎたのか、ぬこげん氏はそこにはおらず、少しの間待つことに。
夜景をぼーっと眺めていると、「からす?」と一声。はっと我に返り声の聞こえた方へと向くと、ヒゲとスーツのばっちり決まった紳士が居た。30代前半くらいの若々しい人であった。
彼の先導で夜の東京をまたうろうろ。店はどこも満席、外から見えるサラリーマンたちは皆酔っ払いの笑顔。昼の東京とはまったく違う表情に驚いた。一週間頑張った、明日明後日は休みなんだし、金曜の夜くらい開放感に浸ろうというのはぬこさん言。仕事(苦行)から解放されればそりゃ笑顔にもなるわな。
人込みは苦手だが、こういうお祭りのような感じなら楽しめる。
ぬこさんは色々な店を覗き込んでは「満席です」と返されて笑っていた。ガード下なら空いてるだろうと連れていかれた先は、牡蠣の店。ガード下初体験である。ガタンガタンと頭上を列車が行き、それに負けないくらいの音量でサラリーマンたちが話し続ける不思議な空間。まずぬこさんが牡蠣とビールを注文し、すぐに出てきたのは、「牡蠣に合うビール」直球すぎる名前だ。それほど飲兵衛でない上にビールはあまり飲まない私に味の良し悪しはわからないが、飲みやすい味だった。
やってきた牡蠣をぺろりと食いつくし、次に頼んだのは日本酒。ぬこさん曰く辛めのお酒ということだが、私の口には甘く感じられた。地酒とはまた違う味。ではもっと辛いのなら、近所の酒に似た味なんだろうかと思い、もう少し辛いというお酒を注文。難しい漢字なうえに、酔っているので覚えていないが、「じゅらく」という名前だった。こちらはちょっと辛い。飲んだら喉がカッカとなるような感じ。これをもっと強くしたら地酒の味。お冷を飲んでブレイクタイム。
それから注文したのはフライドポテト、牡蠣クリームコロッケ、炙った鳥肝をスライスしてごま油をかけたやばげなもの(ぬこさんはこういうギリギリが好きらしい)、種を抜いたオリーブの身に生ハムを詰めたもの。あとなんかの酒をもう一杯。
酒を飲みつつ創作談義。しかし内容はよく覚えていない。機巧少女は傷つかないという本を勧められたのは覚えている。しかし、酔っぱらうと時間の感覚がくるってしまうようだ。お目目ぐるぐる、感覚もぐるぐる。
あとは、それ以上飲んじゃいかんというサインは、ヒザが折れる。視野が狭くなる、らしい。
それにしてもぬこさんは私よりもずっと酒に強い。日本酒を私より多く飲んでおいてケロッとしている。だがそれ以上が居るらしい、世の中というのは恐ろしい。
(酔っぱらってメモをしていたのでかなり字も文章もぐちゃぐちゃ。なんとか整えてこれである)
帰った時間の詳細は全く覚えていない。飲んで食って、解放されて、千鳥足になりながらなんとかホテルにたどり着いた。ビル風が寒かった。お酒怖い、まっすぐ歩くこともできないなんて。