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1-52 主賓で強力版★

いつも読んで頂きありがとうございます。


はぐれ勇者様のご好意で着色したアルヴァの挿絵を頂きました。

あとがきに貼らせて頂きますので、是非ご覧下さい。

 刺さるような目に囲まれながら外へ出ると、プンスカクリスとアルヴァは俺に気が付いた。

 そして、クリスには「遅いですわ、あなた」と、ちょっこり八つ当たりをされた。


 あなたたちの罰金を払っていたのだと言いたいが、もちろんそんな勇気もないし、必要もない。


 二人とも俺の大事な人だからだ。


 合流を果たし、ふと後ろを振り向くと、エドが俺たちを見送るために外まで出てきていた。

 そして俺たちに近づき挨拶をしたが、それに応えたのは男性のみだった。


 プンスカ組と苦笑組、そして、どちらでもない不完全燃焼のいぬみみ美幼女。

 それでも苦笑組は反応だけはしてあげていたが、プンスカ組は今にも攻撃をしそうな雰囲気を醸し出している。


 エドもすぐに信用はされないと分かっているようである。

 それでも女性陣と仲良くしたいと思っていると分かるだけの誠意を見せた。


 エドは時間をかけるしかないと決めたようで、相変わらず無反応なプンスカ組にしつこく話しかけるような真似はせずに、すぐにギルドへ引き返そうとしていた。

 

 HPポーションで女の子たちは回復はしているが、元のチームメイトと話をするためである。

 

 逆に女の子を叩きのめしてしまった俺たちに悪印象を持ってしまったのではないかと心配になって、エドがギルドへ戻ってしまう前にそのことについて尋ねた。


「いや、何の為かは分からねえが何か考えがあるんだと思って黙ってた。旦那はあんなこと言う人には見えなかったからな。まあ、俺が言うのもなんだがな。それに、これは彼女らが悪いから痛い目をみるのも勉強のうちさ」


 エドは笑顔でそう言ってくれた。もちろんアルヴァには聞こえない様に。



 

 路地へ入って転移をしてリビングに飛んだ。

 とりあえずお茶でも飲んで待っててくれとみんなに言って、俺とアウルはもう一度転移をした。

 行き先はイグナシオの商館である。


 契約だけの依頼だが、高額の取引をした相手でもあり、手数料だけで快く引き受けてくれた。

 帰る前に見るだけでも良いからと熱心に勧められはしたが、ちゃんと断っている。


 しかしながら、新しい娘が何人もいると言われたときは、まさに断腸の思いだったのもまた事実ではある。

 増やしたいのは山々だが、本命の耳の尖った女の子(エルフ娘)羽の生えた小さな女性(妖精さん)を揃える前に俺自身のキャパシティーがオーバーしてしまう恐れがある。


 ――それに俺の大事な人……クリス、アルヴァ、ベアトリス、フローラ、そしてエル。

 彼女たち以上に素敵な女性など存在しているとも思えない。


 よって、俺はちゃんと断ったのである。




 再度、家へ転移をするとリビングにエルがいない。


「ただいまー。……あれ? エルは?」


 今日はエルが主賓なのだから彼女がいないと始まらない。


「あ、ご主人様。お帰りなさいませ。実はエル様が……」


 俺たちが帰ってきたのを最初に気が付いたベアトリスは状況を説明してくれた。


 俺とアウルが転移をしたあと、エルは家中を徘徊して回った。

 そして、風呂場を見つけるなり今までどうして黙っていたんだと騒いだ。

 なので、エルは自分で風呂を沸かし直して只今入浴中である。


 家に風呂があるのは珍しい。

 エルは一人暮らしなので、それなりの大きさの家でしかないから、風呂などもちろんない。

 だからよっぽど風呂は久しぶりなのだろう、今日がこの家にいる最後の日でもあるし、女心に理解のある俺は、ちゃんと嫌な顔一つ見せずに待ってあげることにした。


 ただ一つ惜しむらくは、せっかくの化粧が落ちてしまうことだ。

 しかし、湯上りのお色気熟女も捨てがたい。

 非常に悩みどころではあるが、すでにエルはお風呂へ入ってしまっている。


 ここはすっぱりと気持ちを切り替えて、湯上りの熟女の匂いを堪能することにしよう。



 しばらくしてお風呂から上がったエルがリビングにやって来た。

 蒸気で顔を火照らせているエルは、化粧など必要としないほど美しく見える。


 こうなると先に気持ちを切り替えていた分、余計にエロスを堪能できてお得な気分になれた。


「ふぅ。いい風呂だったぁ……。あ、ヨウスケ! なんで今まで黙ってたんだ! あたし一人のけ者して、こんな大きい風呂をみんなで堪能してたんだな」


 非常にご立腹の様子だが普通は「家に風呂があるから入りに来ないか?」なんて誘わないと思う。

 百歩譲って誘ったとしても、それは誰が聞いても夜のお誘いにしか聞こえない。


 そんなことが俺に出来るわけがない!

 それが出来るぐらいなら、とっくに風呂など言い訳に使わずやることをやっている!


 まったく、経験の少ない俺の実力を過大評価しないで欲しい。



 まあ、別に本人がハッキリとそう言ったわけではない。

 いずれ拠点を構えるために家を買うときは、大きい風呂を作るからと言って宥めた。

 もしも今、実はこの家にある風呂より大きいモノを職人に頼み、すでに出来上がってストレージに入っているとバレたら大変である。


 材質は檜のようにいい香りがする木材を選び、野営時でもお風呂に入れるよう用意したのだ。

 もちろん俺以外の男性用には、この家の風呂と同じぐらいの大きさのモノを別に作ってある。


 土魔法で作るという手段もあるが、いちいち作っては壊さなければならないし、第一味気がない。

 やはり、温泉のようなもくの香るお風呂が浪漫であろう。



 全員で食堂に移動して食事の準備を始めた。

 準備と言ってもストレージから出して並べるだけなのですぐに終わった。


 エルは見覚えのある懐かしい料理の数々に感激の表情を顕わにして、珍しく素直に感謝の言葉をくれた。


「おー、ホント懐かしい料理ばかりだ。あたしの為だけに作ったというのは嘘じゃなかったんだな。ありがとな、あたしの大事な旦那様」


 実のところ少し心配ではあった。

 いくら今は思い出しても怒りしか湧いてこないとは言っても、本当にそれ以外の感情がないとは思えない。

 これだけいろんな種類の思い出の品を出してしまったら、やはり寂しくなってしまうのではないかとの懸念はあった。

 しかし、エルを呼んで喜ばせられる料理は佐藤肉店の惣菜しか思い浮かばなかった。


 そんなことを考えていると考えていることが顔に出ていたらしく、エルに気付かれてしまった。


「心配するな、ヨウスケ。あたしは今お前に感謝の気持ちでいっぱいなんだぞ? だからそんな顔してないで一緒に楽しんでくれよ」


 エルは花が咲き乱れたと思わせるような満面の笑顔を見せて喜びを表現して俺を安心させてくれた。



 今回は酒類もちゃんと用意してある。

 ワインや蒸留酒、果実酒、麦酒も取り揃えた。


 たとえコルクの栓を抜いた余ったワインでもストレージに入れておけば酸化することはないので、みんなで遠慮なしに次々と開けている。



 おしゃべりなどきょうじて楽しい時間を過ごした。

 そして宴もたけなわになり始めた頃、最後の品としてデザートを出そうと思い、皿などの準備をしているとエルが微妙な表情で質問をしてきた。


「デザート? デザートって言うとヨウスケの国のやつか?」


 エルは何かを知っているようで少しだけだが嫌な顔を見せた。


「エルは知ってるんだ? でも、なんかその顔はあまり好きではなかったみたいだね」


「んー。ヨウスケには悪いとは思うけど、あの甘さがちょっと苦手でな。しかし、あたしに気を使う必要はないからみんなで楽しんでくれ」


 せっかくこの世界で作った生クリームのケーキのお披露目ではあったが、嫌いというのであれば仕方がない。好きではないモノを無理強いするのは良くない。

 

 俺はストレージからホール状のケーキを出してテーブルの上に置き、どうやって7等分に切るか悩んだ。


 意を決して1ミリの狂いもなく7等分に切ろうと慎重にナイフを入れようとしたそのとき、待ったが掛かった。


「ちょ、ちょっと、それはなんだい!? ヨウスケの国のデザートじゃなかったのかい!?」


 エルは自分が予想していたモノとは全く違ったらしく驚きの声を上げた。


「え? まあ、今は世界中にあるし、元々俺の国のモノではないけど、デザートと言ったらこれが一般的だと思うけど?」


「いや、ゴンジュウロウは伝統のモノだと言って炊いた米に黒くて甘いものを塗りつけたやつを作ってたぞ?」


「ああ、オハギかあ……。確かに俺の国の伝統のモノだけど、今はあまりデザートとしては出されてないよ」


 俺はオハギをデザートと言ってエルに出していた佐藤のセンスには思わず苦笑してしまった。

 なにもオハギがダメと言っているわけではない。


 この国はどう考えても西洋風なのだから、ケーキとは言わなくても、パイでもタルトでも、それこそクッキーのような焼き菓子などいくらでも選択の余地があるのに、なぜオハギなのかということが不思議だった。


 エルは興味津々でケーキを見つめているので甘いものが嫌いというわけではないようだ。

 俺は念の為にストレージから余った生クリームを取り出してスプーンですくいエルに味見をさせてあげた。


 そしてエルの顔が劇的に変化をした。――それは全員が引き気味になるほどだった。


「ん――――! なんだこれは!? 凄い美味しいじゃないか! ――ゴンジュウロウの奴、なんでこういうモノを作らないんだ!」


 まるで火山が爆発したような怒り具合だった。今や完全に佐藤に対して怒り以外の感情などないと言い切れるほどだ。


 生クリームは予備知識がなければ絶対に作れなかったとは思うが、意外にもエルは甘いものが好きだったようで、その分余計に怒りが湧いてきたのであろう。


 8等分になら楽に切れるし、エルが食べてくれるならすごく嬉しい。


 最後は紅茶を飲みながら、明日に備えてそろそろお開きにしようと思っていると、エルはフラフラっとどこかへ行ってしまった。


 しばらくしても戻ってこないので、どこへ行ったのか確認しようと席を立とうとすると、隣に座っているクリスが手で俺の動きを止めるとベアトリスに目線で支持を飛ばし、様子を見に行かせた。


 招待主なのだから客を置いて席を立つなと言いたいらしい。

 なんでも自分でやろうとするのはお客に対しても失礼に当たることもあるので、人を使わないといけない場面もあるということだろう。


 ベアトリスはすぐに戻って来て、エルがリビングで寝ていると報告してきた。


 そのあと少しして解散となり、俺はアウルたちを転移で送るとすぐに戻って後片付けを手伝った。

 洗い終わった食器類を全てストレージに仕舞うと、もう家の中には元からあった物だけとなった。


 エルはしこたまお酒を飲んでいたので朝まで起きないだろうと思い、お姫様抱っこをして、元研究室のベッドへ寝かせた。


 そして、俺たちも寝ることにしていつもの寝るスタイルになってベッドへ入った。

 ちなみにフローラは後片付けをさせずに先に寝かせているので、何も心配はいらない。


 次はいつベッドで修練ができるか分からないこともあって、今までで最高の修練となるように、おさらいから始めて例の新しい修練まで順繰りと行われていく。


 うん、新しい修練は確かに凄い!

 アルヴァがかなり頑張っているようだ。

 なにせ、今まで以上に全身を触れられて……いる?


 ん? 何かおかしい。

 手が1、2、3……7、8……はちぃ!?


 俺は嫌な予感というか全然嫌ではない予感に襲われて布団をめくった。

 すると予想通りの事態になっている。


「エル……酔って寝てたんじゃないの?」


「このあたしがあの程度で酔うわけないだろ。たいしゃ?とやらが良いからすぐアルコールが分解されてなんちゃらとゴンジュウロウが言っていた」


 高レベルともなると代謝機能も上昇するらしい。

 ではなぜ寝たふりなどしていたのかを尋ねると、あの場の流れだとそのまま帰らされそうな雰囲気だったからだと言われた。ついでにお姫様抱っこも狙ってリビングで寝たふりをしていたそうだ。


「じゃあ、早速だがメインを頂いていいか? 嬢ちゃんとはとっくに済ませただろ? 次はあたしの番だな」


 え? ……なぜバレたー!


「なんで分かったか不思議なようだな。それはな……」


 エルと一緒に狩りへ行った日すでに気が付いていたそうだ。

 最初はなにやら動きがおかしいと思っていたら、俺がスタミナ回復ポーションのほかにこっそりHPポーションを渡していたのを見られていたらしい。

 月のモノなら2桁ほど安い鎮痛剤が存在するのでピンと来てベアトリスに確認したそうだ。


 ベアトリスが自分で見たことを誰かに話すとは思っていなかったので、口止めはしてなかったのだが、聞かれればエルはもう他人ではないのだから正直に答えてしまう。


 迂闊にもその事を忘れていたのだが、だからと言ってメインをあげるわけにはいかない。

 ベアトリスは悪びれもなく「えへへ」と笑っているが、あまりにも可愛いので文句の一つも言えなかった。


 アルヴァはよく話題に登るメインが何かは分かっていないのだが、エルの次にお願いしますと頼まれた。


 まあ、頼まれなくとも順当にいくとエルの次なのだが……

 もちろん、アルヴァと結婚したあとだけど。


 とりあえずエルには正直に話をして、俺とクリスが結婚するまで待って欲しいとお願いをした。


「なんだあ、じゃあ、しょうがないな。とっくに【性戦士】のレベルを上げてると思って楽しみにしていたのに」


 それも知っているとは驚きだった。

 元々、性技というスキルを持っている人がいるのは知っていた。

 

 クリスとあの約束を交わしたあと俺は【性戦士】というスキルを取得しているのだが、これは裏スキルだったので性技の強力版だと推察をしていた。だから例の場所へ通ってレベルを上げたかったのだが、結局監視が厳しくて行くことは出来ずLv1のままだった。


「よし! では、いつもの修練とやらを始めようか。楽しみにしていたのに待ってあげるんだから、せめてしっかりあんたもやるんだぞ」


 緊張の面持ちで事態の推移を見守っていたクリスはあからさまにホッとして、そのあとはエル先生の授業を三人はマジメに受けたおかげで、夜が更け、朝が来て黄色い太陽が見えたとき、俺たちは冒険の旅へ出発する前に精も魂も尽き果てていた。


 そしてフローラが目覚めて「おはようございます、皆様」と、太陽より眩しい笑顔で朝の挨拶をされた。


 こんな無計画も楽しいが、なにやら前途多難な気がしないでもなかった。


挿絵(By みてみん)


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