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そんなこんなで異世界生活~50歳からの異世界転移~  作者: 聖プリ
第一章 召喚~魔王討伐まで
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02話 神託の巫女アリスティア王女

◇◇◇


アリスティア side


修練所にて、祭壇に宝玉を掲げ、古文書にある呪文を唱える。

召喚魔法自体は簡単に終わった。

呪文を詠唱すると直ぐに修練所の床中央に、真っ白な円環が出現した。かと思うと数分で消え、そこに人間が出現していた…。

見るからに幼い子供らが…。


十歳の私より、幼いであろうその子供たち。四人でガタガタと震えたじろぐその姿。

とても魔王を討伐できる勇者には見えない。

絶望を感じ言葉を出すことも出来ず、私は床の上に崩れ落ちたいた。


数秒後、横のバルドから緊張が伝わってきた。

「待たれよ!バルド殿!」

知らない男性の声が聞こえる。


「召喚に巻き込まれてこの場に来た者だ。怪しいものではない!

勇者では無いが、途中、神アマテラス様に会い、その子らの送還と魔王の討伐を依頼された。

バルド殿に問う!勇者ならば、子供でも魔王は倒せるか?」


その方は神アマテラス様に会ったと言った。勇者で無くても、縋る事が出来るかもしれない!


「あの…貴方様は?」

顔を上げて、そう尋ね、その御姿を見る。


大きな背丈。バルドの様な屈強な体にほど遠いが、細い体躯に似合わない力強さを感じる。

黒い瞳、黒い髪。少年がそのまま大人に成ったような御顔。年は三十・・くらいだろうか。

その漆黒の瞳を見つめた瞬間、身体の中から熱いものが込み上がった。

そして、それが額に収束したと感じた時、


『神アマテラスの名に於いて、貴女の額に聖印(しるし)を刻みます。後の事は彼に委ねなさい。もう心配いりませんよ』

とのお告げがあった…。


間違いない。この方は勇者でなくても、神の御使みつかい様なのだ。嗚呼…!アマテラス様、感謝いたします!


「私の名は山田聖人(やまだまさと)です。

此方の事情は神様より伺っておりますよ、アリスティア・ミドルランド王女様。

貴女はこの現状を憂いて召喚の儀を行った。屈強な勇者が召喚されると期待して…。

しかし、召喚された勇者は自分よりも幼く見える者たち。絶望していたのではありませんか?

貴女の願いは私が叶えますよ。心配いりません。魔王の事は私にお任せ下さい。…ね?」


「はい、はい…」


名乗ってもいないのに、私の名を呼ばれた御使い様。

バルドへとは違い、私には優しい口調で話しかけて下さり、安心を感じる。

顔が火照り、心がモヤモヤとして何を伝えればいいのか分からない…。

コクコクと頷くことしかできなかった。


「では、この子たちを送還しても宜しいですね?」


ハッとして横を向き、バルドに目で伝える。

『このお方は神の御使い様です。安心して全てお任せしましょう』


やがてバルドが緊張を解き、私の後ろに下がって黙礼した。



◇◇◇


マサト side


子供たち送還し、これで一つ目の依頼は終わった。


さて、と二人を見る。

「詳しい話に入りましょう」

❛聖なる地図❜(ホーリー・マップ)で、ガイアースの大体の地図はわかる。

❛聖なる転移❜ホーリー・トランスポートを同時に使えば、行った事のある場所、見た事のある場所(・・・・・・・・)に転移することも出来る。

多分、❛聖なる陣地❜(ホーリー・サークル)を併用すれば、複数人を同時に転移させれれるだろう。

魔王群が何処まで侵攻しているのか分からないが、猶予は無いだろう。


「では、まずご挨拶を。ミドルランドの地、王都トゥーキングにようこそお越しくださいました。

私はアリスティア・ミドルランドと申します。女王キャサリン・ミドルランドの娘、王女になります。アリスと御呼びください。そして此方に控えるのが近衛騎士団長のバルド・ゴードンで御座います」

「バルド・ゴードンに御座る。御助勢の件、かたじけなく」


二人して頭を下げる…。硬い…。雰囲気硬い…。


「ご丁寧にありがとうございます。私は山田聖人(やまだまさと)。姓がヤマダ、名をマサトと申します。

残念ですが、私は”巻き込まれ転移”。勇者では無いと考えます。ただ、神アマテラス様より幾何(いくばく)かの力を授かりました。

魔王討伐にお力添えを出来ると思います。

只の平民ですので失礼の段は、ご容赦下さい」

やばい。俺、謙譲語だの尊敬語だののボキャブラ少ないんだよなぁ。



「例え勇者様で無いとしても、貴方様は神の御使い様であらせられます。御使い様、私の額に何か(しるし)のようなものは御座いませんか?」

そう言って、右手で髪を上げ額を見せる。

「王女様、私の事は只のヤマダかマサトと御呼びください。はい、確かに2cm程の大きさの何かがあります。光る処を私も見ました」


「私には見えませんが御使い様、どのような印になっていますか?」


「その祭壇にある、モニュメントと同じ形ですが…」


「やっぱり!!しかも、聖印(せいなるしるし)だなんて!!」

嬉しそうに顔を紅潮させ、その場で軽く飛び跳ねる少女。



「此方をご覧ください。これは、丸十字と言います。神アマテラス様を(かたど)った物です。○の部分は後光を、十字の部分が御身体を。横が短く斜めになっているのは、人の子を抱いている姿を表しています」

祭壇の方を見ながら、俺にそう説明する少女。


古来、”神託の巫女”になる者は、額にこの丸十字、聖印(せいなるしるし)が刻まれて生まれて来たそうです。

ここ数十年、神託の巫女が生まれたという記録はありません。また、神託の巫女がいた時に、神のお告げを聞いたという記録もありません。神託の巫女の存在は、来るべき神の代弁者として敬われていたようです。


続いて、発見された勇者召喚魔法と、その対価について説明し終えたあと、直ぐに俺に振り返り、

「あの時、体中から熱いものが込み上げ、それが額に集まったと感じた時に神様よりお告げがあったのです!『神アマテラスの名に於いて、額に聖印(せいなるしるし)を刻みます。後の事は彼に身も心も(妄想です)委ねなさい。もう心配いりませんよ』と仰られました!勇者召喚で刻まれる(しるし)については誰にもわかりません。

ただ、御使い様の出現により、私の額には聖印(せいなるしるし)が刻まれました。”神託の巫女”として私、アリスティア・ミドルランドは、御使い様に文字通り(・・・・)身も心も捧げる覚悟で御座います」


「ええっ!!」「な、何を姫様!!」


驚愕する男二人の前で、



嗚呼!神アマテラス様!御使い様に身も心も(妄想です)委ねれば良いのですね!


身も心も委ねる…。

身も心も委ねる…。

身も心も委ねる…。

身も心も委ねる…。

ブツブツと独り言を言いながら両手で頬を押さえ、身を捩りだす少女がそこにいた。

❛聖なる転移❜ホーリー・トランスポートで部屋の隅に転移。「バルド殿!バルド殿!」と小声で彼を手招きする。

一つ頷き、猛々しい男が、身悶えしている王女を横目に忍び足で来た。

「バルド殿、一つお尋ねしたい事が」

「うむ。何事か?」

「では…。王女様のあの態度。”身も心も委ねる”とはどういう意味であらせられられます…、あーもうメンドクサイ!私は平民なので言葉を知りません。普通に喋ってもよろしいですか?あと、私の事は”マサト”と呼び捨てにして下さい」

「うむ。大事ない。ではマサト殿と。姫様のあの態度。よもやこの短時間にと、儂にも俄かに信じがたいが、マサト殿に懸想をしておる様にも思える。…不安や恐怖を強く感じている時に出会った者、例えば戦場で生き残った男女の兵士が、希にあのようになる事はある。長く続いたとは聞かぬが…。それと、儂の事はバルドと呼び捨てで結構」

…吊り橋効果ってやつか?

「ふむ、次は儂から一つ訊ねたい」

「はい、何でしょう?」

「マサト殿の世界では、女性は幾つから子を()すものか?この世界での成人は十五歳。農村部では早く嫁に入る処もあるが、それでも十三以上だ。子が産めぬ」

「えーと、じゃあ、バルドさんで。バルドさん、私の世界で15歳はまだ子供。成人は20歳です。昔はそのような事もあったと聞きますが、今は男が18歳以上、女が16歳以上でなければ婚姻が認められていません。それと、私には幼く見えますが、王女様は御幾つですか?」

「ふむふむ、成程成程。そちらの世界でも大差なしと。姫様は今年で御年十歳になられた。女としては未だ幼い」

「…10歳ですか。まだまだ子供でいらっしゃる…」

俺の世界じゃ小学生だよ。JSだよ。

「マサト殿。貴殿が使徒様かどうかは儂には分からぬ。だがその膨大な魔力を纏う佇まい。尋常ならざらぬ力量は儂にも感ずる。此方は御助力を願う立場。なれど、何卒…、何卒、姫様に対して理不尽な真似は、どうか御勘弁願いたい。儂の事なら如何様にしても構わぬ」

そういって、俺に対し深々と頭を下げるバルドさん。

「いやいやいやいや、滅相もない!10歳の子供、しかも王女様をどうこうなどと、思いも寄らない事です。だいたい俺、50歳ですよ?40も年上です。犯罪です!」

YES!ロリータNO!タッチだって二次元での話だ。

「マサト殿は、姫様を慰み者にする気など更々無いと?」

「当たり前です。…私には妻も子供もいません。いや、死別とかではなく最初からいません。ですが、自分が年を取った所為か、子供がいない所為なのか、いつの頃からか子供を見ると微笑ましい気になってしまいます。子供は守るものです。例え赤の他人だとしても、それが大人の役目だと考えます」

「成程、至極ごもっとも。このバルド、言質を戴き安心致した。貴殿には、重ね重ねご無礼つかまつった。どうかご容赦願いたい」

「いえ…」

まあ、俺が悪人かどうかも分からないんだ。心配にもなるわなぁ。

それにしても…。

チラリと王女様をみる俺。

バルドさんも顔を向けた。


「しかし、如何したものか…」「どうしましょうか…?」


未だ小躍りを続ける王女様を見ながら、オヤジ二人は途方に暮れた…。



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