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第78話 お化け屋敷へ! その1

受付へと向かう2人。係りの人は、白い着物を身につけて、頭に逆三角の布を装着した女生徒が椅子に座っていた。手にはアンケート用紙が握られており、どのクラスが一番お化け屋敷に入ったのかを集計するらしかった。

とりあえず受付をしようと、理恵は受付の生徒に話しかけた。


「澪、入りたいんだけど・・・・・いい?」


「あら、理恵が男を連れてきた。珍しいわね、彼氏かな?」


「ち、違う違う! 友達よ!!」


「またまた〜。顔真っ赤だぞ〜? ふふふ」


「う、うるさい! それで、入れるの!? 入れないの!?」


「今なら空いてるから待たなくても入れるわ。すぐ入るの?」


「え! ま、まだ心の準備が・・・・・・」


「あぁ〜。理恵こういうのだめだもんね。それじゃ行きたいって言ったのは君のほうかな?」


いきなり話を振られる刹那。ちょっと驚き、どもりながらも答える。


「えっと、そうです。お化け屋敷好きなので・・・」


「はは〜ん。なるほどね〜。通りで理恵が来るはずだもんね〜・・・」


にや〜っと笑って理恵を見る澪。見る見るうちに理恵の赤くなっていき・・・・・あ、頭から煙が。


「うるさ〜い! からかわないでよ! 本当にあんたってばもう―――」


「はいはい。それじゃ、お2人様ご案な〜い」


真っ赤になって突っかかってくる理恵を慣れた手つきで受け流し、澪はお化け屋敷である教室のドアをがらっと開けた。・・・外からぱっと見るだけでも、おぞましいくらいの不気味さが伝わってくる。怖いのではなく、不気味なのだ。吹き抜ける生ぬるい風、血のような生臭い鉄の臭い、断末魔のようなうめき声。入り口のところだけでも十分すぎるほど、それらは伝わってきた。


「ひく・・・」


「これ、は・・・」


「うちらの自信作。理恵は小物とかやってたから中どうなってるかわからないでしょ? すごいよ、本当に怖いから」


澪の言っていることが商売文句ではないことは、十分理解できた。だって・・・怖い。


4組のこの出し物は、お化け屋敷の領域をはるかに超えていた。どう考えても、この入り口の先に待っているのはお化け屋敷などという生易しいものではない。もっと恐ろしい、そう・・・・・地獄を再現したような、そんなものが待っているに違いなかった。


「うゎ・・・・・」


さすがの刹那も、こればっかりは入りたいという気がしなかった。あまりにもその・・・・・入るのに勇気がいるため。


「あらら? 怖気づいちゃった? 案外気が小さいのね」


「・・・・・今なんと?」


「気が小さいなぁ〜って。文化祭の出し物くらいで怯えちゃうなんて・・・・ね。びびりって情けなさすぎだな〜って、思っただけよ?」


「・・・・・」


刹那は温厚なほうだ。ちょっとやそっとのことでは怒らないし、ムキにもならない。多少の悪口だって聞き流してしまう。


だが・・・・・今の言葉だけはちょっと聞き流せない。・・・誰が、びびりだって? ん?


「せ、刹那。アタシやっぱり入りたくないかな〜って思うんだけど・・・・・」


「・・・・・理恵さん」


「な、何?!」


「・・・・・入りましょう」


「え、えっと、その、あの、怖いからその、入らないほうが身のためみたいな、その・・・・」


「そうよ〜、理恵の言うとおりだって。止めておいたほうがいいよ〜? び・び・り・君」


・・・今の一言で、刹那の中の何かが切れたような気がした。


「み、澪!! あんたはまたそうやって!!」


「・・・行きましょう、理恵さん。今すぐに」


「め、目が怖いわよ刹那・・・・・って、ひ、引っ張らないで!! まだ心の準備が!!」


「・・・・・」


刹那は無言で理恵の手を握り、入り口を開ける。・・・先ほどはあんなに不気味だと思っていたのに、今は特に何も思わない。ただの真っ暗な部屋でしかない。


そうだ、入ってやればいいのだ。ここに入ってやれば、自分がびびりなどではないということが証明される。文化祭の出し物クラスだ、怖気づくことなどあってはならない。


「さ、いってらっしゃ〜い♪」


「澪〜〜〜!!」


涙目になりながら澪をきっと見つめる理恵に、それを笑顔で手を振りながら見送る澪。

そして刹那は、嫌がる理恵の腕を引っ張り、お化け屋敷へと入っていった。


「・・・・・」


「うぅ〜〜・・・・・」


不気味、だった。外から見るよりも、ずっと。

中に入ってドアが閉められると、血のような赤くてどす黒い明かりが道を照らしている。さながら、溶岩のような色合いだった。地獄のそこからこんこんと涌き出てくる、灼熱の溶岩。


そして壁には手の跡や飛沫がびっしりとついていた。みんな、同じ少しだけ黒っぽい赤色でだ。・・・血のような色合いだった。手の跡は苦しみ、もがきながら逃げ惑ったであろう民を連想させ、飛沫は鋭利な刀か何かで切られたときに飛び散った血を思わせた。


極め付きには、床下から聞こえてくる呻き声。怨みや憎しみのこもった、聞くのも嫌になる声だった。


「・・・・・」


「だ、だから止めようっていったのに・・・・・」


今にも泣きそうな声で理恵が言う。・・・刹那も、今更ながら足を踏み入れてしまったことを後悔していた。ってかもうこれはやばい。恐ろしい。逃げたい。


でも、出口はまだ先だ。入り口から出るのはルール違反。まだ見えない出口に向かって、こんな不気味な道を歩いていかなければならない。


「・・・行き、ましょうか」


「わ、わかったから・・・・・絶対離すんじゃ、ないわよ・・・・・」


ぎゅっと、手を握る力を込めてくる。今はもうどきどきするとか、恥ずかしいとか、そんなのは少しもなかった。ただ、握ってくる手が心強かった。


恐る恐る歩を進める。曲がりくねってはいるが、所詮は学校の教室だ。そんなに距離があるわけでもない。1分そこらもあれば出られるはずだ。


だが、あくまでここはお化け屋敷。何も出てこないというのは考えにくい。いきなり横から出てきて驚かすとか、壁を突き破ってくるとかはやってくるはず―――







バリバリバリィッッッ!!!







「うっどぉぉぉあぁららあああああああああ!!!!」


「おぉぉぉ!!」


「ひ、ひきっ!!」


壁であるベニヤ板を突き破り、血だらけでみすぼらしい格好をした男が倒れこんできた。倒れこんだあとは血の水溜りが広がっていき、男はぴくりとも動かなくなってしまった。・・・まるで、息絶えたかのように。


「・・・・・」


「・・・う〜」


・・・だ、大丈夫だ。これでもう半分は行ったはずだ。あとはもう半分だけだ。そうさ、大丈夫だ。これくらいならまだ・・・・・。







ポタポタ・・・・・。







「ん?」


「・・・・・?」


何やら少し前のほうから水のようなものが垂れてきている。一定の間隔で、ポタポタ、と。・・・何やら、紅い。赤いのではなく、紅い。

ゆっくりと視線を上に向ける。そこには・・・・・


「あ゛・・・・ぅ、ぁ゛・・が・・・・・」


「う゛ぉぉおおおおおおお!!!!!」


「きゃぁああああああああ!!!!!」


簀巻きにされた男が、。助けてくれ、と懇願しているような目でこちらを見つめていた。殴られたように顔は膨れ上がり、足は1本なかった。そして、その足の切り目から・・・・・血が、ポタポタと・・・・・。


「・・・・・・」


絶句、というやつだった。ここまでくると、もうどうやってメイクや方法を使っているのかさっぱりわからない。どうすればあそこまで腫れ上がるのか、どうやれば足が1本なくなったかのようにできるのか。・・・もしかしたら、本当にやってたり・・・?





・・・・・。





「そんなこと、ないよな」


そうだ。いくらリアルさを追求するからといって、本当に殴ったり足をもいだりなんてするわけがない。きっと、自分には思いつかないようなアイディアでそう見えるようにしているはずだ。そうに決まってる。・・・そうであってほしい。


どうも・・・・まだ文化祭編は続くようです。

あと○回くらいで終わります! というと、絶対伸びちゃうんですよね・・・。すみません。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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