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リトルウィッチ・プログラム  作者: 坂本一輝
第一部:魔法少女ルーチェ×アイリス
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魔法ときらきら 03

「ちーっす。咲弥ー、陽菜ー、はよー」


 極めて軽いノリの声と共に第三資料室の扉が開かれた。

 そこに居たのは見慣れた二人・・・晶と真紀だ。黒髪の方が晶、薄い茶髪ポニテが真紀。よくこの場所にわたし達が居るって分かったな、と思ったが。


「あたしが場所とかいろいろ、メールしといたから」


 陽菜曰く、そのようになっていたらしい。


「いやー、電車止まるとかマジ勘弁だったわー。電車ん中ちょっと暑かったし」

「立ったまんまで疲れたしねえ」


 彼女達はいつも通り能天気に。そしてガツガツと何の遠慮もなく室内へと入ってきた。

 陽菜が笑顔で二人をお出迎えする。わたしも一応、ひらひらと手だけは振っておいた。


「10時過ぎでおはようは無いでしょー」


 陽菜は笑いながら、そう彼女達に話しかける。


「いや私達にとっては今が7時みたいなもんだからさ」

「超早起き登校だよね」


 そう言って三人であははと笑う。

 わたしはと言うと、それを少し冷めた目で見ていた。しかし、この反応に文句が返ってくることは無い。わたしとはこういう人物であると、彼女達も承知の上で一緒に居るだけの事なのだから。


「そう言えば、大丈夫だったの? 魔力爆発あったみたいだけど」


 陽菜のその言葉に、少し聞き耳を立ててみる。


「んー、それネットで見たけどさ、そんなの全然分かんなかったよ」

「車掌のオッサンは安全が確保できるまでナントカって言ってたけど、あんなんで電車止めんじゃねーって思ったけどね」


 二人のいつも通りの様子に、陽菜は安心したのか。


「そうなんだ。心配してたんだよ。ね、咲弥っち?」


 そう言って、こちらに話を振ってきた。わたしは携帯を一度、ポケットに仕舞うと。


「・・・まあね。無事でよかったよ」


 頬を緩めながら、そう答えた。


「ちょっと咲弥、全然気持ち籠ってないー」

「私達が死んでもアンタは平然としてそうだわ」


 こういう彼女達の軽いノリというのは非常に助かる。だからこそ、一緒に行動しているのだが。もっとめんどくさい人間だったのなら、わたしはこの場を離れて一人で体育館裏にでも居ることになっていただろう。その点に関しては、良いサボり仲間を持ったと思う。





 昼休み。

 授業をサボっているくせに休み時間だけは平等に得ようとする。わたし達の数多あるどうしようもなく腐っている点の一つだった。しかも授業をサボってるもんだから、購買に一番で乗り込み、人気メニューをフライングゲットするという、もう何重にも折り重なった不正を我が物顔で行っている。他の生徒からは、さぞ疎まれていることだろう。


「カレーパンと、ミックスジュース」


 そう言ってわたしは握っていた300円を差し出した。

 ・・・悲しいかな、それでもこれを止められないのだ。購買のおばちゃん達に、わたし達4人には商品を売るなとか、それくらい学校が強気に出ても良いものだと、当事者なのに思ってしまう。きっと他の生徒はそう思ってやまないはずだ。


 あんな埃っぽい部屋では美味しい昼ごはんもまずくなってしまうだろうということで、一路、屋上へと向かう。

 屋上だって本来なら生徒の憩いの場であるのが正しい姿なのに、 不良グループ(わたしたち)が居るからという理由で誰も近寄ろうとしなくなってしまった。しかし、わたし達は平然と屋上へと向かっている。


(わたし達、最低だよ。みっともない・・・)


 そんな事を考えながら階段を上っている時。後方から悲鳴にも似た声が聞こえてきた。


「・・・どうしたの?」


 振り返ると、4人の中で一番後ろを歩いていた陽菜が手を押さえていた。


「大丈夫?」


 わたしは顔をしかめ、陽菜のもとへと駆け寄る。


「ちょっと、そこの掲示板触ってたら画鋲が・・・」


 恐らく陽菜は何気なく掲示物に触れただけだったのだろう。運悪く、その掲示板に乱雑な刺さり方をしていた画鋲に、指が引っかかってしまった。そんなところのはずだ。


「あたしの不注意だから、ごめんね何か。ちょっと保健室行ってくるから、みんなは」


 笑顔で取り繕いながらその場を去ろうとした陽菜の肩を、わたしは掴んでいた。


「見せて」

「え・・・?」

「傷口見せて」


 わたしの言葉に呆然としていた陽菜だったが、真剣な表情に気圧されたのか。右手をゆっくりとわたしの方へと差し出した。


「傷は深くないけど、結構ちゃんと切れちゃってるね」


 彼女の右手を、両手で覆いつくしながらその症状をしっかりと見る。


「あ、あの・・・」


 表情がこわばっていく陽菜に、わたしは軽く笑顔を作った。


「でも、大丈夫」


 わたしは携帯を取り出すと、いくつか操作を行い、とある画面を表示させた。


「ちょっと咲弥、携帯なんてやってる場合じゃ・・・」


 真紀が、そんな言葉を挟んでくる。

 しかしわたしはそれを意に介さず、スマートフォンを陽菜の右手に近づけると。


「アプリ『治癒魔法』セットアップ」


 携帯を陽菜の指に近づけたまま、そう言った。


『患部を検知。治癒魔法を開始します』


 その無機質な女性の声と同時に、わたしの携帯から虹色の光が漏れた。最初は豆電球くらいの明るさだった光が、球体状にどんどんと広がって行き・・・そして最後にはこの場一帯を覆い尽くすような大きな光球となっていたのだ。


「・・・!?」


 陽菜の表情が、苦悶から驚きのものへと変わっていく。


「これで良し、と」


 わたしのスマホから光が消えた時、陽菜の指には一つの傷痕も、染みも無く。先ほどの切り傷はまるでそれ自体が無かったかのように完治していた。

 しばらく、陽菜は自分の右手を不思議そうに眺める。手をまわして、どこにも傷が無いかどうかを確認したり。わたしはスマホをポケットにしまい、再び階段を登ろうとした。


「ちょ、ちょっと待って咲弥っち! 今のって・・・」

「魔術アプリ。知らないわけじゃないでしょ?」

「それはそうだけど、あ、待って!」


 駆け足で陽菜が後ろをついてくるのが分かった。

 わたしは振り向かず、いつも通り、けだるそうな表情で屋上へと続く階段に足をかける。


「咲弥、なんかすごい・・・冷静に魔術アプリなんて起動させてさ」

「あの子、案外出来る子なんじゃない?」


 晶と真紀の声が、後ろから微かに聞こえてきていた。

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