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第70話 何をやろうか?

それから少しだけ月日が経った。日が経つごとにどんどん冷え込んでいき、季節は夏から秋へと移り変わっていった。


刹那たちの学校も衣替えを初め、ワイシャツだけだった服装が、しっかりとしたブレザーと替わっていった。


家でも、半袖の服から長袖のものへと替わり、すっかり秋になったんだな、としみじみ思う。

そこで問いたい。秋に学校で催されるイベントといえば何を思い浮かべるだろうか?


運動会か?


それとも球技大会か?


学校によっては季節が違うときにやるかもしれないが、刹那の学校で秋のイベントといったら1つしかない。









それが・・・・・









文化祭である。









「・・・・・というわけで、何かやりたいのある? あったら挙手してほしいんだけど」


委員長がそう言うが、誰1人として手を上げようとしない。しばらく待ってみても、上げるように促してみても、やっぱり手は上がらないままだ。

それを見てん〜・・・・・と唸り、再び発言する。


「それじゃ、1回周りと話し合ってみて。しばらくしたら聞くから。はいスタート」


パン、と委員長が手を叩いたと同時にクラスの中が一気に騒がしくなり、各自友達と相談し始めた。

そんな中、博人は机に突っ伏している刹那の元へやってきた。


「よう、何かいい案思いついたか?」


「いや、特には。博人は? 何か思いついた?」


「やっぱあれしかないだろ、メイド喫茶! もちろんメガネ着用は絶対な」


「・・・やっぱりお前はそういうのしか思いつかないのな」


「なっ!? 馬鹿言うんじゃねぇ!! すげぇ重要なことだろ!! 男の浪漫だぞ!? お前はもうちょっとそういう面を理解できなきゃだめだぞ?!」


理解したくないっての・・・・・。

でも、喫茶という考えは結構いけるかもしれない。ちゃんとした料理を作るわけではないから店番なども楽だろうし、簡単に準備ができる。テーブルやらカップやら、用意するものこそたくさんあるが、それくらいだったら何とかなる。博人もそういうことを計算してこんな提案を・・・・・そんなわけないか。


「メイドはいらないと思うけど、喫茶はなかなかいい案だと思うぞ?」


「馬鹿言うんじゃねぇ!! メイドがいないとだめだろ!! 喫茶にメイドがいないってことは、寿司にネタが乗ってないのと同じことなんだぞ?!」


お前にとってメイドってそんなに大切なものなのかよ・・・・・。


「さらにだ!! そのメイドにメガネがないってことはな!! 寿司にわさびがないってのと同じことなんだぞ?!」


わさび苦手な人はどうなんだ・・・・・。ってかお前寿司好きだな。俺も好きだけどさ。


「はい、そろそろいいだろ。席に着いてくれ〜!!」


委員長がそう言うと、散り散りになっていた生徒たちがすぐさま着席した。早くクラス会議を進めることができるためか、委員長は満足そうに話し始めた。


「よしよし、それじゃあ聞こうか。何か案はないか?」


「はい!! 委員長!! メイド喫茶やろう!!」


博人が勢いよく手を上げて大声で提案する。・・・そんなことよく大声で言えるもんだ。ある意味勇者だぞこいつ。女子から罵声がぶつけられること間違いなしだ。それをわかってこいつは・・・・・。


「だ、そうだけど・・・・・みんなどう思う?」


「え〜・・・・・でも博人がいいって言うんなら・・・・」


「は、恥ずかしいけど、やろうかな」


「やります! 博人さんがやりたいならやります!」


・・・・・って女子はみんな博人につくのかよ?! ちょっとは反対の声とかないの?! えぇ?!

主犯である博人は刹那のほうを向いて・・・・・あ、あの野郎ピースしやがった!! 計算済みかよ!!


博人のメイド喫茶という意見に、女子は全員賛成。男子は反対する理由など皆無ということでこれまた全員賛成。博人の思惑通り、このクラスはメイド喫茶をやることになってしまった。・・・・・ちなみに刹那は賛成せざるを得なかった。


想像してみて欲しい。みんなが賛成している中、1人だけ異議を唱える。異議を唱えた刹那はみんなから空気読めないやつだ、という視線を浴びる。結果、場が冷めて気まずくなる。・・・・・賛成しなければいけないだろう、これは。刹那だって、そこまでして反対しようとは思わない。そこは大人しく従っておくというのが、安全というものだ。


「えっと・・・・・じゃあメイド喫茶でいいのか? それなら具体的にやることを決めないといけないんだけど、そこのところは決まってるのか博人?」


「もちろんだ!! と、言いたいところだが、さすがに1発で通るとは思ってなかったんでな。大体は考えてあるんだが、まとめてはいない。今から案を言うから、それをまとめてくれるとありがたいんだが・・・・・どうだ?」


「別にいいぞ。それじゃ、案を聞こうか」


「わかった。まぁ、喫茶だからコーヒーとかお茶、それからお菓子を出す。細かい種類等は任せる」


「ふむ。それで、係とかはどうする?」


「それなんだが、接客係と裏方係に分かれる。分かれるが、どうせ喫茶なんだからコーヒーとかお茶淹れてるところとか見えるだろ? だから、当番のやつは強制的に全員メイド服だ! 男も女も関係ない!! みんな運命共同体なんだ!!! そうでなければ、『メイド』とつけた意味がねぇんッッッッだよぉッッッッ!!!!!」


バァァンッッッ!!!! と、思い切り自分の机を叩いて博人は熱く語った。その音に畏怖したのか、それとも必死すぎる博人が怖いのか、委員長はちょっと引き気味になって言った。


「わ、わかった。メイド服は全員着るようにしよう。みんなもそれでいいよな?」


委員長の言葉に、勢いよく首を縦に振る生徒一同。博人はそれを見て満足そうに、うんうん、と頷いた。・・・・・ちょっとはやりすぎたか? くらい思えよ。みんな引いてるじゃないか。


「それで、だ。ここからが重要なところなんだ」


「今度は何だ・・・・・?」


「係のやつは全員メイド服だと言ったが、メガネも着用してもらう。目がいいやつは伊達メガネをつけること」


「それに意味は・・・・・」


「ある!! 大有りだ!!」


バァァンッッッ!!!! と、再び思い切り自分の机を叩く博人。音に畏怖して、委員長はたじろいでしまう。


「メイドにはメガネが必須!! これは暗黙の掟だ!! 義務だ!! 法律だ!! それはなぜか?! それは、メイドは冷たい、というのが当たり前だからだ!! それはすなわち、主人にはあまり好意を抱いていないというのが前提!!


冷たい態度で機械的に仕事をこなすメイド!! それが本来のメイドたる姿!! 貧しい家のため、嫌々主人の住む館の手伝いを強いられるメイド!! 嫌々仕事をしているのに、好意もくそもあったもんじゃない!!」








バァァンッッッ!!!!








「それならばなぜそこでメガネが出てくるか?! 想像できるのは秘書!! キツイ上司!! いけ好かない生徒会長!! それらは『性格が悪い、冷たい』というのが共通している!!

つまりだ!! メガネは冷たいという印象を強く与える結果になる!! 冷たい性格の女!! けれどもちょっとした事で頬を赤らめてしまう可愛い一面もある!! そのギャップが!!!! たまらんのだああああぁぁぁあッッッ!!!!!」








ドオォォォォンッッッ!!!!!








「だが例外もある!! 基本には例外がつきもの!!! それがドジっ娘の存在だ!! ありとあらゆる有り得ないことを、平気でやってのける天然ぼけぼけ少女!! 何もないところで転んだり!! 主人に持っていくはずのお茶を盛大にぶっかけたり!! それは1つの萌え要素!!! 一生懸命やろうと頑張っているのにうまくいかないという、まさに男たちが守ってやりたいという存在なのだ!!!


それに!! なんと言っても最強の武器は笑顔!! 屈託のない!! 汚れのない!! 純粋無垢で一点の穢れのない明るくて元気な笑顔がそのキャラの最強の武器なのだ!!

だが!! それならメガネはいるのかという話になる!! いるんだよ!!! 必要なのだ!!! 盛大にずっこけた後にずれるメガネ!! もしくはメガネを落としてしまって慌てて手で地面をなでるようにして探すその可愛らしさ!! 想像してみるだけで鳥肌もんだ!! 

他にもまだまだメガネの要素は数え切れないほどあるが、時間の関係だ、割愛させてもらう。この短い俺の話の核は・・・・・・・・」









バァァァァァァァンッッッッッッッッ!!!!!!!!!









「メガネは必要だということなのだッッッッッ!!!!!!!」


「お前もうちょっと大人しくしてくれない?! みんな怯えてるんですけど?!」


やっとのことで、刹那が博人を止める。どこかの教祖のごとくクラスメイトを洗脳していた博人はそこで、はっ!! と我に返った。


「おぉう。ちょっとばかし夢中になってしまった。すまんすまん!」


「あ、あぁ・・・・・。と、とりあえず、お前の熱意は伝わった。み、みんなは博人の考えどう思う? よかったら挙手してく―――」


そこまで委員長が言ったと同時に、全員の手が勢いよく挙がった。心なしか、みんな顔が引きつっているような気がする。・・・・・涙目になっているやつもいるし。


「そ、それじゃ、俺たちのクラスはメイド喫茶に決まりだ! も、もちろんメイド服とメガネ派絶対に着用。・・・・・ひ、博人、それで服とメガネは・・・・・?」


「安心しろ。全部俺の家に揃ってある」


「あ、あぁそう・・・・・。ははは・・・・・」





・・・・・かくして、刹那たちのクラスは博人の案である『メイド喫茶』に決まったのだった。


っというわけでして、文化祭編と題しましてお届けしたいと思います。

この回で博人が妙な発言をしておりましたが、それはあくまで博人の会見であって、決して皆様の抱いている思い入れを否定しているわけではありませんのでご了承ください。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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