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第76話 待ち合わせ場所へ

教室を抜け出した刹那は時間を気にしながら、理恵との待ち合わせ場所である玄関へと足早に移動していた。約束の時間は12時半。博人のおかげで、何とか時間に遅れずにすみそうだ。・・・遅れるも何も、そもそもの原因は博人にあるのだが。


2階から1階へと下り、玄関へと到着する。現在の時間は・・・・・12時15分。ちょうどよい時間だ。相手を待たせることがないから、こうやって少し早いくらいに到着するのが一番いい。

後は理恵が来るのを待つだけだ。後15分くらいだから、そのうち来てくれるだろう。


「・・・・・・? あれ?」


あの後ろ姿は・・・・・理恵だ。まだ約束の時間ではないはずなのだが。・・・・もしかして、俺のほうが時間を間違えたとか。教室と携帯の時間が狂ってたり・・・したとか。


さぁ〜、と顔が青ざめていったのがわかった。そうだったら、理恵をこうやってずっと待たせてしまったのかもしれないのだ。約束の時間を破ってしまい、それなのにずっと待っていてくれる理恵。


慌てて理恵の近くにより、半ば叫ぶようにして刹那は言った。


「り、理恵さん! あの!!」


「あ、刹那。ずいぶん早いわね、まだ15分くらいあるのに」


「遅れてすみま・・・・・え?」


先ほど確認した時間を思い出す。確か、15分くらいはまだ余裕があったはずだ。ということは・・・・・時間、間違ってなかった?


「あの、理恵さんいつ頃からここに?」


「12時くらいからよ。ちょっと待ちきれなくってね、早く来ちゃった」


くすくすと笑う理恵。・・・・・なんだ、そうだったのか。俺はもうてっきり・・・。

へなへな、と刹那はその場にへたり込んでしまった。何だかもう脱力して、腰が抜けた。・・・あんなにあせってた俺って一体・・・。


「ちょ、ちょっと! どうしたの?」


「いえ、その・・・・・ははは、てっきり時間に遅れちゃったのかと思って」


「あ〜、だから慌ててたのね。まったくもう、しっかりしなさいよ」


「すみません、ははは」


ほっとして、安堵の笑いが止まらない。心配事が勘違いで本当によかった。・・・いや、本当に。


「でも本当に勘違いでよかったです。遅れると、理恵さんに怒られちゃいますから」


「な、何よそれ! 別に怒ったりはしないわよ!」


「本当ですか、それ?」


「本当よ! ただ・・・えと、来るまでずっと待ってるだけ! ・・・・・な、何言わせるの! 馬鹿!!」


「り、理恵さんが勝手に言ったんじゃ―――」


「あぁ、うるさいうるさい! ほら、行くわよ!」


そう言って理恵は、へたり込んでいる刹那にすっと手を差し出す。どうやら引っ張りあげてくれるらしい。大人しく刹那が差し出されたその手をきゅっと掴むと、理恵は顔をちょっと赤らめながらも引っ張って立たせてくれた。


「ありがとうございます」


「べ、別にいいわよ! それで、ど、どこ行くの?」


・・・俺が決めて、いいのか? そうだな・・・・・。


「理恵さんのクラスに行ってみませんか?」


「・・・・・は、はぁ?! な、何でアタシのクラスよ?!」


「お化け屋敷とか、どんな出来かなって思いまして。毎年お化け屋敷は欠かさず行ってるので、今年も行ってみたいかなって・・・・・」


「そ、そんなに大したもんじゃないから!! 別に来なくていいから!!」


なぜ理恵が必死になって自分のクラスへ行くのを拒否するのだろうか? 出来が悪いからだろうか? ・・・・・・いや、でもクラス全体が張り切ってるって言ってたから、そんなことないはず。文化祭の経験が一番ある3年生の出し物だ。期待しないほうがおかしい。


それなのに、何で理恵はこんなに首を横に振って必死に反対してるんだろうか? ・・・・・いくら考えてもさっぱりわからない。一体どうしてだろう。


「・・・何か、俺には見せられないものがあるとかですか?」


「え? いや、別に、そ、そんなわけじゃ・・・・・ない、けど・・・・だめ!!」


・・・・ん〜・・・そこまで必死になられると、やっぱり行かないほうがいいかもしれない。無理やり行って、またこの間みたいに喧嘩になってしまうかもしれない。


でも、やっぱりお化け屋敷には行ってみたい。あの薄暗さからくる恐怖感。いきなり横、後ろからくるかもしない、という緊張感。そして、なんといってもゴールの光が見えたときの安堵感。それが楽しみで、刹那は毎年お化け屋敷に行っているのだ。今年も楽しみにしていたのに行けなくなるというのは残念だ。それも、かなり。


よし、あと一回理恵さんに頼み込んで、それでも駄目だったら今年は諦めよう。・・・できれば諦めたくないのだが、理恵が嫌がっているのだから仕方ない。

頭の中で必死に言葉を選び、まとめ、そして口にする。


「理恵さん! お願いします! どうしてもお化け屋敷に行きたいんです!」


・・・考えた末、自分の中に溢れるお化け屋敷への情熱を伝えることにした。っていうか、これしか思いかばなかった。あまり口上手じゃないし・・・。


「お願いします! 行きたいんです! 楽しみなんです!」


「・・・う〜」


理恵は顔をしかめながら考えていた。そわそわしながら、また時々なぜかは知らないが顔を赤くしながらぶんぶん、と横に首を振ったりしている。・・・どうなのだろうか。思いはちゃんと伝わったのだろうか?


「はぁ〜・・・。わかったわよ、行きましょ」


「え!? 本当ですか?!」


「言っておくけど、本当は行きたくないんだからね? 特別なんだからね?」


「はい! ありがとうございます!」


この際だ、理恵が自分のクラスに行きたくない理由は聞かないでおこう。文化祭の楽しみの1つであるお化け屋敷に行けるというだけで十分満足だ。


「それじゃ早速行きましょう! あぁ〜楽しみだなぁ!」


「・・・はぁ。やっぱり、行きたくないなぁ・・・」


嬉しそうにスキップする刹那と、がっくりと肩を落としている理恵。対照的な2人は、仲良く並んで校内を歩き出したのだった。


寒いですね、風邪などひかれませんようにお気をつけください。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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