表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そんなこんなで異世界生活~50歳からの異世界転移~  作者: 聖プリ
第二章 神聖ラーナ王国~旅立ちまで
11/59

01話 巫女の戦い

◇◇◇


アリス side


マサト様の使った魔法は、物凄い量の光の塊だった。

光の消滅と共に静寂が訪れ、魔王も魔王軍も全て消滅していた。



周囲の大地は大きく窪んで亀裂が走る。山々や川も大きくえぐれて地形が変わってしまった。

辺り一面の大惨事。見るからに荒廃した国土が、その魔法の凄まじさを物語っていた。




「ぐあぁぁ~~~~~~っつ!!」


呆気に取られる私の横で、悲鳴を上げながらドサリと倒れるマサト様。

強く瞼を閉じ、噛み締めた唇からは血が流れ、苦悶の顔。

両手で地面を掻き毟り、両足をバタつかせながら藻掻もがき苦しんでいる。

「「マサト様!!」」

狼狽うろたえる私たちは、声を掛ける事しか出来なかった。



やがて背後から多数の馬の足音が聞こえた。

砂埃を上げながら、神聖ラーナ王国の旗を掲げた数百人の兵達が近づいて来る。


私たちの前で立ち止まった集団。

後ろから一際煌びやかな装備を纏った男が、前に出て来た。


「…こ、これは…何だ、何が起きた…」


馬上から周囲の惨状を見渡し、呆気に取られた顔でそう呟く男。

年は二十に満たないか。金髪で女性のように長い髪の優男だ。


「お前たち、ここで何が起きた!」

私に視線を合わせ、男が話しかけてきた。


「私は、ミドルランド国王女、アリスティア・ミドルランド。此方は従者のサラ。ここに倒れているのはマサト・ヤマダ殿で御座います」

「何?隣国の王女様だと?我が国に御来訪したとは聞いてないが?…お忍びとしても供の数が少なすぎるな。…僕には只の修道女とスパイにしか見えないんだけどね?」

そう言って、次はサラの方に視線を向けた。確かにサラの装備はスパイにも見えなくも無い。




「さてさて、僕は任務中で、君の戯言を聞くほど暇じゃないんだ…。優しくしている内に、何が有ったのか喋った方が身のためだよ?」

馬上から剣に手をかける。


「ロベルト様!御待ち下さい!」

そう言いながら、続いて前に出たのは老練の騎士。バルドが少し小柄になった感じだ。

白髪を後ろで一つに束ね、顔の右側には大きな古傷がある。

歴戦の勇士とも見えるこの男、団長よりも爵位が低いのだろう。若しくは平民か。


「何だよ、グスタフ…。これは僕の初任務なんだ。邪魔をするなよな!」


「ロベルト様。失礼ながら、アリスティア・ミドルランド様と言えば、国王陛下の姪になります。無礼があっては成らぬかと」

「面倒臭いなぁ。こいつ等も、お前も…。平民の癖に僕に意見するのか?」

「ロベルト様、咎を問われた時に私の所為に致せば、貴方様の経歴に傷を付ける事は無いかと。ここは露払いを私に命じて下さい」

「チッ…、好きにしろ!」

「はっ」


「お初にお目にかかります、王女様。此方は、神聖ラーナ王国、第三騎士団団長、ロベルト・ラインザック男爵様です。私は副長のグスタフ。任務中・・・のため、馬上より失礼致します」


そういって馬上で頭を下げる。現場で任務中の騎士は、たとえ相手が王族でも馬から下りる必要はない。任務の遂行が優先されるからだ。

「初めまして、ロベルト・ラインザック男爵様、グスタフ様。その任務とは…御聞かせ願えますか?」


「その様な事!風体ふうていの知れないお前たちに、教える必要など無い!」

礼節をわきまえるグスタフと言う男。対して、私達の事を存在ぞんざいに扱うロベルト男爵。

ラインザック家と言えば、神聖ラーナ王国の伯爵家として聞いたことがある名だ。その血筋で得た爵位か。


「ロベルト様、ここは私にお任せを」

「フンッ!余計な事は喋るなよ!」


腕組みし、顔を横に背けるロベルト。

「…王女様、我らの任は密命では御座いませんので、説明いたすのはやぶさかではありません。しかし、替りに王女様が我が国に御来訪なされた訳をお聞かせ願えませんでしょうか?このまま此処に貴方様を置き去りに致せば、我ら皆、国王様よりきつくお咎めが御座いましょう」

「はい。分かりました」

この男は話が分かるようだ。ここは従っておく。


「では此方から。数日前、ここサカオの街に魔王軍が侵攻致しました。この街は、我が神聖ラーナ王国の目と鼻の先。侵攻に備え、城では三万の兵が待機しており、今か今かと待ち侘びて居りました処、此処らで数刻前から雷鳴や轟音が轟き始めたので御座います。魔王軍の侵攻とお考えになられた国王陛下より、我らは斥候の任を得たのです。…しかし、この惨状。何か心当たりは御座いませんか、王女様」


「成程。ご説明有難う御座いました。私達は”神の御使い様”である、このマサト様の魔法のアイテムで此処に転移して参りました。此方に控えるサラが魔王軍斥候の任でここサカオの街に来た処、魔王軍の襲撃に遭遇いたしました。マサト様の転移魔法により、私達はこの場に転移。奮戦したマサト様の大魔法によって、魔王と魔王軍は見事討ち取られたのです。力を使い果たしたマサト様は、今、ここで倒れております…」




「アハハハハ…。”神の御使い様”だと?笑わせるな小娘!その様な事、神官達からは何の話も無かったわ!…。誰か!その様な話を聞いた者はいるか!」

ニタニタと薄ら笑いを浮かべながら、髪をかき上げ周りを見廻すロベルト男爵。



「ロベルト様、本当で御座います。魔王軍は数千以上居りました。そして魔王は”山の姿”をしていたのです。文字通りのです」


「クッハハハ。山か、魔王が山か…誰がそんな戯言ざれごとを信じるか!」


「神に誓って、本当で御座います!そして、このお方の魔法が、魔王と魔王軍を倒したのです!それはそれは大地を割り、天をつんざくような、まさしく神の御業のような魔法でございました!」


「下らない嘘を…では、その数千の魔物の死体は何処にあるのだ?」

「…それは」

「僕は魔王軍斥候の任を得ている。そして見つけたのがこの惨状だ。今ここに魔物の存在は無いようだが、先ほどの言葉。その男がやったと言質げんちを得たぞ?…我が国に此の惨状をもたらしたとな!!」


「ち、ちが「者ども!その者を捕らえよ!女共は丁重に保護・・せよ!」

「「「「ハッ!!」」」


剣を抜き、数百の兵が騎馬を降りてジリジリと包囲してくる。

「ええい!者ども、止めよ!…ロベルト様!剣を向けるのはお止め下さい!」

グスタフが制止すると、兵はその動きを止めた。


「ロベルト・ラインザック!王女である私の言葉が信用できないのですか!」

「馬鹿が、いいかよく聞け!ゴヒョウの街が落ちてから数日。我が国は魔王を倒さんと兵を集めた。ところが如何か、魔王共は一向に姿を見せない。これは魔王が我が神聖ラーナ王国に恐れをなし、兵を引いたに他ならない。だいたい神聖・・ラーナ王国の神官達が知らぬというのに、”神の御使い様”などと、かたる不届き者めが!!…者ども行け!!」

「「「「ハッ!!」」」


「お止め下さい、ロベルト様!お前らも止めよ!」

「煩いぞグスタフ!邪魔をするならお前も同罪だ!…皆の者!俺の命令を聞けぬなら、皆、罪人として処罰する!一族全員だ!!命令だ!これは命令なんだぞ!!」


自分の命令を聞かない兵に苛立ったのか、狂人のようにわめくロベルト。

ロベルトとグスタフの言葉に、困惑した顔をする兵達。

しかし、ロベルトの背後には伯爵家も存在する。当然ロベルトの命令を順守するしか無い。



私達を捕らえようと、周囲から迫ってくる兵達。


ここでサラが私の前に立った。

「姫様は《転移》でお逃げください」


「サラ!」

「ここは私が。ご主人様にあだなす者は、私がお相手いたします」

そう言って、短刀を構えるサラ。


「傷付けてはなりません、サラ。ここは私が…❛ウオーター・シールド❜!!」

水属性の私が使える防御魔法を唱えた。マサト様より授かった杖の御蔭で普段より威力が強く、周囲をグルリと水の防壁が覆う。


「斬れ斬れ斬れ斬れ!!…百人以上の斬撃があれば、こんな防御魔法、数分で破れる!オラオラ、斬れ斬れ斬れ斬れ!手を抜いた者には罰を与えるぞ!」


執拗な斬撃に耐えられず、とうとう私の❛ウオーター・シールド❜が破られてしまった。


「ふん、修道女の割には、なかなかの防御魔法じゃないか。だが、今ので敵対行動と見做(みな)した。もう捕虜にする理由も無い。…皆殺しだな。殺してしまえば王女かどうかなど、分かるハズも無い…」


「自ら煽っておいて巫山戯ふざけるな!❛疾風❜!イヤッー!」

ロベルトに切り付けるサラ。

キンキンと金属音が聞こえるが、サラの刀は(ことごと)()なされている。

悔しいが、剣の腕はロベルトの方が上のようだ。


「ほ~ぅ、その短刀、中々の業物だな。だが、素直に剣を合わせなければ、往なす事など他愛もないんだよ!…その刀、僕が貰っておいてやるよ」

「誰がお前などに!!」

「それにな❛疾風❜なら、僕にも使えんだよなぁ…❛疾風❜!」


「なっ!!」

ザシュ!と言う音と共に、サラが斬られた…かのように見えた。

「へぇ、装備も中々の物。腕の一本も斬ろうと思ったんだがな…」


後退る私達。

…もう後が無い。


サラと私は示し合わせた様に、二人でマサト様の上に覆いかぶさった。

「チッ!何だこりゃぁ!見えない壁のようなもんがあるぞ!」

「此れは!…ロベルト様、神の御業に違いありません!」

「馬鹿が、そんなもんは御伽噺の中だけだ!何かの魔法に違いない!オラ!皆、斬れ斬れ斬れ斬れ!」

「「「「だ、だめです、剣が折れました!」」」」

「「「「…槍も折れて、使えません!」」」」

「「「「…こ、これは!…」」」」



中々訪れない斬撃。不思議に思い目を開けると、周囲に何か・・が存在し、兵達を遮っているようだ。


『”神託の巫女”アリスティア・ミドルランドよ。よくぞ其の者を庇いました』


額が熱くなったと感じた後、頭の中に直接、御言葉が響いた…。

「嗚呼、神アマテラス様!どうか、どうかマサト様をお助け下さい!」

『お聞きなさい。先ずはその頭巾を取り、皆に聖印(しるし)を見せなさい…』


はい。はい。お言葉に従います、アマテラス様。

その場に立ち、装備の頭巾を取る。

兵達に向かい、アマテラス様の御言葉を伝える。

「…皆の者、よく聞きなさい。私は”神託の巫女”アリスティア・ミドルランド。額の聖印(しるし)が、その証拠です」

「な、なんと!」

「「おお~っ、額の丸十字が光っておるぞ!!」」


「この大惨事は、魔王を倒すために避けられなかったもの。ですが、今から、アマテラス様が御慈悲を下さいます。見なさい」

そう告げて荒廃した地を指し示す。


一面が一瞬眩い光に覆われた後、大地も山々も川も、元の風景に戻っていた。


焼け落ちた家や、死体を残して…。


「「おお~っ、本当に神の御業だ!!」」

「「巫女様、我らをお助け下さい!!」」


周囲にどよめく声。地面にひざまずく兵も現れた。


「ハ、ハハハハハッ…、う、嘘だ、嘘だ!嘘だ!!さては、お前が魔王だな!」


懲りずに斬りかかってくるロベルト。

ポキリと折れる剣。

「ハハハッ…、嘘だ、嘘だ、嘘だ…」

ドサリと尻餅をつき、股間からは、大地を湿らすものが滴る。


「ああ、言い忘れました、ロベルト様。このサラの首に掛かる宝珠。一つは[映像の水晶玉]と申しまして、[受信の水晶板]と対になるもの。これは映した映像を遠くで見ることが出来るアイテムです。今までの事は全て・・、アリスティア・ミドルランド王女が知見しておりますよ?言い逃れは出来ません」

これは私の言葉だ。もうアマテラス様の御言葉は聞こえていない。


「ヒィ!…ヒャァァァ!!…」

尿を撒き散らしながら、ロベルトは何処かに走り去っていった。


「さて、グスタフ様。私達を伯父上(神聖ラーナ王国)の所まで、御案内下さい」


「はっ。御意に御座います!者ども、丁重に御案内申し上げろ!」

「「「「はっ!!」」」」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ