50歳、異世界に転移
キツかった…。
グロ耐性の無い俺に、特に人型の魔物はキツかった…。
血を撒き散らしながら爆散する肉片。ミンチ、ミンチ。
電車に撥ねられると、ああいう状態になるって聞いたことがある…。
いや、やったのは俺だが。
何度ゲロを吐いた事か…。
しかし、それも段々と慣れてきた頃には、戦い方も型に嵌ってきていた。
まず、❛聖なる陣地❜。ブーンと音を立て、自分を中心に足元から円環状の白い魔力が広がって行く。魔力の込めかたで最大直径1km程にもなる陣は、魔物の侵入を防ぐとともに陣地内の味方の戦意を上げる効果がある。
ついで、❛聖なる防壁❜。シュインと音を立てて展開されたそれは、自分を中心に最大50mの範囲を、360度、球状で透明な防壁が覆う。
これは、直接攻撃・魔法攻撃ともに効果がある。弱い攻撃などノーダメージにする力だ。
最後に❛聖なる身体強化❜。キラキラと白い光に身体が包まれて、筋力・魔力をアップする。強化は1時間持続で他者にも付与することができる。
これで準備が整った。
その場で広範囲上級魔法の❛聖なる業火❜を唱えれば、ゴブリン、コボルトの数千の集団など、一発で殲滅できた。
さすがにドラゴンが加わると、これだけでは全滅しない。
同じく広範囲上級魔法の❛聖なる流星❜、❛聖なる爆炎❜、❛聖なる暴風❜、❛聖なる雷❜、❛聖なる閃光❜、❛聖なる吹雪❜ など、ドラゴンの属性によってそれらの魔法を追加して行き、やっと戦闘は終了となる。
ブラック・レッド・グリーン・イエロー、それぞれのドラゴンの率いる魔物の集団と、数百回は戦い勝利した。
しかし広範囲上級魔法は爆弾を落とすようなものなので、人や建物など、周囲に被害が出る可能性がある。
そう考えて、途中からは範囲の狭い中級魔法を試す。❛聖なる火炎❜、❛聖なる氷槍❜、❛聖なる突風❜、❛聖なる石槍❜を使い、数十発でドラゴンを倒すことが出来るのを確認。
初級魔法の❛聖なる炎弾❜、❛聖なる水刃❜、❛聖なる風刃❜、❛聖なる石弾❜でも、数百発を撃ち込むことで、遂にドラゴンを倒すことができた。
あっはっはっはっは~!我が軍は圧倒的ではないか!これで魔王群にも勝つる!
でも、剣はよく分からなかった。ただ力任せに振るっただけ。
それでも何とか剣だけでも、ドラゴンを倒す事ができた。
戦闘中はこちらも傷を負ったが、❛聖なる完全回復❜を使いながら戦ったので問題はなかった。
大したダメージじゃ無いとは思ったが、根が臆病なもんだから❛聖なる小回復❜だけでは気が済まなかったのだ。
スサノオ様は「いいぞ!一撃必殺だ!ガッハッハ…」と言うだけの脳筋。
教えてくれたのは、剣の持ち方と振り方だけ。
剣を上から、横から、斜めから、下から振る。「思い切り行け!力の限りだ!止めるな!振り抜け!大地を割れ!」
とても剣術とは思えないことを平気で言う始末。
まあ、魔法が使いこなせるようになったから良いか。と、思った矢先。
「じゃあ、最後は俺が相手だ。覚悟しろや!」と、スサノオ様の登場となった…。
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ドラゴン相手なんてもんじゃない。
❛聖なる陣地❜なんて、意にも介さず。
❛聖なる防壁❜は、作るそばからパリンパリンと、ガラスのように砕かれる。
❛聖なる業火❜は「ぬう~ん!」の掛け声とともに、突き出された拳で爆散。
❛聖なる転移❜で周囲を飛び回り、剣で切り付けてみるが「効かぬ!効かぬわ!」の一言。
体に傷一つ付けられず、逆に剣が砕け散った。
もうあれだね、今が夜なら死兆星が見えてるね。俺。
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「…見知らぬ天井だ…」
床を背にして気が付くと、再びアマテラス様が俺の顔を覗き込んでいた。
スサノオ様の圧力に耐えられずに倒れた俺。薄れゆく意識の中で最後に見たものは…。
太陽のようなものを逃げ惑うスサノオ様に投げつける、アマテラス様の姿だった。
「大丈夫ですか?御免なさいね、止めるのが遅くなってしまって。
ちょっと❛聖なる箱❜を弄るのに手間取ってしまいました。
ホーリー・ボックス…。アイテムボックスのことか?
しかし、何でも”ホーリー、ホーリー”と付けるのは如何なものか?
一人ぼっちのクリスマスを思い出して、寂しくなるのですが…。
「そこは”神聖属性”ですから、譲れませんよ?」
「イエス、マム!」
惨憺たる光景をみたら、素直に従うしかない。
「❛聖なる箱❜には、金塊から食べ物まで、思いつくものを全部入れてあります。
先ほど貴方が寝ているうちに授けてありますから、確認してみて下さい。あ、現金は入れてありません」
あれですか?貨幣の流通量が変わるとかですか?
まあ確認してみよう。
❛聖なる箱❜…❛聖なる箱❜…。
これか。
【貴金属類】
[金塊(10kg)]×255
[銀塊(10kg)]×255
[銅塊(10kg)]×255
[鉄塊(10kg)]×255
[白金塊(10kg)]×255
[オリハルコン塊(10kg)]×255
[ミスリル塊(10kg)]×255
[ダイヤモンド(原石10kg)]×255
[サファイア(原石10kg)]×255
[アメジスト(原石10kg)]×255
[ルビー(原石10kg)]×255
[ブラックドラゴンの魔石]×255
…etc
【薬品類】
[エリクサー]×255
[HPポーション]×255
[MPポーション]×255
[万能薬]×255
[薬草]×255
[魔力草]×255
[包帯]×255
[消毒薬]×255
[絆創膏]×255
…etc
【その他】
[ブラックドラゴンの革]×255
[ブラックドラゴンの爪]×255
[ブラックドラゴンの牙]×255
[鉄の鍋]×255
[木の皿]×255
[木のスプーン]×255
[スコップ]×255
[つるはし]×255
[植木鉢]×255
…etc
【食品類】
[米(30kg入り)]×255
[味噌(30kg入り)]×255
[塩(30kg入り)]×255
…etc
すげ~な!相変わらず”FF”って入れただけなんだろうけど、これは助かる!
食品類なんて、
米・パン・味噌・塩・醤油・砂糖・酢・味醂・マヨネーズなどの主食や調味料。
トマト・キュウリ・キャベツ。ニンジンなどの野菜。
苺・蜜柑・林檎・柿・バナナなどの果物。
牛肉・豚肉・鶏肉・ソーセージなどの加工肉。
カップラーメン・うどん・そばなどの乾物。
ポテトチップス・飴・板チョコなどの菓子類。
いったい何千?種類の物が入ってるんだ?
金塊を売れば、現金にできるんだろうし。
調理済みのものは無いけど、そんなの作ればいいんだし。
時間の止まるアイテムボックスらしいし、パンと肉と野菜だけでも生きて行けるし!
向こうで迷子になったとしても、暫くは金と食事に困らないな!
感動した!!流石、神様です!!ありがとうございます!!少し項目が多いような気がするけど!!
でも、なんでここまで俺に良くしてくれるんだろうか?
何か裏があるのでは?と勘ぐってしまう。
年をとると、捻くれるんだよなぁ…。
よし、訊ねてみよう。
「え~と、神様。たいへん有難いのですが、少し過分なのではないでしょうか?」
全部売り払ったとすれば相当な金額になる量だ。もしかしたら物凄い重荷を背負わされるのかもしれない…。
「初めにお願いした通り、向こうに行ったら直ぐに子供たちを送り還してください。
❛聖なる送還❜の魔法です。そうそれです。貴方もそれで還れます。
召喚された子供たちを送還する事。これが一つ目のお願いです。
二つ目のお願いは、魔王を倒し、ガイアースを救って欲しいのです。
魔素がある限り、魔物は生まれます。しかし、魔素は生き物すべてに必要なもので無くせません。
ただし、魔王は別です。心置きなく魔王を倒して貰いたいの。
その為に少し便宜を図りました。
気にしなくていいんですよ?数字を弄っただけですしね。
魔王を倒した後は彼方と此方、どちらでの生活を選んでも構いません。
彼方を選んでも、此方の世界で”行方不明者”が一人増えるだけです。
どちらで生を終えても、魂は私の元に還ります。
ただ、彼方と此方では時間の流れが違います。”ちょっと遊んで、後で還ろう”には注意が必要です。
時間が経てば経つほど”浦島太郎”状態になりますからね?
あと、此方の世界に還れば魔力は使えなくなりますから❛聖なる箱❜自体無くなります。
当然、自力では二度と向こうの世界へ渡れません。よく考えて決めて下さい」
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ふと、腕時計を確認する。
時計の針は5:03分で止まっていた。
体感時間では、何十日もいたように感じるが…。
家の前で最後に時計を見たのが4:42分。
玄関で打ち拉がれていたのは、何分ぐらいだったのか。
そして、その時の情景を思い返すと、自然と答えは導かれる。
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「わかりました」
コクリと頷き、神様の顔を見る。
「では、時間停止を解きます」
神様の声とともに、俺の体は再び眩い光に包まれて行った…。




