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そんなこんなで異世界生活~50歳からの異世界転移~  作者: 聖プリ
第三章 旅の始まり~王都トゥーキングまで
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07話 クーラー玉

トーカ・イ道を東に向かいズオカの村に入ると、北側には大きな”フジサン”が聳え立つのが見える。

ガタゴトと揺れる荷馬車の二階で、照りつける太陽の日差しを受けながら、雄大な”フジサン”の景色を眺めていた。

結界か何かで遮られているのだろうか?

目視も出来、❛神の眼❜(ホーリー・アイ)で”フジサン”の名称を確認出来るのだが、❛聖なる地図❜(ホーリー・マップ)では未確認地と同じで灰色に表示されて転移は出来ない。


前を走る列に目を移すと、暑さの為か幌を捲り上げてる荷馬車は無かった。

「あ~~”フジサン”は綺麗で景色が良いけど、今日も天気が良くて日差しが暑いな~」


この星(ガイアース)でも夏はやはり暑い。

俺は聖なる衣(草臥れた背広)を着ている御蔭でそれ程でも無いのだが、盗賊を倒した後に幌を固く閉ざした荷馬車の中で、難民達が汗だくになって居るのを目にし、クーラーの様なモノを造る事にした。


ただ、以前[光の水晶玉]を数百個造った為に、483個もあった陛下から貰った[水晶玉]の、残りは僅かになってしまった。

どうしたものかとグスタフさんに相談してみると、ナヤゴ大集落の魔法具店なら[水晶玉]が有るのではと言う事だった。


俺は直ぐに[MPポーション]を飲み、再び❛聖なる分身❜(ホーリー・アバター)を唱えて、分身体がナヤゴ大集落に転移した。

ナヤゴ大集落に転移し、行き交う人々に道を尋ね、魔法具店に向かった。

そして最初に入った魔法具店で衝撃の事実を知る。


その魔法具店には水晶玉自体が少なかった。

ただ、水晶玉や魔石を使用した杖やランタンなどのアイテムは多数存在した。

不思議に思って店員に尋ねてみると、水晶も存在するが”水晶玉”は”石英”を❛硬化❜の魔法で固めて造る物なのだと言う事実を聞いた。

その様な面倒な事をしなくても、冒険者ギルドに魔物を倒した時に採れる”魔石”を依頼して、魔法師が”魔石”に火や水などの魔法を❛付与❜した方が高く売れるし見栄えも良いのだと言う。

ただ、質は劣るが”石英”自体にも魔法を❛付与❜する事が出来るので、こちらは金の無い冒険者や低所得者専用品にしているのだそうだ。

数回使用すれば壊れてしまう物とはいえ、火や水が使えるのは重宝されているらしい。

鉱山で働く者が、金や銀、鉄鉱石やその他の宝石を掘る(ついで)に採掘した水晶や石英を、一山いくらで買い取るのだという。


買い取る条件で、試しに一つの”石英”を手に持つ。

ただの濁ったガラスの石の様に見えるその石に❛聖なる硬化❜(ホーリー・ハード)を唱えると、ちゃんと水晶玉に成った…小さいが[聖なる水晶玉]だ。

しかも態々水晶玉を造らなくても、石英から直接アイテムを作成する事が出来た。

何の魔法も❛付与❜していない石英はクズ同然の金額しか無いと言う。


オリハルコン製の聖剣と聖盾を、水晶玉483個で国王陛下と交換した俺はどんな馬鹿なんだと。

もうね阿保かと思った。自分で頼んだ事でもあるし、今更嘆いても仕方がないが…。

物の価値が分からないって、本当に怖いもんだよなぁ~

でも、元々アマテラス様から只で貰ったものだから、まあいいかと納得した。


[銀塊(10kg)]1個での交換をお願いしてみると、店員は喜んで店の全ての石英と水晶玉を売ってくれた。

これも銀塊の方が価値のある物らしいが、今の俺には石英の方が役に立つのだから文句は無い。

他の魔法具店の事も尋ねると、店員は自ら案内をしてくれて、ナヤゴ大集落にある5つの魔法具店で石英と水晶玉を大量に売って貰った。

今、❛聖なる箱❜(ホーリー・ボックス)の中には26個の水晶玉と、6,562個の石英が存在する。


暑さを凌ぐため、新たに❛聖なる氷❜(ホーリー・アイス)❛聖なる付与❜ホーリー・エンチャントした[石英]と[グリーンドラゴンの魔石]を❛聖なる錬金❜(ホーリー・アルケミー)を使用して[クーラー玉]を400個造り、全ての荷馬車の1階に2個、2階に2個ずつ設置した。

[クーラー玉]は、通常の風の温度を20℃・風の強さを《中》に設定。

手で触れ《出風》《停風》と唱えて使用する。

《出風》の後、《高》《低》と唱えながら[クーラー玉]に手で触れれば、1℃ずつ風の温度が変化する。

18℃~25℃まで風の温度を調節出来るようにした。

また、《強》《中》《弱》と唱えれば、風の強さを変更出来るようにしてある。

やはり蒸し暑く感じていたようで、皆には中々好評だった。

騎士達には「是非、拝領致したく!」と頼まれたが、ここで調子に乗ると再び集めた[石英]まで使い果たしてしまいそうなので断った。

まあ、面倒だったせいもあるが…堪忍してつかあさい


俺が製作する”アイテム”の名前が変わったのには理由がある。

盗賊との戦いの後でもう一度魔法を確認した処、生活魔法の欄に新たに2つの魔法が増えているのが確認できた。

❛聖なる硬化❜(ホーリー・ハード)❛聖なる契約❜ホーリー・コントラクトだ。


固有魔法以外は詳細な説明が出無いので、頭に思い浮かぶように使うしか無いのだが、名前からして❛聖なる硬化❜(ホーリー・ハード)はこの世界の土属性魔法❛硬化❜と似た物のようだ。


先ずは1つ目の❛聖なる硬化❜(ホーリー・ハード)

試しに❛聖なる土❜(ホーリー・サンド)で出した土を❛聖なる水❜(ホーリー・ウオーター)と混ぜて粘土の様にして四角い形を造り、❛聖なる硬化❜(ホーリー・ハード)を唱えたら[硬いレンガ]が出来た…んだけどね、それなら最初から❛聖なる錬金❜(ホーリー・アルケミー)硬く(・・)造っても同じ何だよなぁと思った。…まあ、[粘土塊(10kg)]が無くなった時の代わりにはなるか。


そして2つ目の❛聖なる契約❜ホーリー・コントラクト

何かに命名や改名が出来るらしい。”契約の宝珠”と似たようなモノなのだと思う。

但し、既に名前が付いている物には無理だった。

道端に生えているオオバコ草に❛聖なる契約❜ホーリー・コントラクトを唱えたが、”ヤマダ草”には成らなかったのだ。

微妙な魔法だ…と思っていたら、試しに一つの[音声送受信の水晶玉]を[電話玉]に改名した処、全ての[音声送受信の水晶玉]が[電話玉]に改名された。

当初から長ったらしい名前が気に入らなかったので、これは嬉しかった。

恐らく”元々アマテラス様が付けた名称”のモノは改名出来ないのだと思う。

…フジサンをヤマダサンに改名出来たら、怒ったアマテラス様が何をするか分からない…くわばらくわばら。

まあ、魔法の名前からして”契約”として名称が変わるのかもしれないので、迂闊に名称を変えるのは遠慮したい。

ついでに[映像の水晶玉]を[ビデオ玉]に、[転移の水晶玉]を[転移玉]に改名した。

まあ、他のアイテムも追い追い名前を変えて行く心算だが、今はそのままで使用している。



❛神の眼❜(ホーリー・アイ)で自分を確認すると、ここまでの作成で、Lvが1上がった。

今まで蓄積した経験値(?)もあるのだろうが、❛神の眼❜(ホーリー・アイ)もLvが上がったようで、年齢まで表示されるように成った。

別に自分の年齢を見ても仕様がないが、この世界の人は外見と年齢が合わない事が多いので、これも重宝しそうだ。


【名前】山田聖人

【種族】人間

【年齢】50歳 ←new

【職業】無職

 Lv:41

 HP:10633/10633

 MP:10633/10633

【称号】神の使徒





今日で館を出て53日目。この星(ガイアース)では一月が30日なので1か月と23日が経っていた。

日本風に言うと、今日は8月28日になる。


この旅も2/3の道程を終えた。

『王都トゥーキング』まで残り約1,500km。

順調に進めば、あと25日程度で到着する予定だ。


まだまだ残暑が厳しい。

[クーラー玉]から風が向かう先には、サラが死んだように眠っている。

薄っすらと汗の滲むサラの顔を見ながら、最近のサラの様子の変化を考える。

最近のサラは様子がおかしいのだ。

盗賊との戦いの後、寝る間を惜しむかのように我武者羅に警護を行っている。

俺が❛聖なる地図❜(ホーリー・マップ)で魔物が近付くのを教えると、「ご主人様、手出し無用に御願い致します。私に御任せ下さい」

と言って、一人で魔物の討伐に行くのだ。

何か考えが有るのだろうと思い、危険な時以外は手を出さない事にしたが杞憂だった。

バタバタとサラが魔物を倒し、俺の出番は無い。

俺は❛聖なる地図❜(ホーリー・マップ)で確認して、あちらに一匹、こちらに二匹とサラに教える係。

サラ一人だけで、今までグリーン・ウルフやキラー・アントなど80匹は超える魔物を倒して行った。

サラは風属性❛鎌鼬❜(カマイタチ)と❛風の癒し❜という新しい魔法を2つ覚え、先に覚えていた魔法の❛疾風❜は❛縮地❜(しゅくち)に、❛隠密❜は❛完全隠密❜に進化したという。

…”縮地”だなんて、その内、”飛○御剣流”を使えるんじゃないだろうか?うらやますいいいいいい!

❛縮地❜は❛疾風❜よりも動作が早くなり、相手との距離を一瞬で詰められるモノ。

❛完全隠密❜は❛隠密❜よりも気配察知・気配遮断が強力に成ったモノで、姿を完全に消す事も出来るモノ。


❛鎌鼬❜(カマイタチ)とは、振るった(やいば)から真空の刃が飛んで敵に傷を付けるモノ。

Lvが上がれば飛距離も伸び、またそれだけで魔物の首を落とす事も容易に出来るらしい。

❛風の癒し❜は、効果は弱いが軽度の傷や怪我を治癒する風属性の回復魔法。

そもそも回復魔法は、光属性❛光の癒し❜>水属性❛水の癒し❜>風属性❛風の癒し❜の順で効果が違うのだという。

だが、光属性や水属性は神官や賢者、巫女がパーティーの後衛から支援として使用するもので、単独で戦闘中に使える回復魔法としては風属性❛風の癒し❜は優秀なのだとか。

他の土・火・闇には回復魔法が無い。

Lvはどれくらい上がったのかと思い、❛神の眼❜(ホーリー・アイ)でサラを確認すると


【名前】サラ

【種族】人間

【年齢】12歳

【職業】影の従者

 Lv:35

 HP:1648/1648

 MP:134/134

【称号】使徒の従者


と表示された。

なんと、Lvは7つも上昇している。

俺の加護もあるのだろうが、称号が”使徒の従者”になってから他の人よりLvの上昇やステータスアップが大きい。

これ、Lvだけなら直ぐに俺を抜いちゃうんじゃないか?

というか、年齢12歳じゃん!

あれか、数えで13歳と言っているのか?

12歳でLv35何て、強過ぎなんじゃないだろうか。


だが、流石に頑張り過ぎだ。

余りに鬼気迫る頑張りようで、疲労の色も濃い。

今日は一日寝ているように促した。いや命令した。

このままでは身体が壊れてしまう。


「…ですが!ご主人様!私はもっと強く成らねば!」

と、涙を浮かべて嘆願するが、心を鬼にして説得したのだ。

「サラが寝ないんなら、俺も寝ないからね!おじさんが寝ないと加齢臭で体が臭くなったり、口臭が酷くなったり、足の裏が臭く成ったり、髪の毛が抜けてハゲになったりするんだからね!それでも良いの?」と説得したら、一瞬目を丸くし、呆気にとられた顔でコクリと頷き、納得して寝てくれた。…卑怯だが、サラの身体には代えられない。

度重なる疲れもあって、頭を少し撫でていたら直ぐにスースーと寝息を立て始めた。


翌日の昼頃になり、サラがやっと目を覚ました。

随分とスッキリした顔をしている。

だが、俺と目を合わせた途端、何だか微妙な表情でモジモジとしている。

これは、あれですか?俺に愛想を尽かしたんですかね?

…以前付き合っていた彼女が、別れ話を切り出した時の顔と態度に似てるんだよなぁ。


「どうしたの?サラ」

「いえ、何でも有りません」

”何でもない”って顔じゃ無いんだよ。

俺の方から切り出してみるか…。

「あ~と、サラ?もしかして俺に愛想が尽きた?」

バカな俺。そんなド直球(ストレート)で聞くヤツがいるか!


「そ!そんな!滅相も無い!」

「じゃあさ、どうしたのさ。俺には話せない事なのかな?」

「…あの、ご主人様、申し訳ありませんが、先に(かわや)に行ってきても宜しいでしょうか?」

「ごめん。どうぞどうぞ」

「はっ。失礼致します」


そう言って消えるような速さでトイレに行くサラ。

デリカシーが無くてゴメンね。

もしかして生理だった?のかな。

俺には分からないけど、生理前の女性ははイライラするって言うし、それで魔物に八つ当たりしてたのか?

いや、そもそも生理が何日続くのかも知らないんだから、俺には判断出来ない。


そう言えばこの世界の生理用品ってどんなのだろう?

まさかナプキンやタンポンが有るとは思えないし…。


昔、20歳に成った頃、家のトイレの中にポケットティッシュみたいな塊が一つ落ちていた。

何じゃコレ?と拾い、中を開けてみたらナプキンだった。かーちゃんの物だろう。

テレビのコマーシャルでは見たことがあったが、実物を見るのは初めてだった。

中を開けると三つに畳まれた長方形の、意外に大きいコットンのような物体が出現した。

両端の紙を剥がすと両面テープに成っていて、これで陰部に止めるのだろうという事は分かった。

が、どう考えても止め方が解らない。

だって、一方には尻があり、一方には陰毛があるんだぜ?

こんなん両面テープで体に止めたら、剥がす時に痛いし毛が抜けちゃうじゃん。


そう思い、トイレから出てかーちゃんに尋ねたら「お前馬鹿だね…」と呆れられた。

テープをパンチィーの方に止めるのだと言う。

ああ、成程ね。

…分かった、分かったから大笑いするのは止めてくれ、かーちゃん。

「だいたい、ナプキンなんてお前には用の無い物なんだから、勝手に開けるんじゃありません。それと、もし彼女が出来たら、生理関係の事は聞くんじゃないよ?デリカシーが無いって思われるからね。…まあ、20歳にも成って彼女が居ないお前には、関係の無い話しかもしれないけどねぇ~」と言われた。

ぐぬぬ…思い出すと、何だかその頃から全然成長していない自分に腹が立ってきた。


暫くしてサラが戻って来た。

変な事は聞かないように意識して「何かあったの?」と尋ねる。

サラは一瞬身を緊張させ、「…ご主人様は、人の生き様(・・・)について、如何思われますか?」

と、逆に尋ねられた。

そんなん知らんがな。

自分の生き様ですら分からないのに、他人に兎や角(とやかく)言える訳が無い。


「まあ、あれだ。法律を守り、第三者に迷惑を掛けない限り、人間はどう生きようと自由なんじゃないかな?」

そんな事しか言えなかった。


が、サラは真面目な顔をし、決心をしたような表情になる。

「ご主人様、私はもっと強く成らねば成らぬのです。私は弱い。魔王軍のオーガに倒された時も、盗賊に吹き飛ばされた時も身に染みて感じました。ご主人様に仕える”従者”として相応しくありません…。このままではこの護衛の任務が終わったら、(いとま)を出されてしまいます…」

そう言い終えた後、俯きながら涙を零し始めてしまった…。




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