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1-5 姉妹で買い物

 昨日考えていた生活に必要そうな物のほかに、アルヴァとベアトリスの服や日用品の他に戦闘が出来る装備品を買いたかったのだ。

 しかし替えの服はどれくらい必要で、ましてや女の子の必需品など俺に分かるはずがない。

 本人たちに選ばせてもいいが、この様子では二人が遠慮して何も言わないかもしれない。

 それに鑑定眼で価値は分かっても装備品など、どれが二人に向いているかなどの問題もある。

 

 そんな雑用の依頼など断られるとも思ったが、意外なことにアウルはあっさり引き受けてくれて買い物に付き合ってくれた。


 家事をするための服や普段着、下着、綺麗なドレスなどを数着ずつ。

 靴を何足かと女の子が必要な日常品の数々。

 ちゃんとそこそこ良い物を選んでもらっている。あんな美少女たちに粗悪品の安物なんて着せられないしね。


 ちなみに二人には月からの使者は訪れないそうだ。

 それは避妊の加護が理由だそうだが、それなら妊娠する訳がない。



 思った通り、姉妹はそこまで必要じゃないとか奴隷にはそのような物は贅沢すぎるだのと慌てていたが、俺はアウルの助言の方が正しいと思って、気にせず買い物を続けている。


 武器に関してはアルヴァには刃渡りが50cmほどの小剣を買い、ベアトリスにはそれより少し長い柄まで90cmほどの細めの剣を選んだ。

 両方ともミスリルという素材で出来ていて、鋼鉄より頑丈でしかも断然軽いのが選んだ理由だ。


 もちろん強敵といきなり戦うつもりなどない。

 しかし、戦闘には誰も慣れてなどいないのだから、少しでも軽くていいものを選びたい。

 防具は薄い鋼鉄製の胸当てと特殊な効果はないが丈夫な赤いローブをそれぞれに同じものを買った。

 

 剣の鞘とベルトも二人の為に買ったが、自分用のベルトも買った。

 腰にベルトを巻きダモクレスを差し直していると、アウルが一瞬だが驚愕の表情を見せていた。


 アウルは特には何も言わなかったが明らかにダモクレスを知っているようだった。しかしそれ以上は何事もなかったように、熱玉や桶、たらいや調理道具、食材ほか、細かい買い物にまで付き合ってくれている。


 そして姉妹は、自分たちのものが多分に含まれている上に、それらが高額ということもあって、理解出来ないという表情を浮かべていた。




 ミスリル製は桁違いに値段が高く、装備関係に70万円以上、二人のモノや生活雑貨で2万円ほど支払い、手持ち残高は200万円を切った。


 大量に買った荷物を運ぶのまで手伝ってくれたアウルに、歩きながら家の紹介から今までの手数料について尋ねた。


「今日はありがとう。手数料はいくら払えばいい?」


 ここまで付き合ってくれたのだから多少高額であろうと払うつもりでいる。今後もつきあっていけるのならケチる必要もないだろう。

 少し考えたアウルは何かを決めたとばかりにきっぱりと俺に告げる。


「いりません」


「は??」


 思わず間抜けな声を出してしまった。

 しかし、アウルはそんなことなど気にしていない様子で、その理由を話してくれた。


「まあ、昨日取引させて頂いた物で充分に利益が出ますし、ここで恩を売っておけば、またあの様な物を売って頂けるかもしれませんしね」


「後ろ半分は冗談です」 と付け加えたが、少しは期待していると思う。


「もしかしたら、また売るかもしれないけど。――でも、これから冒険者になるつもりだから、たぶん魔獣とかを倒した戦利品ぐらいしか売れないと思うよ? それに俺もこの達もまだ弱いから大した物はないと思うし」


 意外にもアウルはそれでいいらしい。


「それで十分ですよ。これからもお付き合いをさせて頂きたいので、どんなものでも構いませんから声をかけて下さい」


 正直なことを言えば、日本から持ってきたモノをこの先売る気はない。

 それらを売ってしまえば今の俺にはそれ以上現金を得る手段がないのだから。

 だから自分が安定して稼ぐことが出来るまでは、手持ちのお金で生活して、それらは保険だと思って残すと決めている。


 そのまま帰すのはさすが悪いと思って、食事でも、と誘ったのだが


「荷物も大量にありますし、今日は買った二人と過ごして下さい」


 と、答えて笑顔で帰って行った。


 買い物の途中から姉妹は、また返事以上のことは口を開かなくなっている。


 気にはなったが、そのまま家に入った。

 買った物をリビングに広げて仕分けを始めた。


 俺の部屋やキッチン、お風呂場に置くものはさほど多くない。大半は姉妹の物である。

 荷物を運び込むのにも、まず部屋割りを決める必要があった。


「一番大きい部屋は俺が使うけど、他にも部屋が3つもあるから別々でも、ベッドを運んで二人一緒でもいいよ」


 俺の言ったことは変なことではなかったはずだが、二人とも不思議そうな顔をしている。

 そして、ベアトリスが始めて返事以外のことを話しかけてきた。


「ご主人様、本日は私たち二人を買って頂き有難う御座います」


「それは別にいいから。早く片付けてご飯にしよう。俺には作れそうにないから」


 ベアトリスは何と答えたらいいのか分からないといった顔になり、代わりにアルヴァが話しかけてきた。


「ご主人様、私たちが我が儘を言ったせいで、無駄なお金を使わせてしまい申し訳ありません。しかも奴隷である私たちの為にあのような物まで買って頂いて、何とお礼を申し上げたら良いのか……」


 俺にはこの姉妹が何を言いたいのかが分からない。お礼を言っているのは分かってはいるが、そのほかに何か言いたそうにしているのだ。

 ただ女の子の気持ちなんて俺にとっては、秋の空どころか宇宙の彼方くらい遠くて掴めないものなのだから、直接聞いたほうが早そうだ。


「二人とも何が言いたいのか分からないんだけど…。怒らないからハッキリ言ってくれないかな?」


 あまり良い策ではなかった。二人とも下を向いて黙ってしまっている。

 言っていいのか、それともなんて言えばいいのか……そんな感じだ。


「まあ、言いたくないならいいよ。部屋は好きにしていいから早く食事を作ってもらっていい? お昼を食べてないから本当にお腹が減ってるんだ」


 冷たいようだが気の利いた言い回しなんて出来ないから、この場はもう諦めている。もちろん仲良くなりたいが、買われた奴隷としては複雑な気分だろうし、早々に仲良くなんて出来るとも思っていない。

 俺は着替える為にそのまま自分の部屋へ向かって立ち去ろうとすると、ベアトリスが焦って俺を呼び止めた。


「ご主人様!」


 俺は何事かと思って振り返った。見るからに表情が硬い。


「なに?」


「ご主人様! 2つだけ確認させて下さい!」


 そして当たり前のことを必死で訴えてきた。


「姉に食事を与えてもらえますか? 出来れば1日に1食ぐらいは…。もし贅沢と思われるのでしたら、私の分も姉に与えて頂けませんか? それと……」


 アルヴァはその発言に目を見開き、慌てて何か言おうとした。

 しかしそれを遮るように、先にベアトリスが、もう1つの確認したいことを尋ねてきた。


「それと…私たちに部屋を使うように言われましたが、この家には他にも誰か住んでいるのですか? その方たちに私たちはご奉仕するのですか!?」


 ベアトリスは悲痛な表情で俺を見つめた。

 アルヴァは何も言えなくなり、下を向いたまま俺に顔を見せなかった。


「え? 誰もいないよ? 何の話? ご飯は一緒に食べるよ。だから自分達の分もちゃんと作るんだよ?」


 俺には質問の意味がよく分からないが、俺に買われたのに仕えるのがほかの人なのでは、と思えば重大事なのかもしれない。


 奴隷用の食事は『これしかだめだ!』とか決まっているとか?

 

 姉妹も俺の返答が予想外だったらしく三者三様で不思議そうな顔になり、お互いを見つめ合ってしまった。

 しかし最初に口を開いたのは、やはりベアトリスだった。


「ご主人様、申し訳ありません。もう一度だけ確認させて頂いても宜しいですか?」


 おれもよく分かっていないので、とりあえず聞くことにした。


「いいよ。なに?」


「食事を頂けることに感謝します。ですが、何を頂いてよろしいのですか? それとお部屋のどこに寝ればよろしいのですか?」

 

 全く不可解な質問である。

 一緒に食べるなら一緒の物に決まっているし、ベッドを運んで同じ部屋でもいいと言ったのだから当然ベッドだろう。

 俺は疑問を兼ねて、そのまま思ったことを答えた。


「わざわざ別の物を作るの? 一緒の物じゃダメ? 奴隷は食べてはいけないモノがあるとか? それに部屋も好きにしてベッドで寝ればいいと思うけど? 何かおかしいとこある?」


 アルヴァとベアトリスはおかしい所だらけだ――と、言いたげな顔をしている。

 しかしベアトリスは、それには触れず別の質問をしてきた。


「――では、ご主人様は何の為に私たちを買われたのですか?」


「え? そりゃあ、洗濯とか掃除とか…食事を作ってもらったり。あと嫌かもしれないけど、一緒に冒険者になって魔獣とか倒したいんだけど。残金を考えると早めに稼がないといけないし」


 話の最後の部分が、またアルヴァに申し訳なさそうな顔をさせていた。


「ご主人様、それは問題ありません。私は剣が好きですし、姉もご主人様の奴隷なのですから当然最善は尽くします、ですが他にはないのですか?」


 そりゃあ、確かにあれこれしたいけど……俺も男だし。

 でも焦って嫌われたくない。

 ベアトリスはまだ14歳だから、俺が姉にそんなことしたらどう思われるか…。


「ま、まあ、あとは俺の世話とか? ――あっ! 俺に剣を教えて! 俺まだ下手なんだ」


 剣の持ち方すら知らないのに少し見栄を張って、突然思い出した重要なことをお願いした。


「私はまだ、剣術Lv2ですから大した事は教えて差し上げれませんが、それでもよろしければ。それと……」


 ベアトリスはそれを請け負ってくれたが途中で言葉を切った。

 そしてなぜか、急に恥ずかしそうにモジモジしていた。


「ご主人様の奴隷である私たちは当然どのようなお世話も喜んで致しますが……その…もしかして…私たちは二人一緒に夜のご奉仕をさせて頂くのですか?」


 ベアトリス――――!! 女の子がなんてこと言うんだ――!


「あ、いや、それは、そのうちにね」


「で、では、今日はどちらをお選びになるおつもりかだけ、お聞かせ頂けませんか? わ、私も姉も…は、初めてなので…出来れば心の準備を……」


 二人とも下を向いて顔が真っ赤になった。


 …………ベアトリス。


 そりゃそうだよねー。

 家事をやらせるためだけにこんな高額の奴隷を買う奴なんて普通はいないだろうし。

 

 だから当然俺がそのうち二人一緒にアレをしたいと思ってるよね?

 その前にひとりずつ! ――とか絶対に思ってますよね!?

 そりゃあ、男の子だもん、夢はあるけど……。


「い、いや、それもそのうちね。今は俺の身の回りの世話をしてくれればいいよ」


「そ、そうなのですか? で、では、そのときまで一生懸命ご主人様の身の回りのお世話をさせて頂きます」


 流石に自分から言い出すのはムリだ!

 残念なはずなのに、ホッとしてしまっていた。


 しかし、ベアトリスの勘違いはまだ続いていたでのある。


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