表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/155

第90話 雑貨屋での時間

気がつけばもう姿が見えなくなってしまっていた。早いところ追いかけないと、理恵とはぐれてしまう。


「相変わらず早い・・・」


理恵のすばしっこさに感心しながら、刹那は理恵の歩いていった道順をたどり始めた。

まっすぐ行って、確かここを右に曲がっていったような気が・・・


「あ」


居た。なぜかは知らないが、いろいろなサイズの収納ボックスを興味深そうにじぃっと眺めていた。・・・それほど珍しいものでもないだろうに。


「理恵さん、早いですってば」


「む、わかったわよ。今度はちゃんとあんたに合わせてあげるわよ!」


「はぁ・・・。ところで、これ収納ボックスですよね」


「そうよ。やっぱり種類が増えてるわね。ほら、これなんかすごく物入りそうじゃない?」


そう言って理恵が差し出してきたのは、スーパーでよく見かけるダンボールくらいの大きさの収納ボックス。・・・確かに、これは大きい。頑張れば、理恵も中に入れるのではないだろうか?


「確かに、これはでかいですね」


「でしょ! だからこれなら・・・全部入りきるかな?」


「? 何がです?」


「・・・手紙」


「手紙、ですか」


理恵はちょっとだけ恥ずかしそうにそう言った。・・・恥ずかしがる手紙といったら・・・・・ラブレターの類だろう。たぶん。


可愛くて元気いっぱいな理恵だ。ラブレターの1枚や2枚くらい貰ったって、ちっともおかしくない。・・・ただ、こんな大きさの収納ボックスが必要になるくらい貰っているというのが腑に落ちない。聞いてみるか。


「理恵さん、そんなにラブレターもらってるんですか?」


「は、はぁ?! 冗談言わないでよ!! ラブレターなんて貰ってるわけないでしょ?!」


「え? 違うんですか?」


「ち、違うわよ! 誰もラブレター貰ってるなんて言ってないでしょ!!」


・・・そう言われてみれば、確かに理恵はラブレターを貰っているとは一言も言っていない。

それなら、どんな手紙を貰っているのだろう?


「いい? アタシが貰ってる手紙は、ソフトロール部の後輩と、アタシが一年生だったときの先輩からの手紙だけ! 男子からなんて1通も来ないんだからね!!」


少しだけむきになって理恵はそう言った。

・・・なるほど、そういうことか。ソフトボール部の人数はかなり多いし、先輩からも貰ってるとなれば確かにこれくらいの大きさは必要になる。・・・理恵さん、後輩からも先輩からも好かれてそうだしな、それはもう数え切れないくらい貰ってるのだろう。


「モテモテですね、理恵さんは」


ちょっとだけ冗談でそう言ってみる。


「・・・アタシ、そっち方面に興味はないから。普通に男の子が好・・・・・あ!! な、なんでもない!! なんでもない!!」


いきなり赤面して、慌てて手を横に振って否定する理恵。・・・途中で何かを言いかけたような気がしたが・・・まぁいいか。


「それより理恵さん、これ買うんですか?」


「今買っちゃったらちょっと邪魔でしょ? 今度来たときにでも買うわよ」


「そうですね。それならまた今度買うときに呼んでくださいよ。俺、手伝いますから」


「え? そ、それ本当?」


何気なく言った刹那の言葉を、理恵は驚いたような顔をして聞き返した。

その問いに、刹那はにこっと笑顔で答えた。


「もちろんですよ、ぜひ手伝わせてください」


「あ、ありがと・・・」


少しだけ赤くなって、理恵は恥ずかしそうに刹那から視線をそらした。・・・何だろうか? 何かまずいことでも言ってしまったのだろうか? いや、でも手伝うって言っただけだし・・・。


「そ、それじゃ遠慮なく手伝ってもらうから! 覚悟しておきなさい!」


「ははは、わかりました。覚悟しておきます」


・・・でもまぁ、元に戻ったからよしとしようか。


そういえば、今日はずっとここでぶらぶらと商品を見て過ごすのだろうか? いや、まさかそんなことはないだろう。いくらたくさんの商品があるといっても、さすがにちょっと飽きる。

ちょっと聞いてみようか。


「理恵さん、この後どうしますか?」


「そうね、もうちょっとうろうろしてから、他のところね」


・・・よかった。どうやら他のところにも行くらしい。ここも色々な商品を見ることができて楽しいが、せっかく理恵と町に来たのだからもっとたくさん回りたい。


「あ、ほら、これ見て!」


と、いきなりそう言って理恵が刹那の目の前に差し出したのは、蛇の形をした人形。ぬいぐるみではく、人形なのだ。なんというか、蛇の尻尾が人間の足になった感じの、薄気味悪い代物だ。・・・子供が見たら泣くんじゃないだろうか?


「あ、あとこれ! どう? 可愛いでしょ」


再び刹那の目の前に商品を差し出してくる理恵。今度はちゃんとしたぬいぐるみなのだが・・・これは何の動物だろうか? ウサギ、のようにも見えるし、熊、のようにも見える。じっくり見ると、カラスにも見えてくる。・・・なんだこの不思議生物は? 子供でなくても泣いてしまうかもしれない。ってか、不気味すぎてちょっと涙出てきた・・・。


「あ、ほら! あっちにも可愛いのある! ほら! さっさと行くわよ!」


目をらんらんと輝かせて、理恵は奥の呪い人形のコーナーへと向かった。・・・いくら雑貨屋だからって、呪い人形を売ってるってどうなんだろうか。


「待ってくださいよ理恵さん!」


刹那は慌てて理恵の姿を追った。




・・・こうして、雑貨屋での時間はどんどん過ぎていった。



そういえば、もう少しでクリスマスですね。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>恋愛コミカル部門>「殺し屋はターゲットに恋をする」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ