解明への始まり
4月も半ばを過ぎた。昼間は暖かくなってきたものの、まだ朝晩は冷える日が続いている。若干の肌寒さを感じながら、某県の白木山の登山道をあるいている。
この山にはとある伝説がある。
『春が過ぎた初夏の頃、この白木山で雪が降ると魔女がほほ笑む』
150年ほど前から言われ始めたらしいこの言い伝え。
その伝説の正体を探るべく、私は大学時代の先輩とともにこの白木山に来た。
「宝来先輩、この辺りには何もなさそうですが・・・」
入山から1時間半ほど登山道を歩いてきたが何もない。
「そうだな、少し外れの道を探してみたほうがいいかもしれない。ここの猟師と知り合いだから、案内を頼んでみるよ」
先輩はそういうと携帯電話を取り出した。交友関係が広く、行動が早いのはさすが先輩だ。知り合いの猟師だという人物に話をつけ、2時間後には合流できるらしい。
「少し歩けば休憩用の山小屋があるはずです。そこで昼食を食べながら待ちましょう」
私はそう提案した。
宝来先輩は頷き、歩き始める。ほどなくして山小屋に辿り着いた私たちは持参したおにぎりとパン、お茶を口にしながら猟師が来るのを待った。
2時間を少し過ぎたころに山小屋に人が近付いてきた。例の猟師だ。
「宝来さん、お待たせしてしまったね。」
「いやいや、急に電話したのに快く引き受けてくれて助かりますよ。あ、紹介します、大学の後輩の・・・」
急に振られて慌てて自己紹介をする。
「大学で宝来先輩にはお世話になってました。高橋です。今日はよろしくお願いします」
猟師は野上というらしい。思ったよりも若い。30代後半から40代前半といった歳の頃だろうか。
「それにしても、何故この山の伝説を探ろうと思ったんです?」
野上に問われ、私はすぐに答えた。
「私たちは大学で伝承や各地域に伝わる伝説などを研究しているんです。その関係でこの白木山の伝説を知り興味を持ったというか、知りたいと思ったんですよ。」
野上はあまり興味がなさそうな表情を見せたが、
「そうですか、お役に立てるといいですが。では行きましょうか」
と言ったので、私と宝来先輩は荷物を持ち、野上の後ろをついて行くのだった。