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第79話 お化け屋敷へ! その2

血みどろで簀巻きにされている男をあとにし、そのまま先に歩き出すと・・・・・光が見えた。どうやら出口らしい。今まで暗かった分、光がとても眩しい。


「で、出口! 早く早く!!」


「わ! ちょ、待って! 待って理恵さん」


早くこの暗くて不気味なところから出たいのか、理恵は刹那の腕を取って出口へ向かって一目散に走っていった。


・・・だが、これはよくない。出口が見えたからといって、そのことに安堵してわき目も振らず向かってはならない。こういったお化け屋敷には、最後の最後でいきなり横や下、壁から出てくるものなのだ。


文化祭のお化け屋敷を毎年嗜んできている刹那は、そのことを知っているため心の準備ができているが・・・・・ほとんどお化け屋敷なんか入ったことのない理恵はそのことを知らない。出口を見て安心しているぶん、いきなり出てくる脅かし役に対応ができない。・・・まずい、かなり絶叫するかもしれない。


「うぅぅどらぁぁあああああああ!!!!!!」


「ぎぎぎぎ・・・・・」


「ああああああああああ・・・・・・・」


「がが!! ががが!!!!」


「おわぁ!! やっぱりきたか!!」


刹那の予想通り、足元から這いずるようにしてたくさんのゾンビが足を掴んでくる。ボタ・・・ボタ・・・、と、たまに上からもゾンビが人形のように降ってきて、下のゾンビの上に落ちてくる。


それはさながら、生き物の絨毯のようだった。あまりにも多すぎて、足の踏み場がない。それに・・・・あまりにもメイクとか姿が不気味だ。心の準備ができていたとはいえ、これはやりすぎた。怖いってもんじゃない。


「・・・・・」


「あれ? 理恵さん?」


理恵はというと、驚く刹那とは対照的に叫びもせず、驚きもせず、ただ黙って床に蠢くゾンビを見つめていた。・・・これは予想外だった。てっきり叫びまくってとんでもないことになるかと思っていたのだが、そんなことは一切なかった。至って冷静だ。


「理恵さん、結構こういうの大丈夫だったんですね。てっきりこういうの駄目なんだなって思ってましたよ」


「・・・・・」


「? 理恵さん?」


「・・・・・(くら)」


「おわ!! 理恵さんが!!」


・・・どうやらあまりのショックと怖さで気絶していたようだった。





バッ!!





ふらぁ〜っと床に倒れる寸前のところで刹那がうまくキャッチする。・・・軽い。予想以上に軽かったし、柔らかかった。


「あれ? 気絶したのか」


「お〜、なかなか俺たちの演技もすげぇんだな」


「? って、こいつ理恵じゃんか。何で同じクラスのやつがここで気絶すんだよ・・・」


演技に徹していたゾンビの先輩たちが、刹那の腕の中で気絶している理恵の様子を見に来る。・・・安心した。その・・・・・ちゃんと演技だと確認できて。本物だったらどうしようかと・・・。


「んと、お前は・・・・・2年生か。理恵の友達かなんか?」


「え? あ、はい。いつもお世話になってます」


「じゃあ俺たちが保健室に運ばなくてもだいじょぶか」


「んじゃ、俺たちは仕事に戻るから、早く連れてってやれ」


「はい、今すぐにでも」


軽く会釈をして理恵を抱えたまま出口を通って外に出る。


ふと振り返ってみると、先ほどまで理恵の心配をしていた3年生たちがすでに床に這いつくばって、次の客を脅かすための準備をしていた。もちろん上から降ってきたゾンビは台を使って定位置へ。・・・なんともまぁ、仕事熱心なゾンビたちだなぁ、と思わずにはいられない。


きちんと仕事をこなす3年生に敬意を表しながらも、刹那は外へ出た。


「おかえり〜・・・・・って、理恵?! どしたのあんた!!」


パタパタと、慌てて駆け寄ってくる澪。さっきまで理恵をからかっていたときの態度とは大違いだった。・・・何だか顔が少しだけ青ざめているような気が。安心させてあげないと。


「あんまり怖かったから気絶しちゃったのかと思います」


「気絶?! 頭打ってない?」


「ちゃんと受け止めましたので、なんともないと思います」


「はぁ〜〜〜〜・・・。何だ、よかった。ほら理恵、とっとと起きなさい!」


再び態度をひっくり返しすと、澪はピシピシ! と、軽く頬を叩いて、理恵の目を覚まさせようとする。


「ん〜・・・・・あれ?」


「まったく! 心配かけて! お化け屋敷ごときで気絶するんじゃないわよ!」


「気絶? アタシ、気絶してたんだ」


「大丈夫ですか理恵さん? どこか具合悪くないですか?」


「う〜ん、気分は悪くないんだけど・・・出口のところから記憶がないのよね。何があったのかな・・・」


う〜ん・・・と、首をかしげて考える理恵。・・・ひょっとして、無意識のうちに怖いものを目に入れまいと気絶したのではないだろうか? 恐るべし、理恵の防衛機能・・・。


「まったくもうあんたってやつは・・・・・。ほら、いつまで刹那君に抱っこしてもらってるのよ。赤ちゃんみたいよ?」


「え? ・・・・・」


しばし呆然。自分が今どんな状況下を確認しているようだ。

肩に回されている腕を目で追い、そのまま刹那の顔へ。まじまじ、と刹那の顔を見たあと、急激に理恵の顔が赤くなっていき・・・・


「わわわわわ!!!!!」


勢いよく離れてしまった。・・・まぁ、こうやって元気に走り回っている姿を見る限り、本当に大丈夫みたいだ。体に異常がなくてよかった。


「そういえば、理恵途中で気絶しちゃったのよね。それじゃ何だか半端だし、もう一回見てきたら? 刹那君と一緒に」


「「絶対もう入らない!!」」


2人は仲良く口を揃えて拒否しましたとさ。


次回は玲奈と里奈が登場します。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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