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2-15 なかなか伝わらないこともある!

 エドの買い物を済ませたあと、必要もないのにほかの店も物色してからみんなのところへと戻った。

 

 すっかり昼食の後片付けも終わっていて、俺の目の前に広がるのは仲間たちの奇行。――傍から見ると異様な光景でしかない。


 言わずと知れた飛ぶための練習である。


 【ジャンプ】から【ハイジャンプ】、そして【浮遊】

 その道のりは長く、まだ誰も【ハイジャンプ】すら取得に至っていない。


 昼食がストレージから出す料理だけだったので、通行人に見られても構わないと思って街道から少し寄せた場所に陣取ったのがアダとなった。――道行く人は完全に変質者を見る目なのだ。

 

 王都とモノケロスを繋ぐこの街道は、途中に幾つかの村や集落があるだけなのだが、交通量はそこそこある。もっとも、徒歩の旅人は少なく、商人や収穫物などを売りに行くと思われる村人の馬車が多い。ときおり何台もの馬車を連ねている商隊も見かけている。


 そういった人たちに見られていることなど歯牙にもかけず夢中で跳ねてる俺の仲間たち。正直、他人のフリをしたいぐらいだった。


 どうせスタミナポーションなど大してないのだから、適度で切り上げさせても問題はない。

 買ってきた品々を取り出しエドへ渡すと、鎧下用の服を残して持参していたリュックサックに仕舞おうとしている。


「エドー、この鞄使って。それだと全部入んないでしょ。兜も入れておかないといけないし、盾やマントも使わない時は邪魔だしね」


「え!? それ魔法の鞄ですよね? い、いいんですか?」


 元々無駄に大量に作ってしまったので問題は全くない。女性には肩掛けポーチ、男性にはウエストポーチを常備させているし、着替えなどの荷物は俺とクリス、姉妹とフローラ、アウルとウスターシュでそれぞれ一つずつ魔法の旅行鞄に入れている。

 なので、実質三つしか使っていない。これは見せる用なので常時馬車の中に置いている。


 そのほかの旅をしているなら積んでないと怪しまれそうな物、水樽や食料が入ってる木箱などは連結した荷車に載せている。


 エドに渡した盾は、以前フローラが使っていた物なのでかなり大きいが、幸いにも旅行鞄もデカイ。

 ギリギリ入る大きさだったので、『こんなこともあろうかと大きい鞄にしておいて良かった。さすが俺』と、あと10個以上余っている鞄のことは無視してひとり頷いている。


「あとウエストポーチも渡しておくね。ポーションや小物とかなら結構入るから。他にも念の為に非常用の水や干し肉とか数日分は入れておくようにして」


「旦那…。今更ですけど、ホントに凄い人ですね、いろんな意味で」


「そう? まあ、こういう方面には才能あったみたいだからね。そう言ってもらえると嬉しいよ」


 いろんな意味の内容は気になるが、ここはスルーしておいた方がいいだろう。


「じゃあ、準備できたら出発しよう」




 アウルたちに馬車を任せてクリスとベアトリス、そしてエドを連れて森へ飛んだ。――楽しい耐久実験のお時間だ。


「さて、それじゃあ、エド。そこに立ってて」


「え? 脱がなくていいんですか?」


「着たままでいいよ」


 なぜか慌てるエド。


「ま、まさか着たまま攻撃を受けるんですか!? だ、だって、旦那は見せてくれるって……」


「当たり前じゃん。何言ってるの。着たままの方がよく見れるでしょ?」


「なっ!? ……旦那。あんた悪魔だ」


 何をいまさら。俺の二つ名は【悪魔の局長】である。


「うん、そう呼ばれているらしいね」


「開き直られた! ――って、まあそりゃそうか。防御力だけ見たってどれぐらい衝撃があるのか体験しなきゃ意味ないもんな。――分かりました! でも、手加減はして下さいよ!」


 無論言われなくても手加減はする。クリスたちにもちゃんと言ってあるので大丈夫なはずだ。


「じゃあ、私からいくよー」


 エドはベアトリスの方を向き盾を構える。


「最初は弱い魔法からねー。アイスアロー!」


 アローとは言いながら太めのツララほどある物を数本出現させて飛ばしている。


「うおおおおー!?」


 エドは叫び声を上げながら盾でそれらを受け止め、そしてアイスアローとは名ばかりのツララが砕けた。


「エド、大げさよー。それただの氷なんだから、そんなんでご主人様の魔法がかかってる盾が壊れるわけ無いでしょー」


「いやいやいや。ベアトリス姐さんの魔法は何度か見させてもらってますけど、見るのと受けるのじゃ大違いですって。それに、ほかの魔法使いはそんなに早く発動させられないですよ!」


 早くも泣きが入るエドだが、仕方のないことだと思う。

 実際、魔法の攻撃を受ける機会なんて滅多にないことだ。元々魔法を扱える者は少ないのである。エドクラスの冒険者たちのパーティーに、魔獣などにダメージを与えられる程の攻撃魔法が使える者がいたら、かなり運がいいと言うべきだろう。


 ただ魔法使いには魔法使用によるMPの消費という大きな問題がある。練習にMPポーションなど使う人など俺たち以外いないだろうから魔法のレベル上げにはどうしても時間がかかる。

 狩りへ行ったとしても切り札とも言える魔法による攻撃は温存されるのが常だ。 


 そうなるとウスターシュほどの魔法使いなど稀有な存在で公爵家という大家にすら雇われるのも道理である。


 また、エルが言っていた通りだった。

 発言することで魔法の発動が早くなっただけではなく精度まで格段と良くなった。


 その後、中二病の先達である俺が率先してラノベとマンガから得た数々の優秀な魔法を教えて、みんなにイメージトレーニング(中二病の感染)をさせていたのだ。


 当然、生み出された魔法の命名にも多大なる貢献をしている。


 その結果、ベアトリスがただの氷と言っても、エドにしてみれば自分が知っている魔法より早くそして威力も高い攻撃を受けたことになる。


 しかし、こんな程度では防御力など分からないだろう。


「じゃあ、次いくよー。次はもうちょっと威力上げるからしっかり盾を構えててねー」


 エドは先ほどより力を込めて盾を前にかざす。


「アイストライデント、スクリュー!」


 太さは先ほどと同じぐらいだが長さは倍以上で、さらには魔力が込められ強化された氷の三叉の槍が出現。

 そして、回転しながら恐ろしい速度でエドへ向かっていく。


「あ゛――――――!!」


 エドは驚きだか気合だか分からない奇声を上げながら受け止めた。

 数センチほど後ろへ押されているが踏ん張りを効かせてなんとか凌ぎきる。


「はあはあはあ……死ぬかと思った…」


 息も絶え絶えのエドを見て、ちょっとやりすぎかなと思っている間に、次の攻撃が告知された。


「それじゃあ、次最後ねー。身体がはみ出ない様に盾を頭上にかざしてねー。いっくよー」


「え!? ちょ、ちょーっとまぁーーー……」


 エドの叫びも虚しくベアトリスは魔法の発動体勢に入る。

 ――慌てて両手で盾をかざしている。


「ソードアーツ、アイス!」


 ベアトリスの発言と共にエドの頭上に10本程の氷の剣が出現した。


「ハードレインー!!」


 気合を込めたベアトリスの言葉は、それらの剣を落とすのではなく、叩きつけると言う意味だった。


「ぎゃあああああ――――――」


 何本かは地面に突き刺さっているが、ほかは全て盾に弾かれてエドは無傷ではある。――が、問題はそこではない。

 顔面蒼白で盾をかざしたまま完全に固まっている姿を見ると明らかにやりすぎ感がある。


「もう。エドはホント大げさなんだからー。ご主人様ー。魔法でのテストはこれぐらいでいいですか?」


「あ……うん。――べ、ベアトリス…。手加減してって言ったと思うんだけど……」


「はい、ちゃんとしましたよ?」


 今のどこに手加減があったのだろう?

 そんな疑問が顔に出てしまったらしい。


「一番得意な風魔法は使ってないですよ?」




 俺はもっとしっかり説明しておけばよかったと後悔をしていると二番手からの声が掛かった。


「エドアルド。次はわたくしの番ですわ。早く盾を構えなさい」


 未だ固まっていたエドだが、クリスの声で即座に盾を構える。過去の恐怖体験により本能でクリスの声には反応するカラダになってしまったようだ。


「クリスー! ちゃんと手加減してよー! 威力は抑えて、全力は出さないでね!」


「わかってますわ、あなた。エドアルド、行きますわよ」


 ――と、仰られたクリスはダッシュを使いエドに迫るとそのまま剣を振り下ろす。そして即座に横に薙いだ。

 盾が剣を弾く金属音が森に響き渡る。――その音が消えるのを待たずして次の攻撃が襲う。

 もう、そこからは剣戟の乱舞だった。


 エドの心中を察するなら、生きた心地はしていないだろう。 

 もちろん、それらの攻撃は盾へと集中しているのだが、そんなことは何の助けにもなっていないと思う。

 大きなカラダを隠しきれるわけがないのに、盾の内側に入り込もうとして全身を縮こませている。


「ちょ…ちょっと、クリスー! ストーップー!」


 攻撃の手を止めて振り返るクリス。いきなり止められてちょっこりご不満の様子だ。


「なんですの、あなた?」


「て、手加減してって言ったよね!? 全力は出さないようにって!」


 どう見ても本気の剣戟であった。俺ですら、ほとんどの剣筋を見ることが出来なかったのだ。


「失礼ですわ、あなた。わたくし、ちゃんと手加減しておりますわ」


 さも心外だとばかりにムッとした表情となるクリス。


「い、今の攻撃に手加減があったの!?」


わたくし、魔法は一切使っていませんでしたわ!」


 ――――あっ! ……そうだった。

 威力を上げたければ付与魔法(エンチャントマジック)が使えるクリスはライトニングソードなどを生み出せるのだ。

 攻撃にしても全力で行うなら、当然魔法による攻撃も併用するはずである。


 そう考えればクリスにしたら十分に手加減をしたつもり(・・・)なのだろう。


「ソウダネ、クリス。ウタガッテゴメンネ」


 死人のような顔で今にも倒れそうなエドを見つめながら、『手加減』の意味からきっちり二人に教えるべきだったと心から反省をしていた。


 俺がやるはずだった鎧の耐久実験まで出来る状態ではない。

 ここまでにしておこう。


 そのあと「まったく不甲斐ないですわ。あの程度の攻撃に」と、憤慨している自分基準のクリスに俺は慄いていたが、エドを自分が鍛えると言い出した。


 不安はあるが結果的には良かったかもしれない。

 フローラの時とは違い、スパルタになるだろうが二人が仲良くなれるきっかけにもなるだろうから。




 こんな感じで道中を過ごしながら旅を続けた。

 エドだけが午前中は魔法の練習、午後はクリス指導による特訓で毎日ヘトヘトになっている。


 後日、男風呂で聞いた話なのだが、最高の環境で訓練させてもらっていることを感謝しているとのことだった。

 魔法の練習は俺のスキルの恩恵で目に見える程の成果が上がる。

 クリスのスパルタ特訓(しごき)も、キツいはキツいが騎士の正統派剣術、騎士団における前衛としての盾の使い方など冒険者風情には学ぶ機会などないモノだと嬉々として語っていた。

 

 それを聞いたとき、ある疑念が俺の脳裏をよぎった。


 クリス(おに)スパルタ特訓(しごき)を嬉々として語れるエドは、実はMなのではないだろうか。


 しかし、クリスとエドの仲が早く修復されることを望んでいる俺が、これを言葉にすることはないだろう。


次話は二、三話書き溜めて週末ぐらいには

投稿する予定です。


ところで聞いた話では

ブックマークが増えたり、評価を付けて頂いたりすると

執筆が進み、次話投稿が早くなるそうです。

(※あくまで噂です)


いつも読んで頂きありがとうございます。

皆様が楽しみにして読んで頂けるような作品を目指して

今後も頑張っていきたいと思います。


これからも宜しくお願い致します。

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