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2-20 ウチの嫁って偉大だとつくづく思う!

いつもお読み頂きありがとうございます。

楽しんで頂けると嬉しく思います。


――只今凄く眠いです。とっても眠いですw


 さて、困ったことになりました。

 これから俺は世の男どもの嫉妬、憎悪、誹謗などの負の感情の的となってしまうのです。


 普段から美女を囲って、冒険者ギルドに出入りをしていました。

 この上、エルという高嶺の花を奪われ、さらに冒険者ギルドの癒しであるドリアーヌを奴隷として手に入れた俺を奴らはどう思うでしょう。

 きっと血の涙を流して殺意すらもって俺を見るに違いありません。


「えーっと…。もし、借金のことや村を助けたことに恩を感じて、奴隷になりたいと言ってるなら気にしなくていいんだよ。依頼を受けてちゃんと報酬まで受け取ったんだから」


 無駄だと思いつつも抵抗を試みる。

 それに、こんなことでドリアーヌを縛りたくないと本気で思っている。


 その問いかけに答えたのはドリアーヌではなく結婚間近の嫁たちだった。


「あなたはホントに! いつになったら女心を分かるようになるのですか!」


 クリスが女心を理解した。

 ぐはっ…。ヨウスケは53万のダメージを受けた。


「あのなー、以前ならともかく今はそんな理由で奴隷になりたいと言ってるわけじゃないぞ、このニブチンが!」


 エルが容赦のない言葉を吐いた

 ヨウスケはトドメを刺された。 自宅へ帰る or 地球へ帰る


 いや、まだ帰らないからね!

 

「いいか、ヨウスケ。ドリアーヌはお前さんが自分をあたしに売ってくれたおかげで、奴隷にもならず職を失わないで済んでいる事を知っている。戦闘の経験はないから狩りに連れて行かれても役に立たないことも分かってる。そして、お前さん、彼女の村の支援をあたしに依頼したろ?」


「――ちょ、ちょっと、エル! それ内緒って言ったじゃん!」


「あたしは言ってない。――が、依頼には発注者が必要なんだよ。ギルド長のあたしが個人出資をしてゆかりのない村の支援なんて立場上出来ない。だから、依頼者はお前さんにしたんだ。――そして、ドリアーヌはギルドの職員。受付もしてるが事務仕事もしている。そのときに見たんだろ」


 あ――――…当然と言えば当然か。


「そして、お前さんが討伐した獲物を持ち帰らず、その場で解体して村人たちに肉を配っただけではなく、材料を提供して保存食まで作ってあげたんだろ。後日、村の様子が心配で休みを取って見に行ったとき、それを彼女は知ったんだ。そしたら、ドリアーヌはなんて思う?」


「…あ、ありがとう?」


 え?? なに、その残念なモノを見るような目は。


「……まさか、ここまでとは。…嬢ちゃん、すまんが続きを頼む。あたしちょっと疲れたわ」


「エル様、申し訳ありません。――まったく、あなたは! いいですか、最初からいきますわ」


 なぜか怒られているが、ここで口を挟むとロクな結果にならないことは明白なので黙って聞く。


「あなたはこの娘が自分の村の救援を依頼したとき、報酬も定かではないのに条件も付けずにすぐ受けてあげました。そして即座に対応して村を救いました。ここまではいいですわね?」


「はい」


 大人しく返事をする。


「そのあと、食料を提供しましたわ。そして救援物資が来るまでの繋ぎとして保存食まで作ってあげました。それも自らの手でですわ」


「それは…」


「それはみんなでやった、とか、どうせ言うのでしょう。でも、それは違いますわ」


 ん?? いや、みんなで手伝って作ったよね?


わたくしたちのリーダーはヨウスケで、みなリーダーの指示に従ったまでです。あなたが言わなければ魔獣を討伐したのち、そのまま帰っていますわ。そして、その後の救援物資もあなたのお金で送られているのですよ!――ああもう、はっきり言いますわ。この娘はあなたを慕っているのです!」


「は? …え? ……――ええええええ!?」


 まじか――――!


「いや、そこ驚くとこじゃないから」


「だって、ご主人様ですもん」


 ちょっとそこの二人。

 エドアルドくんとベアトリスさん。小声で言ってるけどしっかり聞こえてますからね!


わたくしはあなたを愛していますわ。『どこを』と聞かれれば真っ先に言えることがあります。それはあなたの打算のない優しさですわ! エル様もアルヴァもベアトリスも同じことを言うでしょう。そして、その優しさに助けられたこの娘があなたを慕っていても何の不思議もありませんわ!」

 

 横目でドリアーヌを見ると瞳には涙が溜まっている。


「あの、ドリアーヌ…」

 

 向き直って、話しかける。

 なんと言えばいいか分からないが、話をしなければならない。しかし、言葉が続かない。


 言葉を詰まらせた俺を否定と取ったのか、不安げにドリアーヌの方から話しかけてきた。


「ヨウスケ様は私などに興味はないのでしょうか? クリスティーネ様にエルヴィーラ様。アルヴァさんもベアトリスさんもみんなお綺麗ですし。やはり、私程度では…」


「――そんなことないよ! だって、スレンダーで可愛いと思って冒険者ギルドに行くたびにチラチラ見ていた純情そうなドリアーヌ18歳に興味がない男なんて…………あっ」


 がああああああ!

 また、やってしまった!


 ホントに俺って本音出しすぎだろー!


 うう…クリスの方を見るのが怖い。

 でも、無駄な足掻きをしても火に爆弾を投げ込むようなものだし。

 大きくなった火は消しにくくなるのが道理だ。さっさと怒られよう。


 こうして馬鹿な事を考えている間にも時間ときは過ぎている。それなのに、地響き(ゴゴゴゴゴォー)が一向に聞こえてこない。それを不思議に思いつつも恐る恐るクリスの方を向いた。


 そこにはオニが…いなかった。

 どちらかと言うとただ呆れている様子だ。


「あのー…クリスさん?」


「なんですか、あなた」


「…怒ってないのでしょうか?」


 やれやれという仕草を見せたクリスは、小さくため息を吐くと仕方ないといった感じで口を開いた。


「あなたが今言ったことなど、とっくに気が付いていますわ」


「え?」


「え? じゃありませんわ! あれがバレていないと思っているあなたの方がおかしいですわ。まったく、最愛の妻の前で他の女性を見てるなんて。何も言わずにおいてあげた寛大なわたくしに感謝して欲しいですわ!」


「…スイマセン」


 全くもって返す言葉がない。


「ホントにあなたは…。ですから、あなたがこの娘に少なからず気があると分かっていました。それにドリアーヌはちゃんと立場を弁えることが出来る娘でしたので、わたくしは受け入れたのです。貴族のわたくしと高名なエル様が妻となるヨウスケの傍に居たいのでしたら、もはや奴隷となるしかありませんから」


 みんな一緒主義の信奉者であるクリスが貴族とか立場のことを言い出すのは奇妙に聞こえるが、実はそういうことではない。


 今更ながら俺は公爵家の息女であるクリスと最強の男の未亡人であり自身も比類ないほどの強さを誇る高名なエルを妻として迎える。


 言い方は悪いが、そこに村を出て街で働く何の後ろ盾もないただの娘を嫁として迎えるとどうなるか。


 当然世間の風当たりは良くないだろう。それにも増して公爵家の息女と高名な女性を妻にしておきながら、ただの町娘を嫁に加えてしまう俺を人々はさげすむだろう。ただ奴隷であれば側仕えとして使っている娘に手をつけてしまったという程度で、これは貴族やお金持ちの商人などの間ではよくあることなので許容範囲らしい。実際には、いずれアルヴァもベアトリスも妻として迎えるが、誰も奴隷を妻に迎えたとは考えない。


 つまりクリスの発言は俺の立場をおもんばかってのことで、俺たちがどう思っているかなどは問題ではないということだ。


「それで、あなたはまだこの娘を奴隷にすることに抵抗があるのですか?」


「ないよ。ありがとう」


 もうクリスには一生頭が上がらないと思った。

 クリスは俺の妻を増やしたいわけではない。俺に好意があって役に立つ女性を迎えているだけなのだ。


 ドリアーヌはただのギルド職員ではあるが、読み書き計算、そして事務仕事が出来る。

 それはいずれ俺が商売をしたいと思ったとき、助けとなるということである。

 

 俺の失言(暴走)を聞いたドリアーヌは頬を赤く染めながら、事の顛末を見守っていたが、俺が受け入れたと分かると即座に跪いた。


「ヨウスケ様。私の事をそのように想って下さっていたと知って、とても嬉しく思います。誠心誠意お仕えさせて頂きますので、宜しくお願いします」


「う、うん。宜しくね」


 目を潤ませ俺を見上げるその顔は本当に恋する乙女だった。


「クリスティーネ様。私のような平凡な女を受け入れて頂きありがとうございます。皆様のようにお役には立てなくとも心からお仕えさせて頂きますので、どうか宜しくご指導下さい」


 クリスは一つ頷くと言葉を返した。


「お立ちなさい、ドリアーヌ。敬意を払うことは時として必要であり大切ですが、わたくしたちは家族となるのですから跪拝などする必要はありません。それと、あなたはあなたに出来ることでヨウスケに尽くせば良いのです。わたくしたちはあなたを受け入れたのですから、自分を卑下するような事を述べるのは許しませんわ」


 男前過ぎる! またクリス信者が増えそうだな。

 俺でも嫉妬しそうだ。だけど、その男前クリスは自分の嫁なのだから、それを誇りに思うことにしよう。


「そうだな。ヨウスケは色々やりたいことがあるんだろ? ドリアーヌの事務処理は優秀だからな。あたしが保証してやる。だから、そういう方面で使ってあげればいいさ」


 エルが絶賛して後押しをする。


「おおー! …でも、いいの? ドリアーヌがいなくなったら困るって言ってなかったっけ?」


 以前、ドリアーヌがいるおかげで、冒険者(男ども)が依頼を受ける数も増えて、仕事をこなすのも早くなったと言っていたのが気になる。


「はっ! 関係ないね。あたしは今期で辞めるし、美人のあたしがこんな大年増になるまで声さえかけてくれなかった不甲斐ないやろうどものことなど知ったことじゃないな。ヨウスケがいなきゃ、このまま枯れるとこだったんだぞ!」


 あはは…私怨が混じってますよ。


 こんな感じでドリアーヌはウチの家族になった。

 しかし、全てが順調というわけではない。


 後ろで膝を着けて両手を地面に落とすベアトリスの「私の順番が遠退(とおの)いた…」という呟きを聞いたとき、掛けてあげられる言葉がすぐには見つからなかった。




 今後の食事には出来るだけドリアーヌも呼びたいが、お偉いさんのエルは別として、ギルドは24時間対応で働く人はシフト制なので食事の時間が合わないことも多い。それに職場の付き合いもあるから毎回呼ぶのも忍びない。


 だから、タイミングが合うときとお休みの日に連れて来るぐらいになるだろう。


 このあとは食事の後片付けを済ませてお風呂タイムとなるのだが、残念なことに今回の修練にはドリアーヌは参加しない。


 王都到着以後は忙しくなるのだから暫くは修練がおあずけとなるだろう。だから、今夜はガッツリイロイロ(すごいエロいこと)したいとエルとクリスが希望したのだ。そこに初心者のドリアーヌを混ぜるのは危険だ。


 本人の希望もあって見学だけは許可したが、エルの本気に刺激が強すぎてトラウマを残さないか心配である。

 

 そして明日はいよいよ王都に到着する。

 遠足の前日は興奮して眠れないタイプなのだが、どうせ今夜は朝まで修練をするのだから問題はないだろう。

 

ドリアーヌをわざわざ奴隷にする理由付けが

必要かなと思って書かせて頂きました。


次話は王都に入ります。

今後とも宜しくお願いします。

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