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第95話 告白

「迷子になってどうしようもなかったアタシの手を引っ張って、刹那は交番に連れて行ってくれたの。直接お父さんとお母さんに送り届けるのは無理でも、そこなら2人とも迎えに来てくれているかもしれないって」


「・・・あの時の、ことですか」


理恵の言葉で、刹那は今遠い昔の記憶の昔を思い出した。・・・寂しい日々だった。父親である明は毎日働きに出て家に帰ってこず、その寂しい時間を紛らわすために気晴らしに出た町で、出会った女の子。それが、理恵だったのだ。


「刹那の言った通り、交番でお父さんとお母さんと恵利が待ってた。安心して、本当にほっとした。お父さんたちも涙目になってアタシをぎゅっとしてくれた。


ここまで連れてきてくれてありがとうって言おうと思ったんだけど、刹那はもういなくなってたんだよね。結局、刹那とはそれっきりだった。学校も違ってたからね。


ずっと誰なんだろうって思ってた。どこの人かな、また会えるかなって。そればっかり考えてた。

それでそのまま高校2年生になって・・・あとはさっき刹那の言った通り」


きぃー、きぃー、とゆっくりブランコを揺らしながら、理恵は懐かしそうな顔をしていた。


「高校で会ったときは嬉しかった、って言うよりもびっくりしたかな。だって、あの頃のままだったもの。ちょっと頼れそうな顔に、ぼさぼさの髪の毛に、きれいでまっすぐな目。変わったのは背丈だけって感じ。何年も経ってるはずなのに、一発でわかったの。あぁ、あのとき助けてくれた人はこの人なんだなって」


「だったら・・・」


そこで、刹那が口をはさんだ。


「だったら、何で会ったとき言ってくれなかったんですか? そうすれば・・・」


・・・刹那はそこで口ごもってしまった。そうすれば・・・何なのだろうか? 何かが変わったとでも言うのだろうか? 何が変わるのだ? 小さい頃助けたからと言って、それで何か関係が変わるとでもいうのか?


何を言ったらいいかわからず混乱している刹那に、理恵は微笑みながら言った。


「忘れてたりしたら、何かちょっと気まずいでしょ? 例え忘れてなくても、もしかしたらって思っちゃったの。


だから、初対面っていうことでいいかなって、そう思ったの。わざわざ昔のこと打ち明けるよりも、これから仲良くなっていけばいいって、思ったから」


言いたいことはわかる。もし刹那が『昔のこと』を忘れていたとなれば、それを理恵に打ち明けられたとしても困ってしまう。だって忘れているのだから、例えそれが事実だとしても身に覚えのないことを言われているのと同じことだ。


だからこそ、理恵はそれを恐れたのだろう。それが引き金となって、かえって仲が悪くなってしまうことを。


だとしたら、1つだけ腑に落ちないことがある。


刹那は理恵を見つめて、『それ』を訊いた。


「だったら、どうして今になってそのことを話したんですか?」


最初に言わなかったことを、どうして今になって持ち出したのか。刹那はそれが知りたかった。


「・・・言っておきたかったの。アタシが、どこで刹那と会って、どうやって知りあって・・・そしてどうした好きになったか」


「・・・え?」








一瞬、理恵の言葉が理解できなかった。



言葉だけが頭をぐるぐる回っていて、理解まで至らない。








理恵は漕いでいたブランコから降り、刹那の正面に立った。・・・何かを決意したような強い表情をしていた。これから大切なことを行おうとしているような、そんな顔。


「あの日から、手を引っ張ってくれた日から、ずっと探してた。・・・そして出会った。高校で、やっと再会できた。


それからずっと目で追ってた。ちらっと見るだけで、何だか嬉しかった。視界に映るだけで、胸が高鳴った。


伝えたいの、この気持ち。刹那に、知ってもらいたいの」







そこまで理恵が言って、刹那はようやくそれが『告白』なのだということを、理解した。









「ずっと、ずっと好きでした。アタシと、付き合ってください」














■■■■■




言いました。長年募りに募った想いを、言葉に変えてこの人に伝えました。


漫画や小説なんかでは、たいていこういう時は緊張して、心臓の鼓動がすごいのだと書いてありましたが、私は今すごく落ち着いていました。理由はわかりません。自分でも驚くくらい、冷静になっていました。


だからでしょうか。今までで一番素直になれた気がしました。素直に、自分の気持ちを表せました。


私にできることは、もうありません。あとは、この人の返事次第です。







どうか私のこの気持ちが







届いてくれますように・・・





・・・やっちゃいましたね、ついに。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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