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第98話 仲良し


「それじゃ行ってくるよ」


「うん、いってらっしゃい刹那」


「・・・車に撥ねられちゃえ」


「お姉ちゃん!!」


「ははは・・・」


いつもどおりの流れだなぁと実感して、刹那は家を出た。・・・やはり、緊張はする。昨日は玲菜のおかげで不安や嫌悪感が消えてくれたが、理恵と直接会うことの緊張まで消えたわけではない。

もちろん朝の一連の流れで少しは和らいだものの、完全になくなるまでは至らない。


{緊張って、やっぱり嫌なもんだな}


そう思ってはぁ〜、と長い溜息をつく。・・・溜息をつくと幸せが逃げていくといった話をふと思い出してしまった。だからこんなことになっているのだろうか?


「・・・まぁいいや」


そんなこと、よく考えてみればどうでもよかったと思った刹那は、そのまま学校へとぼとぼとした足取りで向かった。







+++++







学校へ続く道を歩きながら、刹那は理恵に対する詫びの言葉を考えていた。・・・が、一向に浮かばない。

理恵とは大抵昼食を食べるときに中庭で会う。つまり、昼休みに中庭で降りるときまでに謝る言葉を考えなくてはいけないことになる。今は8時ちょっと前くらいだから・・・・・だいたい4時間くらい猶予があるわけだ。


正直、その4時間で何かいい言葉が浮かぶとも思えなかった。昨日考えに考えても決まらなかったのに、その短時間のうちで思いつくわけがない。


{どうしようか・・・}


・・・次第に、理恵に謝る文の内容から、どうやって4時間のうちに考えようか、といいうことに変わっているのに刹那は気づいていまかった。


そのときだった。


「あ、刹那だ」


「え? あ、り、理恵さん!」


振り向いた先には、いつもの表情の理恵が立っていた。・・・ほっとした。いつもより暗い表情だったらどうしようかと思った。


「えと、その、あの・・・」


「?」


不審そうに、理恵は刹那を見た。・・・刹那が慌てるのは当然だ。てっきり昼休みに会うと思っていた理恵に朝の登校時間に会ってしまったのだ。言うことも決まっていない今の状態で会ってら、混乱してしまうに決まっている。


「ちょ、ちょっと、大丈夫?」


「は、はい、大丈夫です。」


すぅ〜と息を吸い込み、それをゆっくりと吐き出す。・・・これで少しは落ち着いた。そして、今やるべきことも決まった。


思えば簡単だ。今ここで会ってしまったのなら、今ここで言えばいいのだ。理恵に対する謝罪の言葉を。


「あ、あの理恵さん。昨日のことなんですけど・・・」


「ストップ」


「え?」


言おうと思ったのに、理恵に止められてしまった。


「今、謝ろうとしたでしょ?」


「え、あ、はい」


「それは違う。あれは刹那は悪くないんだから謝らなくていいの」


「いや、でも・・・」


何かを言おうとする刹那に、理恵は笑って言った。


「今アタシが付き合ってって言っても、刹那は頷かないでしょ?」


「・・・・・」


「例え頷いても、本心は違う。両想いで付き合わないと、意味がないから。同情で付き合ってもらっても、空しいだけだから」


それ以上はもう、答えられなかった。何も言えなかった。理恵の言葉が、あまりにも的確過ぎたからだ。


「だから、これからも友達ということでよろしくね」


にこっと笑顔でそう言ってくる理恵。・・・その笑顔には、刹那の頭で描いていたくらい表情などなかった。


「こちらこそよろしくお願いします」


当然、そう言った。


「ありがと。これで、また仲良し」


満足そうに言った理恵。・・・そのとき、初めて気がついた。


「理恵さん、そのネックレス」


「あ、これ? 買ってもらったんだから、当然つけておきたくて。大丈夫。制服の下に隠しちゃうから」


つけてくれた。自分が買ったプレゼントを、喜んでくれていた。


「それに・・・」


「それに?」







「これは『友達』として貰ったものだからね」







そう言って、理恵は笑顔で校舎内に入っていった。


「待ってくださいよ理恵さん!」


そのあとを追う刹那。

・・・・・心のわだかまりが溶けてなくなったことに、刹那は今気がついた。


さて・・・・・がんばりますか

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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