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1-14 奥様とご褒美

 クリスの為の買い物は、他にもブーツや普段着、狩りにも着ていける服などを買い、念の為にアルヴァたちと同じピンクのフリル付き高級エプロンも買った。


 常に用心のための備えは必要だ。

 いくら馬鹿でも、やはり仲間外れは良くない。

 

 念の為に言っておくが、日曜日との関連性はない。



 オーダーで服を仕立ててくれるお店にも寄った。

 これは俺自身のためだ。ダモクレス用に買った革製の服はカタナには合わない。

 そこで、絵を書いて説明をして着物と帯を特注した。


 着流しでカタナを腰に差す。

 憧れていたことが出来るこの異世界は本当に素晴らしい。


 アルヴァとベアトリスは俺の話を聞いて、そんな装備じゃ危なすぎると反対したが


「これは俺の夢のひとつだ! このためになら命を懸けても惜しくない!!」


 と、珍しく男らしい言い分で反論を封じた。


 それでも一応は地厚な生地を選び、色は渋めの紺に決めて同じモノを数着発注した。

 出来上がりは5日後と言われその日が少しでも早く来るよう早く寝ようと思った。



 やはりムチのあとにはご褒美を与えてやるのが主人の務めだ。


「クリス。今日は頑張ったからご褒美にカツ丼を作ってやろう」


 教育中にご褒美は与えても、優しさなどいらん。俺はこれからいつも上から目線だ!


「本当ですの!? わたくし、いつでも妻としてあなたを支えますわ!」


 安すぎるだろー……カツ丼で買える妻なんて。


「アルヴァ、ベアトリス。手間だけど手伝ってくれる?クリスも頑張ったからさぁ……」


 妻うんぬんはスルーして二人に協力をお願いをした。


「「はい、ご主人様! 奥様の為に頑張ります!!」」


 俺は嫁にするなら、あなた達二人がいいよ……



 コメはあるのだがこの辺りでは主食ではないようなので比較的高い。

 とは言っても買えない値段でもない。贅沢はまだ禁物だから控えていたが、俺も久しぶりにご飯が食べたいので、コメを30kgとお釜に使えそうな鋳物の鍋とどんぶりになりそうなうつわなど必要だと感じたモノ全てを、節約のために少しでも安くしてしてもらえるように大量に買い揃えた。


 家に戻り食事の準備を始めた。

 クリスが嬉しさのあまり俺のそばから離れないので、アルヴァにトンカツを作るのは任せて俺はクリスに教えながらご飯を炊く準備をした。


 ときどき、なにかベアトリスのモノより柔らかくて大きいモノが当たり、作業は精神的にも肉体的にもツライがここは我慢だと言い聞かせて、このあとのお風呂の時間に行われるアルヴァとベアトリスの修練に期待をした。


 初のご飯は水と蒸らしが足らない感じだったが、貴重な醤油と魚節のダシを使って仕上げたカツ煮を、ご飯をよそったどんぶりに乗せてフタをした。すると、汁がしみてちょうど良くなっていた。

 

 今回は丼ものだったお陰で助かったが、うまくご飯を炊ける方法は次回までの研究課題としよう。


 食事が始まり俺は自作の箸を使ったが、クリスと姉妹はスプーンで食べた。

 カツ丼を可愛い口に放ばるクリスは恋する乙女そのもので、妻の支えなど、やはりカツ丼以下だということが証明された。



 後片付けは任せて俺は風呂の準備を始めた。

 大量の桶のお陰で井戸からポンプで水を汲む以外はなんの苦労もないので、夕食の片付けが終わる頃には風呂を沸かし終わっていた。


 しかし、勝手に入るわけにはいかない。

 なぜなら、俺がいなくなったと勘違いをしてみんなが心配してしまうからだ。

 気遣いが出来る男の俺は、わざわざキッチンに行き、風呂に入ると報告をした。


 それから、風呂場へ戻ったが疲れているせいで、服を脱ぐのにやたらと時間が掛かってしまった。

 風呂から桶でお湯を出来るだけゆっくりとカラダにかけていると、突然脱衣所の方からなにやら人の気配がした。


 俺は何が起ころうと対応出来るようにその人物が中へ入ってくるまで、わざわざ待った。


 現れたのは生まれたままの姿の妖精たちだった。

 正直、カンの鋭い俺は妖精姉妹の出現まではなんとなく予期していたが、妖精女王の出現には完全に意表をつかれて本気で驚いた。


「ク、クリス? なんでここに?」


「あら。あなたが、みんな一緒が恒例で、わたくしにも理解しろと言われたのではありませんか?」


 確かに言ったけど、それはクリスに二人の修練を邪魔するなという意味で、一緒に参加しろなんて言ってない。

 こんなのバレたらホントに結婚させられちゃうよ!


 クリスは俺の顔色を見て、何を心配しているのか分かったらしいが、その解釈は全く違った。


「あなた、心配はいりません。正式にはまだ結婚はしていませんが、わたくしは、すでにあなたに養われている妻と思っておりますし、もう若くはないですから婚前交渉も問題ありませんわ」


 問題だらけだし解釈自体が間違っていると叫びたかったが、全く臆することなく晒し続ける超巨大兵器すいかに目が釘付けになっている俺はただの無力な男だった。


 仕方なくいつも通り二人に家事スキルを上げるための修練を始めさせたが、クリスは間近でマジマジと見ていて、そのやり方を覚えようとしている様子だった。

 昔の俺なら、そんなに見られていたら緊張してカラダの一部から力が抜けてしまっていたが、アルヴァがいつも見ていたお陰で、逆に3割ほど強度が増していつもより力強いモノになっていた。


「あなたのは、よく見るとわたくしの知っているモノとはサイズがだいぶ違いますね」


 3割増でも日本人という壁は超えられないのか……


「硬度はあなたの方が上です。それと角度もかなり高いです。これなら初めてのわたくしでも問題なく子供を作れそうですわ」


 そう言うなり、いきなりそれを実行して俺の次世代の種子こだねを奪おうとした。


「はやまるな! お前にはまだ修練が足りん。焦っては事を仕損じるというだろう? だからまずはこの二人の先生から基礎をしっかり習ってからだ」


 クリスは少し考えると「それもそうですわね」と言って、寸前・・のところで、思い直してくれた。


 このときは、なぜあんなに拒否していたはずの結婚を、クリスがあっけなく前向きに考えるようになったのか分からなかった。



 俺は予定通り早く寝るためにベッドにすぐ入ったが、【みんな一緒が恒例】を主張したクリスはどこで寝るのだろうかと考えていたら意外な場所を選んでいた。


「ホントにそこで寝るの?」


「ええ、あなた。わたくしベッドに潜って寝るのが好きなんです」


「じゃあ、その手に持っているのは?」


「暗いと眠れないと昨日言ったでしょう?」


 クリスは光玉を握り締め、俺の足元に丸くなって寝ようとしていた。

 そして、姉妹の未来のための修練を特等席で見続けていた。


 おかげで二人の修練にも熱が入り、いつもより濃密な内容で回数も普段より多めになってしまい、早めに寝るのは不可能だった。

 初心者のクリスはたまに唇接触ちゅーの修練だけ参加をして、またすぐにベッドへ潜り込むを繰り返していた。


 気がつくともう朝で、働き者の二人の姿は既にベッドになく、足に抱きついているクリスだけがいた。

 

 不思議なことに、クリスの手の中の光球がちゃんと消されていた。


 クリスを起こすと、ベッドから這いずりながら抱きついてきた。

 そして唇接触ちゅーの修練をしながら朝の挨拶をした。


「おはようございます、あなた。わたくしも早く他の修練に参加してみたく思いますわ」


 美女のあまりに可愛い挨拶に、まだ少し寝ぼけていた俺は思わずクリスを抱きしめてしまい、やっぱり嫁にしようかな、などと血迷った事を考えてしまった。


 姉妹がしっかり教育したおかげで、クリスは俺に服を着させることまでしてくれた。

 クリスが服を着るのを待って二人でキッチンへ向かった。


 朝食の準備は、ほぼ終わっていたので、皿を並べるのを手伝って四人仲良く朝食にした。


 

 騎士団に混じって訓練をしていたクリスでも、冒険者登録はしていなかったのでギルドに寄って登録を済ませてから、森へ向かった。


 狩りの前に俺たちの今の強さを知るために全員の確認をした。

 

ヨウスケ  年齢18  Lv21

職業  冒険者      身分  自由生活者  

称号  冒険者クラスE  二つ名 なし  

犯罪歴 なし       


所有奴隷 

アルヴァ

ベアトリス     

 

取得スキル一覧

鑑定眼    Lv10 MAX

交渉     Lv1    

契約     Lv1

周囲警戒   Lv2

剣術     Lv1

斬撃     Lv1

刺突     Lv1

ダッシュ   Lv1

ジャンプ   Lv1

家事     Lv1

料理     Lv1

解体     Lv1

木細工    Lv1

教育     Lv1

調合     Lv1



取得裏スキル一覧

ストレージ   Lv10 MAX

個体情報診断  Lv10 MAX

周囲探索    Lv1

自己治癒    Lv1



アルヴァ  年齢17  Lv15

職業  冒険者      身分  奴隷  

称号  冒険者クラスE  二つ名 なし  

犯罪歴 なし       


所有者

ヨウスケ     


取得スキル一覧

料理      Lv4

家事      Lv1


 

ベアトリス  年齢14  Lv22

職業  冒険者      身分  奴隷  

称号  冒険者クラスE  二つ名 なし  

犯罪歴 なし       


所有者

ヨウスケ

 

取得スキル一覧

剣術      Lv2

家事      Lv1

料理      Lv1



クリスティーネ  年齢21  Lv45

職業 騎士見習い 冒険者 身分  アームストロング家令嬢  

称号 冒険者クラスF   二つ名 なし  

犯罪歴 なし      

 

取得スキル一覧

剣術      Lv7

斬撃      Lv6

刺突      Lv5

強打      Lv5

空撃      Lv4

ダッシュ    Lv6

ジャンプ    Lv6


 そして全員共通は


小隊編成中

リーダー

ヨウスケ


小隊メンバー

アルヴァ

ベアトリス

クリスティーネ 


 クリスは俺が小隊に入れと言うと、何も言わず了承したので既にメンバーになっている。

 

 クリスのステータスは騎士団での訓練や演習、そして魔獣討伐遠征などによるものだと言っていた。



 今日からの体制はクリスが攻撃役で俺たち三人は獲物を取り囲むということに決まっていた。

 ベアトリスの話ではクリスの戦闘での知識と経験だけは本物だというので、不安はあったが実質のリーダーをクリス、サブリーダーをベアトリスにして行動を開始した。


 不安は杞憂に終わり、予想以上にクリスの指示は的確だった。

 指示された通りに獲物を囲むと、クリスは危なげもなく一撃で獲物を倒していった。

 俺と姉妹だけなら強敵だった魔イノシシが突進して来ても、躱しざまに首を切り落としてあっという間に倒してしまった。


 クリスは佐藤のあとを本気で追うつもりだったという事を遺憾なく証明した。

 俺が同じレベルになったとしても、あんなに手際よく華麗に倒せる気がしない。

 思うにクリスの強さはレベルというよりも戦闘のセンスが抜群なのだろう。


 俺が獲物を見つけるたびに居場所を指示しても、佐藤を知っているクリスは何も言わずにすぐ行動に移したが、ベアトリスの疑念だけは深まっていた。


 大量の獲物を得てベアトリスも満足そうではあったが、どのみちこのまま狩りを続けていれば、ベアトリス自身が早すぎる勢いで成長していることにも気がつくのは時間の問題だと思った。

 話をするなら早い方が良いと思い、夕食のあと自分の存在がどういうモノで、何が出来るかを話した。


 ベアトリスはそれを自分なりに納得して、絶対に秘密は守り今後も変わらずに仕えていくと約束してくれた。

 アルヴァも同じことを約束したが、なぜか少し元気が無くなったように見えた。


 翌日からもう少し森の奥に進むことにした。

 流石に最深部までは行かなかったが、小型の獲物を見かけなくなり、代わりに魔獣や大型のケモノを発見することが多くなった。成果として数は減ったが質は上がり収入は増えた。


 今までの買い取り金額はウサギなどの小物は、毛皮を含めて全部まとめても1日500円程度。イノシシは一頭500円で魔イノシシは1500円だった。昆虫系魔獣の各部位はそれなりの値段で売れたが、魔珠もこの程度のモノでは数百円から1000円程度。

 一日の稼ぎは3000円ぐらいで、良くても4000円だった。

 

 魔タヌキはレアな存在らしい。あの時は幸運だっただけで、あれ以来出会っていない。

 他にも依頼達成の報奨金があったが、買取金額に上乗せがある程度でクラスEの依頼ではそんなモノだった。


 これは3人での成果で本来なら1人頭1000円程度、しかもダモクレスを使ってのことだ。

 しかし、周囲探索を取得して、クリスが加わった成果は魔イノシシ数頭に昆虫系魔獣に加えて魔ジカまで狩れて、一気に今までの平均の3倍以上にまで収入が跳ね上がった。


 これで1人頭3000円にはなったが、クリスですら妻が夫に尽くすのは当然だと言って分け前を受け取らなかった。

 クリスはお金自体には興味がなく、ただ美味しい食べ物さえあれば満足ということだろう。


 翌日からも俺たちの快進撃は続き、そして待ちわびた着物の出来上がりの日が来た。


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