2-33 まさに自業自得というやつか!
いつもお読み頂きありがとうございます。
今回はいつもより短かいです。
次話は頑張りますので、お見捨てなきよう宜しくお願い致します(>_<)
ここ王都フェニックスには二の段と呼ばれる貴族の屋敷や重要施設がある場所へ行くための門がある。
通称、二の門。そこでは今二人の男が睨み合いを続けている。
片方の男は二の門を通行する人物をチェックしている騎士。
その重要な責務を帯びている以上、不審人物など通せない。
見るからに怪しい人物が分不相応なモノを持っているのだから引き留めるのは当然のこと。
しかもなにやら余裕の表情で煽りまで入れてくるのだから訝しんでも仕方がない。
その見るからに怪しい人物こと俺としては、お気に入りの着物アーマーと刀のせいで、いつも新人冒険者や下男と思われてしまうという鬱憤を晴らすべく絶賛演技中である。
…実際に絶賛しているのがエドくん一人なのでとても悲しい。
ただ、観客の女性たちの中から息を呑む声は聞こえてくる。
あそこにいる目を大きく見開き両手で口を押えているキュートな女の子は、俺のことを心配しているに違いない。
そんな彼女に言ってあげたい。
『大丈夫。君のためにきっと勝つよ』
まあ、思い過ごしの可能性も無きにしも非ずなので言うわけにはいかない。
それ以前に勝負ごとですらない。
一触即発の雰囲気を醸し出す俺たちに、面白がってさらに煽ってくる野郎共もいる。
ただその内容は騎士たちに向けてのようで、俺を切り捨ててしまえという声が一番多い。
恐らくあの野郎共は馬鹿で阿保な冒険者たちと同様で、ベアトリスとギーゼラという美少女と美女を連れている俺に嫉妬しているだけだろう。
そんな妬みの声を乗せた風が心地良い。
ベアトリス先生の講習会は、ちゃんと気遣いがされているようでエドにしか聞こえていない。
その内容が俺にも聞こえたのはただの偶然。
予想としてはそろそろ俺の隠れファンから声援が贈られてくるはず。
それを聞き逃さないために、たまたま聞き耳スキルをアクティベートしていたのである。
しかしなぜか声援はおろか、まだ黄色い歓声も聞こえてこない。
それと意外にも、この中隊長は冷静である。
不穏な動きを見せれば容赦はしないという姿勢を崩していないが、俺の態度に歯噛みはしても取り囲む以上のことはしてこない。
『この無礼者が! 部下が戻るまで待つ必要などない。召し取ってしまえ』
わらわらと騎士たちが動き出す。
『俺を怒らせるとは運の悪い奴よ』
すらりとコテツンを抜き放つ。
『ま、まさか…そ、その刀は!』
驚きの表情を見せる。
『知っておるのか?我が愛刀コテツンを。しかし先に抜いたのはおぬしら。抜かれた刀は血を見ずにして鞘へは帰らぬ』
不敵に笑う。
『ち、畜生。者どもかかれー』
慌てて部下へ指示を飛ばす。
『ふっ…愚かな。えい! やー!』
余裕の表情でバッタバッタとなぎ倒していく。
『うわー、やられたー』
最後の一人となった中隊長がパタリと倒れる。
『安心せい。みねうちじゃ』
くるりと刀を返して鞘に収める。
「きゃー、お侍さまー! すてきー!」
町の娘たちは素敵な感触のモノを俺に押し当てもてはやす。
――ハッピーエンド。
妄想による脚本ではこうなるはずだったのだが、そんな単純な男でもないようだ。
こちらから武器を抜いて襲わない限りは自重するのだろう。
それに逃げられないように取り囲んでいるのだから、いきなり歩き出せば武器くらい抜いて牽制するのも当然である。
つまりこの中隊長は無礼で出世欲はあっても理不尽な真似をする人物ではないということだ。
それにしても、公爵の直筆サイン入り証書を所持しているのが、それほど信じられないことなのだろうか。俺としては並んでまで手に入れた人気女性声優の直筆サインの方がよほど価値があると思う。
まあ、それはどうでもいいとして、価値観の違いというような話でもないだろう。
妙に確信的である中隊長はおろか部下の騎士たちも、その判断に疑念を抱いているようには見えない。
とすると、何か根拠があるのかもしれない。
公平に考えて、何らかの要因で俺たちを疑うに値する根拠があるならば、騎士たちも丁寧な対応など最初からするわけがない。それでいて煽られても襲い掛かって来ないのならば十分公正な態度だと言えるのかもしれない。
しかし俺たちは無実。
職務を真っ当に遂行中であることに免じてこの辺で勘弁してやるか、あくまで無実だからやりたい放題するべきか。
うーむ、非常に悩ましい。
中隊長は俺のような若造相手でも隙を見せようとはしない。
それもそのはず、中隊長とほか数名は身分証を確認しているので、俺のレベルが70近くであることを知っているのだ。
ベアトリスとエドも中隊長自身に匹敵するのだが、それが余計に怪しさを感じさせる原因となっているのではないかと今更ながらに思う。
これ以上騒ぎが大きくなればアウルにバレる可能性もある。
そうなると再三に渡り自重を命じられているのだから、ひじょーにマズイことになる。
名残惜しいが、ここらが潮時だろう。
これ以上は何もしないと伝えてあげるとしよう。
一人でニヤけたり考え込んだり悩んだり若干青くなったりしていた俺に引き気味となっている中隊長へ話し掛けようとした。――その時であった。
門の辺りが騒がしい。
なにやら中から、つまり二の段の方でなにか起こっているようだ。
「さすがお早いですねー。ご主人さまー、クリス様がお越しになられましたよー」
「…はぁ? …はぁ!?」
この『はぁ?』を二回言うのも、言ってみたいランキングに入っているのだが、それはあくまで他人を揶揄うためのもの。今回は驚きのあまりに素で出てしまったのでカウントはされない。
「なななんでクリスが来るの?」
今後の予定を考えればクリスだけではなく、アウルやウスターシュすらも忙しくて来れないだろうと思っていた。確認してくるだけか、せいぜいほかの執事を連れて来るだけと高を括っていただけに、これは非常事態と言える。
レーダーで確認すれば、こちらに向かっているのが本当にクリスなのかすぐ分かるのだが、怖くて見ることが出来ない。
ベアトリスがいち早く察知できたのは、日頃からの諜報活動による成果が出て、すでに聞き耳スキルを取得しているからである。しかも使用頻度が俺よりも多いためレベルも上がっている。
同じく聞き耳スキルを使用していたにも拘らず俺が気付けなかったのは、意識が全く別の方向に向いていたからだ。もちろん周囲の女性たちにである。
能力の全てを振り絞って耳を傾けると、二の段の中から門に向かって走る馬蹄が響き渡っている。
しかもかなりの速度で近づいている。
常識的に考えて貴族が多い二の段でこんな速度で走ることなど通常では有り得ない。
事故など起こしたら大事になるし、それ以前にほかの貴族がこのような蛮行を許しはしないだろう。
しかし、何事にも例外がある。
例えば火急の要件を携えた王城へ向かう使者とか、稀に結婚を間近に控えた金髪の美女もいる。
「えっ? ご主人さまは、なんでクリス様が来ないと思ったんですか?」
冷静になってよ――――く考えてみると、騎士たちがどう説明したのかは分からないが、その内容に関係なく俺が門で立ち往生していると聞けば、クリスなら自分で迎えに行くと言い出すに決まっている。
もちろん誰かは止めただろうが、クリスを止められる人物がいるとは思えない。
――――なぜこんな簡単なことに気が付かなかったのだ!
調子に乗って名台詞を吐いていた自分を時間の許す限り問い詰めたい。
だが、時間は過ぎ、すでに手遅れ。剣呑とした空気が辺りを包み込んでいる。
この状況、つまりなぜ剣を抜いている騎士たちに取り囲まれているのか説明を求められたら俺の命運も尽きてしまう。
「エ、エドくん? ずいぶんと冷静のようだけど、クリスが来るって予想してたの?」
「そりゃあ、クリスティーネ様が心底慕っている旦那に何かあったと聞けば真っ先に飛んでくると思っていましたが?」
「――――じゃあ、なんで俺を止めてくれなかったの!?」
気がついていたのであれば止めてくれても良かったのに、エドは賛美まで贈っているのだ。
「旦那が楽しそうなので邪魔してはいけないと思いまして。もちろん従者として当然応援もしますよ」
なにそれ! さっきと同じ言い訳じゃん!!
「それにご主人さまは、クリス様に怒られるのがご趣味のようなので、てっきり知っててやっているのかと思ってました」
可愛く微笑むベアトリスだが、そこは断固否定させて欲しい。
――欲しいのだが、今までの所業を振り返ると心当たりがあり過ぎて否定しきれない。
クリスにバレないように、この場をなんとか誤魔化さねばならない。
そのために残された少ない時間で布石を打つしかない。
俺の大切な仲間であるこの二人は全く役に立ちそうもない。
ギーゼラは俺たちの会話の意味が分かっていないので除外するしかない。
そうなると頼れる人物はただ一人。
「ちょっと、そこの隊長…さん? 相談があるんだけど」
診ているので中隊長の名前も分かっているのだが、そこは暈して話しかける。
「なんだ? 今さら命乞いか?」
彼も門の方でなにか起こっていることに気付いたが、視線は俺から外していない。
混乱に乗じて逃げようとしていると考えているのかもしれない。
「違う! いや、ある意味そうなんだけど、…そんなことじゃなくて! さっきの話、全部なしにして!」
「…さっきの話とはなんだ?」
突然の申し出に対し慎重に問い直してくるが、時間がないのだから察してほしい。
「だから、首がどうとか吐いた唾が――とか。それ全部なしにして!」
「それでなにか変わるとも思えんが?」
変わる! と叫びたい。
上手くいけば俺と中隊長の双方が助かるのだ。
「それでも、いいから! それと…これから来る人物とは俺が話をするから一言も喋らないで! いい? 分かった?」
鋭い視線を飛ばして中隊長を見据える。このときは無意識だったが、身体中に魔力を巡らして本気で睨んだせいか【威圧】というスキルを習得していた。
「お、おう。わ、分かった」
本来ならばこんな話に頷けるはずはないのだが、俺の必死の形相と【威圧】の効果で中隊長は押され気味となり、思わず受諾してしまう。
そして時間一杯となった。
我が最愛の妻のご登場である。
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