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03 魔物として生きる

 さて私はモンスターになってしまった。


 可能ならば人間に戻りたいが、それは今すぐどうにかできる事ではない。


 ならばモンスターとして生活しなければならない。


 はて、野生の魔物とはどのように生きるものなのだろうか?


 生活と言えば衣食住なわけだが……。




※※※




 化物になって多分半年ほど時間が過ぎた。

 

 結論としては生きるだけなら人間時代よりも楽だった。


 はっきり言って獅子鬼(ナラシンハ)の肉体が超スペック過ぎる。


 元人間としては余りの違いに溜息がでた。


 同じこの世界に暮す生物だと言うのに、造物主は何故にこれ程の格差をつけたのか。




 まずは衣。


 基本的には不要である。


 下手な防具より生来の皮膚の方が頑丈な為、身体の保護など考える必要がなかった。


 また、この肉体は暑さと寒さの両方に強いらしく、常時素っ裸で過ごしても体調は崩れない。


 この様に機能面から見た場合、今の私に衣服は必要ない。


 しかし元人間としては、雄の象徴を剥き出しのままぶらつかせるのはどうにも落ちつかなかった。


 なので大きめの熊を狩って毛皮で腰巻を作り、以降愛用している。


 着替えにもう何着か欲しいところだ。


 同じ柄ばかりというのも面白みがないので、次は虎の毛皮で縞模様の腰巻とかどうだろう。


 問題は新たな肉体がご立派過ぎて相当大きな毛皮が要求される事である。


 かなり育った獣でない限り、腰巻一つ作れないから困る。




 続いて食。


 獅子鬼の身体性能が内外両方の面で圧倒的過ぎる。


 故にこれも苦労することはなかった。


 まずは胃腸が強靭である。


 分かりやすく言えば、何でも食えるという事だ。


 人間の頃に食って食中りを起こした茸や木の実、食べる事が自殺行為と言える毒持ちの生物すら関係無しに消化してしまうから凄まじい。


 石とか鉄などの鉱物類でもない限り、食っても平気なのではなかろうか。


 もしかしたら鉱物類を口にしても大丈夫だったりして……いや、幾らなんでもそれはないだろう、たぶん。


 次に五感の鋭さが異様である。


 人間であった頃とは段違いで、その気になればどこまでも見通し把握できる知覚力。


 これを活かせば、森を適当に徘徊すれば鳥獣の類が幾らでも見つかるのだ。


 臭いで分かる、音で分かる、遠かろうが暗闇だろうがはっきり見える。


 発見してしまえば狩ったも同然である。


 鳥獣にせよ、魔物にせよ、私より強い生き物はこの近辺に居ないから戦えば確実に勝てる。


 地を駆けることで私を上回る生き物は居ない為、一度発見したら絶対に逃さない。


 鳥が空に逃げたとしても魔力を乗せた咆哮一発で落ちてくる。


 猟犬を連れた一流の猟師でもこうはいくまい。


 唯一、厄介だと感じたのは魚獲りぐらいか。


 魚も魔力を込めた咆哮を使えば簡単に獲れる。


 水面に向かって吼えれば衝撃波が伝わり大量の魚が浮いてくるのでそれを集めれば良い。


 良いのだが、獲れ過ぎてしまう。


 偶々見つけた池でそれを試したところ、一度目は大漁、二度目以降は収獲無しという結果だった。


 なんとただ一度の咆哮で池の魚を獲り尽くし、絶滅させてしまったらしい。


 泳いでいる所を手掴みで獲る事も可能だが、ちまちました方法では時間が掛かり過ぎる。


 この巨体を満足させるにはかなりの量が必要なのだ。




 最後に住。


 これは少しばかり悩む事になった。


 実は今も悩んでおり、完全には定まらずというのが現状だ。


 住と言えば家屋を連想するだろう。


 だがモンスターである私にとって住とは寝床となる場所ではなく、生活エリア全体を指す。


 ようは縄張りである。


 縄張りを選ぶに当たり最低条件は食料を安定して確保できる事だが、これが中々難しい。


 私が調子に乗って飲み食いすると鳥獣にせよ植物にせよ、簡単に食い尽くしてしまう。


 あらゆる面で超性能な我が肉体だが、この燃費の悪さだけはきつい。


 正直、私になる前の獅子鬼がどうやって己を維持していたのか謎である。


 こんなものが近くに居ては生態系のバランスは直ぐに崩壊してしまうだろうに。



 何か特別な生命維持方法でもあるのだろうか?



 まあ、今いる場所で食えなくなったら別の場所に移動すれば良いだけなのだがね。


 旅から旅へという生活は悪くないが、別の強力な魔物とぶつかる可能性も出る。


 安全性を考えると今のエリアを上手く維持していきたいところである。


 将来のことを考えるなら、いっそ農耕も考えるべきだろうか?


 冒険者暮らしの長い私だが、元は農民出だ。


 幼い頃には家の手伝いで畑仕事をよくやったものだ。


 最低限の知識は持っているし、育てたい作物の種と農地に適した場所があればどうにかなると思うのだ。


 この肉体をフル活用すれば、きっと一夜で広大な畑を作れる。


 小麦を育ればいつかパンを食べられるだろうか。



 ……ああ、人間の食事が懐かしい。



 味付けなしの食材丸齧りは今一美味しくないのである。


 香辛料まで欲しいというのは贅沢だろう、だがせめて塩が欲しい。


 探せば岩塩くらい手に入るだろうか、それともいっそ海まで出向いて海水でも汲んでくるか?


 可能なら酒だって呑みたい。


 一人山野でごろ寝していると人恋しくなる時もある。


 何処かに安全で、食物が美味く豊富で、私のような怪物でも相手してくれる気の良い隣人が住まう場所は無いものか。






主人公の強さ

胃腸  金属でも溶かすくらい強い

腕力  樹齢うん百年の巨木を引っこ抜いて振り回せます

脚力  四股踏みで地震が起きます

頑丈さ 隕石食らっても死にません

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