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超短編

学校がいやだった。

作者: しおん

学校が嫌だ。

そう思ったのはずっと昔からで、突然爆発したかのように累積したものが溢れ出てきた。


世間に対する不平不満。自分に対するコンプレックスや劣等感。友人に対する猜疑心。

それをすべて感じたのは、一日の大半を過ごしている学校で、長い時間いるのだから当たり前といえばそれまでなのだが、その頃の僕はそんな事を考えられないほど学校を嫌いになっていた。


引きこもり。


それは、世間的に悪い印象を抱かれるもの。つらい世の中から逃げて、ぬくぬくと温かい自分の殻の中で過ごしている人間の事。


一人で過ごしている時間というものはものすごく長く感じて、ゲームやネットなどのあらゆる現実逃避を駆使して時間を忘れた。

何もしていないと、今にも悪い考えに、最悪の予測に潰されてしまいそうだったから。


目を逸らして、目を塞いで。

あらゆる手段を駆使して、知らないフリをした。

なんの意味もないことを、知っていたけれど。知っているけれど。


学校の先生は、ゆっくりでいいから登校して来いと言う。

親は、無理にいかなくていいと言う。

どちらも同じ"大人"なのに、どちらも違う事を言う。僕のことを思ってじゃない、自分の良心の為にそう言う。


はじめは訳がわからなかった。

そして手を差し伸べてくれると思った友達は、誰も訪ねては来なかった。つまり、それぐらいの価値だったって事だ。その程度の存在だったって事だ。


その事に、悔しさなんてものより虚しさを強く感じる。

思われていなかった事よりも、思われていると思っていた自分が情けない。


教師は義務として、心配する。

親は義務として、世話を焼く。


ひねくれてた自分はそれを大層気に入ってしまった。

だから酷く当たれたし、だから無下に扱えた。どうせ心にもない事なんだろうって。どうせニセモノなんだろうって。


少なくとも教師は、偽善の塊だった。自分の評価の為、それだけの為に無理やりにでも学校に来させようと必死な様だった。

結果的に僕は一度もいかなかったけれど。


ある時友人がメールをくれた。


『何してるの?暇なら学校こいよ。待ってるから』


無愛想なメールだった。

件名もない、絵文字もない。

ただただ白い背景に、黒い文字が並んでいるだけの可愛げのないメールだった。

でもそれは、人生を変えるメールだった。


売り言葉に買い言葉。

暇を持て余していた僕は学校へいった。何も変わってはいなかった。


僕が思っていたほど誰も僕のことを気に留めなかったし、僕が思っていたほど学校生活に多大な変化はなかった。


「よぉ。おはよ、やっと来たか」


そう声をかけて来たのは友人で、記憶より髪も背も大分伸びていた。


「ちょっと見ない間に縮んだんじゃね?」


カラカラ笑いながら言う彼に


「お前が伸びたんだろ」


と、当たり前の様に言葉を返す。

前と変わらない日常に、逆に戸惑うぐらいだった。


今まで抱いていた不満やら自己嫌悪やらが馬鹿らしくなる程に日常生活は何事もなく進んでいた様で、自分が思っていた以上に自分は居なくてもいい存在で、誰も関心を持ってはいないんだと察した。


でもまあ、それでよかった。

期待は裏切られたけれど、結果としては最良だった。


過去のことに意図的に触れないのか興味がないのかはわかりかねるが、何も触れて来ない事が有難い。自分の事ながらいい友人を持てたと思う。


自分が必要だと思う時、何も言わずに手を貸してくれる。そんな友人が一人いるだけで、僕は未来を、これからを生きていけるのだから。


読んでくださりありがとうございます。


誤字訂正しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 友達は数より質ですね。 読んでしみじみ実感しました(ToT)
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