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1-32 重婚で責任

 調子に乗って伝説の洞窟(あまのいわと)付近を探索しすぎたせいで、クリスが約束を破った。


 もう2度と噛まないと言ったのに何箇所にも渡って噛み跡を残されたのだ。

 でも、痛くもないし不快どころか嬉しかったのは内緒だ。


 力が入らなくなってしまったクリスをお姫様抱っこした。

 そっと湯船に入れてあげる。

 そして、だいぶ前から気づいていた偵察者に声をかけた。


「ベアトリス、入っておいで」


 見学も経験になるだろうと放置していた。

 決して、見られて興奮していたとかそんな理由ではない。

 もちろん、扉の隙間から覗き見られていると気づいて、さらに興奮していたのは否定しない。


 すでに、服を脱いで待機していたらしく、ベアトリスはそのまま扉を開けて入って来た。


「えへへ、ご主人様。私もちゃんとご主人様を愛していますからね」


「――どこから、聞いて……見ていたの?」


「いたたたたた――――――! の辺りからです、ご主人様」


 はにかむような可愛い笑顔でベアトリスは答えたが、それは事の始まりから全て見られたということだ。


「クリス様が出てこられたときは、焦りましてダッシュを使ってしまいました」


 家の中でダッシュを使って壁にぶつからなかったのは、流石というしかないが……


「ベアトリス! 家の中でスキルなんて使ったら危ないでしょ。怪我したらどうするの! まあ、そうなったら、ちゃんと治してあげるけど、そういう問題じゃないからね」


「ごめんなさい、ご主人様。でも、きっとご主人様がクリス様に怒られてしまうと思ったので心配だったんです」


 なんて、優しいなんだ。怒ってごめんね。



 なぜか、クリスが何か得心がいったという表情になった。


「ああ、それで先ほどわたくしがキッチンに行ったとき、服を着ていなかったのですね」


「はい。もしクリス様が怒って練習させてあげなかったときは、私が代わりに練習台になろうと思って服を脱いで待っていました」


 クリス……それで納得してしまうのもどうかと思うが、それ以前にそんな姿のベアトリスを見てもっと不思議に思えよ。

 いや、コイツも平気で同じ姿のままキッチンに行ったのだから無理だな。


「ところで、ベアトリス。アルヴァにはなんて言い訳したの?」


「あ、それは、簡単でした。ご主人様とクリス様だけでは心配だから、お傍に控えていたいと言ったら、2つ返事で了承してくれました。だから、服を着ていなくても怪しまれていません」


 ベアトリス……いつからそんな悪い子になってしまったんだ。



「クリス。アルヴァを呼んできてくれる? 後で呼びに行くからそれまでフローラの面倒をみてて」


わたくしも出来れば見学していたいのですが?」


 まあ、見られていたのだから自分も見ていたいという気持ちは分かるが、フローラひとりを残す訳にもいかない。


「ベッドでまたいっぱいしてあげるから。そのとき見れるでしょ?」


「本当ですか、あなた!? 約束ですからね」


 上機嫌でクリスは風呂から出ていった。

 こんなに単純なのに、なぜあれほど鋭いのか謎は深まるばかりであった。


「さて、ベアトリス。お仕置きを兼ねてしっかりやるから覚悟しなさい」


「はい、ご主人様。今日ずっとそのことばかり考えていましたので、宜しくお願いします」


 そんな破廉恥なことを言いながら、クリスと同じく純粋な少女の様に目をキラキラと輝かせながら足を広げた。

 またか。いや、洒落ではなくて……、またもや同じ状況にギャップ萌えは発生しないと思ったが、カラダ中がムズ痒くなるほどの萌えを感じてしまった。


 最初は全く同じに見えたが、クリスとは大きくことなる点があると気が付いたからだ。

 ベアトリスはクリスほど堂々とはしておらず、顔を赤らめながらも俺になら全てを捧げます的な感じがするからだ。


 突然、この国は重婚が認められているということを思い出した。

 まだ、初婚すらしていないのだが、なにか予知のようなモノを感じたせいだろう。

 何人まで認められているのかということが、段々と心配になり、出来れば3人……いや、4人以上であって欲しいと神に願った。



 このカラダはスキルにないスキル(エロ技)すらも成長が早いと気が付いた。

 それはクリスよりもだいぶ短い時間で、ベアトリスがクリスと同じ状態になったからだ。

 アルヴァに至ってはまさに瞬殺だった。


 どの程度の個人差があるか調べる必要があるのでは? と、いうことに気がついた。

 だから、もっと練習したかったのだがお互い初心者でもあり、今は無理をする必要はない。

 今はな。――夜は長いのだから。


 クリスとフローラを呼びに行った。

 案の定、クリスは何も着ないままソファーに座りフローラと話をしていた。

 俺はちゃんと下着だけは履いている。


 フローラのカラダを普通に洗ってあげて、みんなで湯船につかった。

 アルヴァとベアトリスは目が虚ろになりながらも、何かの余韻に浸っているように見える。

 俺とクリスも満足感を味わいながら寛いでいた。

 そのとき突然、フローラが思い出したかのように不思議に思っていたことを尋ねてきて、全員が現実に引き戻された。


「おくさまとベアトリスお姉さまはお洋服がおきらいなんですか? お休みの日はエプロンしかしてませんし、さっきはなにも着ないままでしたし……あ、でも、朝起きたときはアルヴァお姉さまもご主人様も同じですから、みなさんお洋服がおきらいなのですか?」


 この質問に回答者はいなかった。


 しかし、放置出来る問題ではない。

 俺はアイコンタクト会議を開いた。


 ダレカウマイセツメイヲシテアゲテ

 オレハベアトリスガイイトオモウケド


 ワタクシモソウオモイマスワ


 ワタシモベアトリスガテキニンダトオモイマス


 ムリデスーゴシュジンサマノホウガ

 ワタシハテキニンダトオモイマス


 タシカニソウデスワネ


 ベアトリスヨリゴシュジンサマノホウガ

 ウマクセツメイシテイタダケソウデスネ


 まずい。形勢が不利になってきた。

 しかし、交渉スキルは伊達じゃない!


 オレガセツメイシテアゲテモイイケド

 ツカレテスグネチャウカモナー


 まるでファ○ネルのように狙いを外さずクリスと姉妹の心を打ち抜いた。 

 期待通り3人による押し付け合いが始まったが、やはりベアトリスということになった。


「じゃあベアトリス、あとは宜しく。夕食の準備の続きは俺たちでやるから気にせずゆっくりどうぞ」


「ベアトリス。頼みましたよ。わたくしたちの未来は貴女にかかっていますわ」


「さっきはベアトリスがご主人様とクリス様のお傍に控えていたから、今度は私の番ね。だから、気にしないでゆっくり二人でお話ししててね」


 俺たちはそれぞれ激励を贈ると、さっさと風呂から上がった。

 ベアトリスは「あぅぅ……」と言いながら半泣きになっていたが、全員の今後のために頑張って欲しい。


 俺たちは食事の準備を整えて楽しく談笑していたところに、ベアトリスがフローラの手を引いて戻って来た。

 よほど湯船を堪能したのか、ベアトリスの顔は真っ赤に染まり瞳の端にはちょっと雫がついていた。


「ご主人様……私、もうお嫁に行けないので責任取って下さい」



 フローラが寝てから、どう説明したのか尋ねた。


 クリスはお風呂に入っていたからたまたま服を着ていなかった。

 寝ているときは衣擦れの音で俺を起こさないため、休みの日は全部の服を洗濯するために服を着ていない。

 ただし、それらは14歳になってからで良い。


 苦しすぎる言い訳に俺たちは苦笑するしかなかったが、ベアトリス自身についてはなかなか説明をしない。


「お嫁に行けないと言ってたけど、そんなに言いたくないようなこと言っちゃったの?」


 ベアトリスは恨めしそうな目で俺を見るとクリスに泣きついた。


「クリス様。私は奴隷ですけど女の子なんです。ご主人様に責任取ってもらっていいですか?」


わたくしは最初からアルヴァもベアトリスもヨウスケに貰わせるつもりですわ。だから、心配いりません」


 ベアトリスは少し安堵した表情になり小さい声でフローラに何と言ったのか説明を始めた。


「自分に関しては何も思いつかなかったんです。そうしたら、だんだんのぼせてきてしまって……つい、服が嫌いなのではなくて、服を着ていないのが好きなのだと言ってしまったんです」


「「――つまり?」」


「つまり……私は露出好きの変態だと思われてしまったんです」


 俺は吹き出しそうになってしまった。自業自得とはいえ笑ってはあまりにも可哀想だ。 


 身を削ってしまったベアトリスにクリスは「あら、わたくしも服を着ていない方が好きですわ」と、言っていたが羞恥心のないクリスでは慰めにもならないだろう。



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